モジュール式22mmパイロットデバイスによる産業用HMI設計の最適化

著者 Rakesh Kumar, Ph.D.

DigiKeyの北米担当編集者の提供

産業機械および制御システム向けヒューマンマシンインターフェース(HMI)の設計と実装には、特有の工学的な課題があります。基本的な機能性だけでなく、現代のHMIコンポーネントには、動作信頼性、耐環境性、設計の柔軟性に関する厳しい要件を満たすことが求められています。電子技術者やシステムインテグレータにとって、コンポーネントの選定はエンドユーザー体験だけでなく、総所有コスト(TCO)にも直接的な影響を及ぼします。これは在庫管理、設置時間、長期メンテナンスなどの要素に影響を与えます。

この技術記事では、22mmパイロットデバイスに対するモジュール式アプローチが、こうした産業上の課題にどのように対応できるかを解説します。技術的なケーススタディとしてEatonM22シリーズを用いて、モジュール性、現場設定可能な機能性、および堅牢な構造が、HMI設計において技術者に汎用性と信頼性を兼ね備えたツールキットを提供する仕組みの検証を行います。

このアプローチの基本となるのは、共通のバックパネルコンポーネントのセットから幅広い操作器を構築するシステムです。図1は、このようなコンポーネントファミリの代表的な概要を示しており、さまざまな操作器とその組み立てにおけるビルディングブロック的性質を示しています。

モジュール式22mmパイロットデバイスの構成部品を示す分解図の画像図1:モジュール式22mmパイロットデバイス製品ラインの部品を示す分解図。(画像提供:Eaton)

課題1:過酷な産業環境における耐久性と信頼性

産業用HMIの設計における主要な課題は、過酷な環境下におけるコンポーネントの生存性と長期信頼性を確保することです。液体、粉塵、油、腐食性物質への暴露、および強い振動は、標準的な電気機械式コンポーネントの早期故障を引き起こす可能性があります。

従来、過酷な環境用のコンポーネントを指定するには、特殊で、しばしば高価な、専用コンポーネントを調達する必要がありました。保護等級(IP)定格の低い標準コンポーネントは、高圧水噴射による定期的な洗浄が必要な用途や、浮遊粒子状物質の濃度が高い用途には適しません。このため設計者は、すべての用途に対して過剰な仕様を設定してコストを増加するか、あるいは異なる環境条件に応じて複数のコンポーネントレベルを管理するかのいずれかを余儀なくされています。

より効率的な解決策は、高い耐環境性を基本機能として備えたコンポーネントラインです。たとえば、EatonのM22シリーズは、標準製品ライン全体で高いIP等級を実現できるように設計されています。M22S-PVプッシュプル式非常停止ボタン(図2)およびM22S-DR-S照明なし押ボタン(図3)を含む多くの操作器は、IP67およびIP69K等級を取得しています。

EatonのM22S-PVモジュール式押ボタン非常停止操作器の画像図2:M22S-PVモジュール式押ボタン非常停止操作器。(画像提供:Eaton)

EatonのM22-DR-S RMQ-Titan押ボタンの画像図3:M22-DR-S RMQ-Titan押ボタン。(画像提供:Eaton)

IP67は一時的な水没に対する保護を提供します。この定格は、水たまり、激しい水しぶき、あるいはさまざまな屋外気象条件にさらされる機械上のコンポーネントにとって極めて重要です。

IP69Kは、至近距離からの高圧および高温の水噴射から保護します。これは、厳格で頻繁な衛生管理プロトコルが一般的である食品および飲料、医薬品、重機などの業界において極めて重要な要件です。

これらの規格を満たすコンポーネントを標準化することで、技術者は特殊コンポーネントを調達する必要なく、過酷な条件に耐えるシステムを設計でき、設計および調達のプロセスを簡素化することが可能になります。

信頼性のもう1つの側面は、照明付き操作器用の光源です。従来の白熱電球は、機械的な衝撃や振動で故障しやすく、寿命も限られているため、定期的な交換が必要でした。図4に示すM22-DL-X照明付き押ボタン本体などの操作器を持つM22ラインは、LED照明のみを採用することで、こうした問題に対処しています。

LED照明付きEatonのM22-DL-Xモジュール式押ボタンの画像図4:LED照明付きM22-DL-Xモジュール式押ボタン。(画像提供:Eaton)

ソリッドステートLEDは、本質的に衝撃や振動に強く、最大100,000時間という非常に長い動作寿命を実現しています。この長寿命により、機械の一般的な寿命期間中に電球を交換する必要がなくなり、メンテナンス頻度が削減され、TCOの改善につながります。さらに、M22レンズの光学設計はLEDの出力に最適化されており、周囲光に埋もれにくい、クリアで明るい表示を保証します。

課題2:在庫の最適化と総所有コストの削減

OEMおよびシステムインテグレータにとって、コンポーネントのコストは初期購入価格だけにとどまりません。機能的には異なるが物理的には類似したコンポーネントを幅広く取り扱う場合、在庫管理の複雑さとコストはかなりなものになる可能性があります。一般的な制御パネルには、モーメンタリ押ボタン、メンテナンス押ボタン、およびさまざまなセレクタスイッチ構成が必要になる場合がありますが、これらは従来、それぞれ固有の部品番号で対応していました。

数十種類の固定機能SKU(最小在庫管理単位)を保管することは、高い在庫維持コスト、倉庫管理の複雑化、特定のあまり一般的でないバリエーションが在庫切れになった場合の生産遅延のリスクにもつながります。

現場で変換可能な操作器を備えたモジュール式システムは、このロジスティクス上の課題に対する直接的な解決策を提供します。M22S-DR-SのようなM22シリーズのオルタネート式押ボタンは、設置者によりモーメンタリ機能に変換することができます。図5が示すように、これは操作器本体の側面からアクセス可能な小さなロックリングを調整することで実現されます。この機能は柔軟性と設置の利便性の両方を考慮して設計されています。この単一機能により、1つの部品番号で2つの役割を果たすことを意味し、基本押ボタンに必要な在庫を半減させることが可能になります。

現場変換可能な機能セレクタ(左図)と確実な取り付けのための回転防止タブ(右図)の画像図 5:現場変換可能な機能セレクタ(左図)と確実な取付けのための回転防止タブ(右図)。(画像提供:Eaton)

M22-WRS(図6)などのキー操作式スイッチの場合、このシステムによりキーを取り外せる位置が決定されます。同様に、M22-WKV(図7)などの標準的な2ポジションノブセレクタは、その維持機能を現場で変更できるため、異なる操作ロジックを持つ複数のSKUを用意する必要性をさらに減らすことができます。この適応性により、少数の基本操作器SKUで、膨大な数のアプリケーション固有のロジック要件に対応することが可能となります。

EatonのM22-WRS モジュール式2ポジションキー操作セレクタスイッチの画像図6:M22-WRSモジュール式2ポジションキー操作セレクタスイッチ。(画像提供:Eaton)

EatonのM22-WKVモジュール式セレクタスイッチ操作器の画像図7:M22-WKVモジュール式セレクタスイッチ操作器。(画像提供:DigiKey)

モジュール式で変換可能なコンポーネントファミリを採用することで、企業は在庫内の固有の部品番号数を大幅に削減でき、結果としてTCOの低減、調達プロセスの簡素化、設計の柔軟性の向上につながります。

課題3:限られたスペース内での高度な制御と安全性の統合

産業機械が高度化するにつれて、HMIパネル上の制御機能の密度も増加する傾向にあります。しかし、制御パネル上の物理的なスペースを、多くの場合、容易に変更することはできません。技術者は、使いやすさや安全性を損なうことなく、より小さな設置面積でより多くの制御オプションを提供することを頻繁に求められます。

各機能に1つの標準的な22mm操作器を使用するという従来のアプローチでは、特に多軸方向制御を必要とするアプリケーションでは、利用可能なパネルのスペースがをすぐに不足してしまいます。

複数の機能を1つの22mmの取り付け穴に集約した専用操作器は、効果的な解決策となります。

  • ジョイスティック操作器:ガントリーやコンベヤの移動など、方向制御が必要なアプリケーションでは、図8のM22-WJ2Hなどのジョイスティック操作器が、2つの個別の押ボタンの代わりとなります。これによりスペースを節約できるだけでなく、操作者にとってより直感的な制御インターフェースを提供します。

EatonのM22-WJ2H押ボタン式ジョイスティック操作器の画像図8:M22-WJ2H押ボタン式ジョイスティック操作器。(画像提供:Eaton)

  • ダブル押ボタン:高密度の始動/停止制御には、M22-DDL-GR-GB1-GB0(図9)のようなダブル押ボタンが適しています。2つのボタン(通常は始動/停止用)と中央のインジケータライトを1つのユニットに統合したものです。これらのコンポーネントは、制御密度を最大化するため特別に設計されています。

EatonのM22-DDL-GR-GB1-GB0始動/停止制御用押ボタンの画像図9:始動/停止制御用のM22-DDL-GR-GB1-GB0押ボタン。(画像提供:Eaton)

安全性はHMIの設計において絶対条件です。非常停止回路は信頼性が高く、フェイルセーフでなければなりません。これらの回路におけるコンポーネントの重要な技術的要件は、国際電気標準会議(IEC)/EN 60 947-5-1で定義されているように、ノーマリクローズ(NC)接点に対する「ポジティブ回路動作」(または直接回路動作)の概念です。これにより、万が一接点が溶着するような事態が発生した場合でも、アクチュエータの動作によって接点が機械的に強制的に開かれることが保証されます。

M22システムには、これらの安全定格接点ブロックと連動するように設計された、各種の非常停止操作器が含まれています。アクチュエータの種類には、図10に示すように、標準的なプッシュプル式(M22S-PV)と、図10に示すM22-PVS45Pなどのキーリリース式モデルがあります。キーリリース式では、追加の安全対策を提供し、緊急停止後の機械再起動を、キーを所持する担当者の許可なしにはできないようにしています。

EatonのM22-PVS45Pモジュール式キーリリース非常停止操作器の画像図10:M22-PVS45Pモジュール式キーリリース非常停止操作器。(画像提供:Eaton)

まとめ

産業用HMIの設計において電子技術者が直面する課題には、単一の仕様に基づいて個々のコンポーネントを選定するだけでは不十分であり、より包括的なソリューションが求められています。EatonのM22シリーズのようなパイロットデバイスのモジュール式および現場設定可能システムはこれらの課題を体系的に解決する包括的なツールキットを提供します。

高い保護等級(IP)定格、長寿命LED照明、現場交換可能な機能性、幅広い専用操作器といった特長を活用することで、技術者は、信頼性と堅牢性を兼ね備え、かつ構築および保守コスト効率に優れたHMIシステムを設計することが可能となります。このシステムレベルのコンポーネント選定アプローチは、最終的に設計サイクルの効率化、ロジスティクスの合理化、そしてより安全で耐久性の高い最終製品へとつながります。

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著者について

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Rakesh Kumar, Ph.D.

Rakesh Kumar, Ph.D., is a B2B electronics content writer and strategist and the proprietor of EETips Content Marketing. An IEEE Senior Member and Chair of the IEEE Power Electronics Society Educational Videos Committee, he specializes in creating technical content for electronics manufacturers and distributors. Rakesh has written for WTWH Media publications (EE World, EV Engineering Online), created white papers for TDK Electronics, and contributed to numerous journal and industry publications. With his Ph.D. in electrical engineering, he translates complex technical concepts into clear, practical content that engineers can actually use.

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