クイックコネクトコネクタが、AIデータセンターにおける液冷システムの信頼性を確保

著者 Art Pini

DigiKeyの北米担当編集者の提供

人工知能(AI)の導入により、高性能データセンターと高度なコンピューティングインフラへの需要が高まっています。このようなシステムは多量の熱を発生させるため、設計者は従来の対流冷却や強制空冷では熱管理要件を満たせなくなってきていると感じています。次世代コンピューティングセンターでは、設計者は高効率の放熱が可能な液冷に注目しています。設計者にとっての課題は、冷却システムを解体することなく、コンピューティングシステムの拡張、変更、メンテナンス、および交換を行わなければならないという点です。

その解決策の一部は、素早く着脱できる液冷コネクタにあります。これにより、メンテナンスの柔軟性やモジュール式の拡張性を損なうことなく、効率的な冷却を実現できます。このようなコネクタには、小型化、高信頼性、耐腐食性、密閉性、そして使いやすさに加え、高い嵌合サイクル耐久性が求められます。

この記事では、AIインフラ冷却システムの設計者が直面する課題について概説します。また、Amphenolのクイックディスコネクト(QD)液冷コネクタを取り上げ、こうした課題に対処するコネクタの選択と適用方法をご紹介します。

クイックディスコネクト

電子機器向けの液冷は、最も基本的な仕組みとして、圧力下で循環する冷却液を使用して、コールドプレートに取り付けられ、外部の熱交換器に接続された電子機器を冷却します。加熱された冷却液はコールドプレートから排出され、熱交換器へと循環します。そこで冷却された後、再び循環されます。複数のデバイスを冷却する必要がある場合、マニホールドが各コールドプレートへ冷却液を分配します。一般的な冷却液には、脱イオン水、エチレングリコール、プロピレングリコールなどがあります。これらの冷却液は非導電性であるため、万一漏洩が発生しても通電中の電子機器への損傷を防ぎます。各熱交換器には、低温側の入力ラインと高温側の出力ラインの両方が必要です。

難しい点は、冷却システムを分解することなく、コールドプレートと電子機器を取り外せるようにシステムを設計することです。ここでQDコネクタが役立ちます(図1)。これらのユニバーサルQD(UQD)プラグとブラインドマウント(UQDB)ソケットデバイスにより、冷却液ラインを漏れなく分離することができます。

画像:Amphenolの液冷UQDプラグとUQDBソケット図1:液冷UQDプラグとUQDBソケットの嵌合動作の例を示しています。(画像提供:Amphenol)

複数のサイズ、終端、および接続構成で利用可能なこれらのコネクタは、設計者が幅広い産業用およびデータセンターアーキテクチャにわたって冷却液接続を統合するのに役立ちます。UQDBソケットは、キャビネット背面にアクセスできない密閉型ラックでUQDプラグとブラインド嵌合するように設計されています。プラグとソケットはそれぞれ、ネジ付きスタッドを使って決められた位置でコールドプレートに取り付けられます。Oリングが、QD本体と取り付け面を密閉します。各コールドプレートには2つのQDコネクタがあり、1つは低温冷却液用、もう1つは加熱されたリターン冷却液用です。サーバやその他の電子機器を取り付ける際、円錐状の開口部を持つソケットが、プラグを嵌合構成へとガイドします。QDコネクタには通常、識別リングが付いています。青色は低温ライン用、赤色は高温リターンライン用です。

これらのQDコネクタは、接続解除時に冷却液の漏れを防ぐドライディスコネクト機能を備えています。内部にはバルブが内蔵されており、接続中は両側が完全に嵌合するまで閉じた状態を維持し、その後開いて冷却液の流量を最大化します。接続を解除する際は、接続部が開く前にバルブが閉じ、冷却液通路を密閉して漏れを防ぎます。

Open Compute Project

Open Compute Project(OCP)は、オープンソースとオープンコラボレーションの利点をハードウェア開発に適用し、コンピュータ業界のイノベーションを加速させる組織です。冷却システムは、同組織が注力する分野の1つです。同組織は、これらのコネクタの特性を規定したUQDおよびUQDB仕様を公開しています。

OCPは、UQD02、UQD04、UQD06、UQD08(およびUQDB02、UQDB04、UQDB06、UQDB08)の4つのサイズでQDデバイスを規定しています。呼称の数字は流体開口径を示し、それぞれ1/8インチ、1/4インチ、3/8インチ、1/2インチに相当します。流体開口部が、コネクタの最大流量を決定します。

QDコネクタの単一供給元

液冷システムの設計者にとって、単一供給元から信頼できるQDコネクタを調達できることは効率的です。

Amphenolは、幅広いOCPサイズ、取り付けオプション、および終端のUQD/UQDBペアシリーズを発表しました。これらの製品は、データセンターアプリケーションで一般的な厳しい環境向けに設計されています。このファミリの全コンポーネントのシェル材料はステンレス鋼です。内部スプリングなど、冷却液にさらされる内部部品は耐腐食性のステンレス鋼製です。広く使用されている冷却液に対応するよう設計されており、シリーズの全コンポーネントは0~87ポンド/平方インチ(PSI)(0~0.6メガパスカル(MPa))の使用圧力に対応しています。最大安全圧力は290PSI(2.0MPa)で、-40°Cから+105°Cの温度範囲で作動します。

たとえば、UQDBP-02TMU01-N000(図2)はOCP準拠(リビジョン1.0)のUQDB02プラグで、終端用に外部UNF 7/16-20ネジ付きスタッドを備え、Oリングシールを使用しています。

画像:Amphenol UQDBP-02TMU01-N000 OCP準拠UQDB02プラグ図2:UQDBP-02TMU01-N000は、OCP準拠のUQDB02プラグで、終端用に外部ネジ付きスタッドを備えています。(画像提供:Amphenol)

液冷システムにおける圧力は、電気回路における電圧に例えられます。流量は電流に相当します。流量は流量係数(Cv)で表され、Cvが高いほど流量は大きくなります。Amphenol UQDB02/04/06/08ディスコネクトのCv値は、それぞれ0.4、1.32、2.11、3.83です。

流量曲線は、ディスコネクトを横切る圧力を流量の関数としてプロットしたものです(図3)。

画像:典型的な流量プロット図3:典型的な流量プロットは、4つのコネクタサイズ(UQDB02~UQDB08)の流量とディスコネクトを横切る圧力差の関係を示しています。(画像提供:Amphenol)

流量はコネクタの直径に比例して増加するため、必要な流量によって選択するデバイスが決定されます。なお、流量が増加すると、ディスコネクトを横切る圧力も増加することに留意してください。

エレクトロニクスアプリケーションにおいて重要なのは、環境中の液体の存在を最小限に抑えることです。この点を考慮し、QDコネクタには接続解除時の流体損失も規定されています。Amphenol UQDB02/04/06/08コネクタの流体損失仕様は、それぞれ0.004、0.004、0.006、0.01ミリリットル(ml)です。

QDコネクタペアのもう一方は、UNF 9/16インチ-18ネジ付きUQDBS-02TMU02-N000(図4)ブラインド嵌合ソケットです。

画像Amphenol UQDBS-02TMU02-N000ブラインド嵌合ソケット図4:UQDBS-02TMU02-N000は、UNF 9/16インチ-18ネジ付きブラインド嵌合ソケットです。(画像提供:Amphenol)

UQD/UQDBシリーズは、プッシュツーコネクトラッチ機構を採用し、冷却システムエレメント間の確実で漏れのない接続を実現します。UQDB02プラグは、ゼロ圧で49ニュートン(N)(11.02重量ポンド)の嵌合力で嵌合します。嵌合力はコネクタの直径が大きくなるにつれて増加します(UQDB04/06/08ではそれぞれ58N、60N、68N)。

別の終端方法としては、UQDS-02HSH01-L000(図5)で使用されているように、ソケットにホースを接続するためのホースバーブがあります。

画像:Amphenol UQDS-02HSH01-L000 UQD02ソケット図5:UQDS-02HSH01-L000はUQD02ソケットの1例です。このソケットは、ホースバーブ終端を備え、低温冷却液を流すことを示す青色の識別リングが付いています。(画像提供:Amphenol)

ホースは、冷却システムのエレメントをより柔軟に接続することができます。このホースバーブは、内径(ID)1/4インチ(in.)のホースに対応しています。このシリーズのより大きなコネクタには、適切な流量を維持するために、より大きなホースバーブが組み合わされています。

前述の通り、識別バンドは、コネクタが低温または高温の冷却液を流すことを示しています。

また、UQDLS-02HSH01-L000(図6)のように、リリースボタン付きのソケットも用意されています。

画像:Amphenol UQDLS-02HSH01-L000ソケット図6:UQDLS-02HSH01-L000ソケットには、一体型リリースボタンと赤色の識別マーカーがあります。(画像提供:Amphenol)

リリースボタンにより、嵌合したプラグとソケットを簡単に取り外すことができます。プッシュボタンラッチソケットは、コネクタ本体から突出しないフラットデザインのボタンを採用しており、狭い場所でも簡単にアクセスできます。このソケットは1/4インチのホースバーブで終端されており、赤色の識別バンドが付いています。

まとめ

AIデータセンターは、モジュール式液冷システムを備えた高電力密度化が進んでいます。これらのシステムでは、限られたスペースで安全かつ信頼性の高い冷却を行うために、複数のサイズおよび終端オプションの密閉型ドライブレーク液体ディスコネクトが必要です。AmphenolのOCP対応UQDおよびUQDBソリューションは、これらのニーズを満たし、過酷な環境下でのエレクトロニクスアプリケーションにおける継続的な使用をサポートします。

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著者について

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Art Pini

Arthur(Art)PiniはDigiKeyの寄稿者です。ニューヨーク市立大学の電気工学学士号、ニューヨーク市立総合大学の電気工学修士号を取得しています。エレクトロニクス分野で50年以上の経験を持ち、Teledyne LeCroy、Summation、Wavetek、およびNicolet Scientificで重要なエンジニアリングとマーケティングの役割を担当してきました。オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、任意波形発生器、デジタイザや、パワーメータなどの測定技術興味があり、豊富な経験を持っています。

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