ラッチングSSRがサーモスタット、HVAC、セキュリティ、警報パネル接点スイッチング設計を簡素化

著者 Bill Schweber氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

サーモスタット、HVACシステム、火災警報パネル、セキュリティシステム、ビルオートメーション、産業用制御などの一般的なアプリケーションでは、監視された隣接回路におけるACまたはDC電力の流れを制御するために、シンプルな信号が必要です。電気機械式リレー(EMR)は従来からこのようなアプリケーションをサポートしてきましたが、多くの設計では、フォームファクタの小型化、長期信頼性の向上、設定の柔軟性や機能性の向上、全体的なノイズの低減がますます求められています。小型ICパッケージのソリッドステートリレー(SSR)は、こうしたニーズに応えます。

この記事では、2線式および3線式の幅広いアプリケーションにおいて、リレーを用いた電力スイッチングの課題について考察します。また、LittelfuseのラッチングSSRを紹介し、これらの課題に対処するためにどのように活用できるかを解説します。

単純に見える問題から始める

経験豊富な設計者なら、技術的な解決策、部品表(BOM)、プリント回路基板のスペース、コスト、そしてユーザー体験の観点から、最も解決が難しいのは往々にして基本的な問題であることを知っています。その好例が、家庭やその他の環境で使用されている従来の2線式配線を、暖房システムを起動させるために適応させることです。これはHVAC業界では「call for heat(暖房要求)」と呼ばれています。

歴史的に見て、サーモスタット制御暖房などのシステムは、設計や実装が非常にシンプルでした。従来のT-86(図1)のようなサーモスタットは、検知した温度が設定値を下回ると、単純にスイッチ(金属製または水銀式)を閉じるものです。その長寿命の証として、1953年の発売以来、数千万台が販売され、その多くが現在も使用されています。

画像:従来の2線式T-86サーモスタット図1:従来の2線式T-86サーモスタットを示しています。(画像提供:Cooper-Hewitt Museum)

この接点閉鎖(「ドライ」接点と呼ばれる)により、ACラインから降圧された24VACがEMRのコイルを励磁し、それによってボイラやその他の熱源が作動します。サーモスタットは完全に受動的であり、電力を必要とせず、また供給もしません。リレーはまた、24VACサーモスタット制御ループと暖房システムに電力を供給するACラインとの間にガルバニック絶縁を提供します。シンプルで信頼性が高く、トラブルシューティングも簡単です。

この長年にわたる構成は、デジタル設定値設定と温度表示機能を備えたサーモスタットの登場により変化しました(図2、左)。これに続いて、ユーザーが日や時間を設定できるスマートサーモスタットが登場し、さらに接続性と高度な機能を備えたIoT(モノのインターネット)ユニットが登場しました(図2、右)。パッシブサーモスタットからアクティブサーモスタットへの移行は、電源という予期せぬ新たな要件をもたらしました。旧式のパッシブサーモスタットには配線が2本しかないため、必要な電力を供給する簡単な方法がありません。

画像:基本的なデジタルサーモスタット(左)と接続されたIoTバージョン(右)図2:従来のスイッチ閉回路では、基本的なデジタルサーモスタット(左)や接続されたIoTバージョン(右)に電力を供給できないため、これらの負荷にどのように電力を供給するかという課題が生じています。(画像提供:PRO1iaq、Ecobee)

この電力の問題は、レガシーのサーモスタットやHVACシステムに特有のものではなく、セキュリティシステム、ビルオートメーション、産業用制御、計測アプリケーションなど、「作動」を示す単純なスイッチの閉鎖がある場所ならどこでも発生します。

このジレンマには2つの電力供給ソリューションがあり、それぞれに短所があります。1つは、サーモスタットに交換可能なバッテリを使用することで、これは住宅でも産業環境でも不便です。もう1つは、サーモスタットに24VAC電力を供給するために、新しい3本目の配線を引く方法です。この配線は「コモン(C)」線と呼ばれます。

多くの実環境、特に住宅では、サーモスタットから暖房システムへ新しい配線を追加することは困難を伴います。配線の引き回し、壁への穴あけ、壁の空洞への防火材の設置などが必要となるからです。

SSRがバッテリとコモン線のジレンマを解消

幸い、解決策はあります。CPC1601M(図3)は、2線式システムの制限に対処するために設計された機能を備えたSSRです。

図:Littelfuse CPC1601M非絶縁、1フォームAソリッドステートラッチングリレー(クリックして拡大)図3:負荷から給電されるCPC1601M非絶縁、1フォームAソリッドステートラッチングリレーを示します。(画像提供:Littelfuse)

CPC1601Mは、低動作電流の非絶縁型1フォームAソリッドステートラッチングリレーであり、8接点を備えた3mm x 3mmの小型DFNパッケージに統合されています。ICにはリレーをONにするSET入力、パルスされるとリレーをOFFにするRESETピン、リレーを交互にON/OFFするTOGGLE入力があります。

重要な革新的機能として、CPC1601MリレーICには2つの電源モードがあり、HVcc入力ピンを監視することで、開回路負荷またはシステム電源のいずれかから必要な動作電力を得ることができます。

負荷電源動作モードは、24VACの2次側電圧を持つトランスのようなAC電源に適用されます。負荷が電力を供給するとき、リレーはシステム電源から電力を消費しないため、バッテリの寿命を延ばすことができます。リレーは定期的に開くことで、開回路負荷電圧から電力を「回収」します。ほとんどのアプリケーションでは、この短時間の中断はシステム操作に影響しません。負荷電源モードでは補助電源が不要なため、サーモスタットのコモン線も必要ありません。

一般的なHVACシステムでは、サーモスタットがコンタクタリレー(K1)を駆動します。コンタクタは通常、HVAC負荷を制御する大電流EMRです。リレーK1は、CPC1601MのリレーをON/OFFすることで制御されます。

CPC1601MがOFFモードのとき、トランスT1からの全開放電圧が負荷の出力ピン(RLY1とRLY2)に印加されます。このAC電圧は、内部DMOSボディダイオード(D1とD2)と外部ダイオード(D3とD4)によって整流され、全波整流器を形成します。整流された出力は、次にフィルタコンデンサ(CFILT)に渡され、このコンデンサは負荷電源モードで動作するときにリザーバコンデンサとして機能します。

CPC1601Mは、もう1つ電力関連の機能を追加しています。具体的には、関連するマイクロコントローラユニット(MCU)と外部回路に電力を供給するための電圧出力を提供します。さらに、この出力電圧がユーザーが選択したMCUの電圧レール範囲内であれば、別の低ドロップアウトレギュレータ(LDO)は不要となる可能性があります。このようなアプリケーションで実際に発生する、誘導性負荷のスイッチング時の逆方向過渡現象からスイッチ出力を保護するために、過渡電圧サプレッサ(TVS)ダイオードがRLY1とRLY2の間に配置されます。

システム電源動作モード(図4)では、CPC1601Mへの電力は負荷ではなく電源から供給されます。一般的なサーモスタット用途では、電源はバッテリとなります。CPC1601Mは極めて低消費電力であるため、バッテリ寿命の延長が重要なアプリケーションに適しています。

図:システム電源動作モードでのLittelfuse CPC1601M(クリックして拡大)図4:CPC1601Mはシステム電源から動作するように設定することもできます。(画像提供:Littelfuse)

この構成では、CPC1601MのVCCIN/POUTピンはシステムバッテリに接続され、HVCCピンは未接続のままです。ここでは、CPC1601Mは、SETおよびRESETを使用して、またはTOGGLEモードで制御することができる単純なラッチングリレーとして動作します。

絶縁に関する考慮事項

これまでに示した基本的なCPC1601M回路にはガルバニック絶縁は含まれていませんが、トランスのリターンが互いに分離され絶縁されているデュアルトランスHVACシステムなどでは、システムの適切な動作を保証するためにガルバニック絶縁が必要になることがあります。絶縁を実現する方法はたくさんあり、それぞれにトレードオフがあります。

CPC1601Mでは、パルス幅変調(PWM)信号の単純な容量結合を用いることで、簡単かつコスト効率良く絶縁を実現できます(図5)。システムMCUはPWM信号を複数サイクル生成し、これを絶縁コンデンサ(C1)を介して容量結合します。通常、200キロヘルツ(kHz)でデューティサイクル50%の矩形波であるこのPWM信号は、R2とC2によってフィルタリングされます。これは、CPC1601MのSET入力をトリガするDC信号を生成します。

図:コンデンサといくつかの受動部品を追加したLittelfuse CPC1601M(クリックして拡大)図5:CPC1601Mの回路にコンデンサといくつかの受動部品を追加することで、ガルバニック絶縁を実現できます。(画像提供:Littelfuse)

主な電気的仕様

効率的な機能を提供することが重要である一方、実行可能なデバイスは、システムで必要とされる電圧、電流、その他の定格や属性も提供しなければなりません。このため、CPC1601Mには以下の特徴があります。

  • 3V~5.5Vの電源入力電圧
  • システム電源のスタンバイ電流は1µA未満
  • 低い標準「オン」抵抗(308mΩ)
  • TTL/CMOS互換のロジック入力
  • 60Vpeak ACまたはDC動作に使用可能な双方向負荷接続RLY1およびRLY2接点
  • 2Aの連続負荷容量(ACまたはDC)をサポートするRLY1およびRLY2接点
  • 最大10mWの外部回路に電力を供給するための負荷ハーベスティングパワーピン
  • SETまたはTOGGLEパルス印加後のターンオン時間は最大1µs、RESETまたはTOGGLEパルス印加後の相補的ターンオフ時間も最大1µs
  • 負荷電源モードにおけるゼロ電流でのスイッチングにより、電磁妨害(EMI)の低減を実現
  • EMRクリック音がないため、静音動作を実現

まとめ

従来のパッシブサーモスタット制御ループで使用されていたような、ドライ接点スイッチ閉鎖構成を更新し、ローカルバッテリまたは第3の配線を介してアクティブサーモスタットに電力を供給することは、コンセプトとしては単純ですが、実際には困難を伴います。Littelfuse CPC1601MなどのSSRはこれらの課題に対処し、システムの性能と安定性を高めるその他の便利な機能を提供します。

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著者について

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Bill Schweber氏

エレクトロニクスエンジニアであるBill Schweber氏はこれまで電子通信システムに関する3冊の書籍を執筆しており、また、発表した技術記事、コラム、製品機能説明の数は数百におよびます。これまで、EE Timesでは複数のトピック固有のサイトを統括するテクニカルウェブサイトマネージャとして、またEDNではエグゼクティブエディターおよびアナログエディターの業務を経験してきました。

Analog Devices, Inc.(アナログおよびミックスドシグナルICの大手ベンダー)ではマーケティングコミュニケーション(広報)を担当し、その職務を通じて、企業の製品、ストーリー、メッセージをメディアに発信する役割と、自らもそれらを受け取るという技術PR業務の両面を経験することになりました。

広報の業務に携わる以前は、高い評価を得ている同社の技術ジャーナルの編集委員を務め、また、製品マーケティングおよびアプリケーションエンジニアチームの一員でした。それ以前は、Instron Corp.において材料試験装置の制御に関するハンズオンのアナログおよび電源回路設計およびシステム統合に従事していました。

同氏はMSEE(マサチューセッツ大学)およびBSEE(コロンビア大学)を取得した登録高級技術者であり、アマチュア無線の上級クラスライセンスを持っています。同氏はまた、MOSFETの基礎、ADC選定およびLED駆動などのさまざまな技術トピックのオンラインコースを主宰しており、またそれらについての書籍を計画および執筆しています。

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