電源の異常に対応してライトの安定性を維持する
DigiKeyのヨーロッパ担当編集者の提供
2016-10-18
LED照明の設計者にとって、適用される安全性標準、たとえば汎用および家庭用LEDランプ用のIEC 62560、LEDアレイおよびモジュール用のIEC 62031、ドライバおよび電源用のIEC 61347などは急速になじみ深いものとなってきました。 近くで雷が落ちたなどの事態により、入力パワーラインの高エネルギーサージなどの異常な障害が引き起こされることがあります。 IEC 61000-4-5には、標準の8 × 20μs波形を使用したサージテストが記載されており、欧州の屋外用照明アプリケーションでは約10kV/5kAのレベルが規定されています。
インラインヒューズ、金属酸化物バリスタ(MOV)、過渡電圧抑制(TVS)ダイオードなどのデバイスを並列に接続し、電源やドライバ回路の全体にわたって使用できます。 Littelfuseなどのサプライヤは、損害を引き起こす可能性のある過渡電圧のエネルギーを吸収および転送するため、どのようにデバイスを選択し、配置すべきかについて多くのガイドラインを提供しています。
一般的なLED照明ソリューションに使用されるサージ保護デバイスの概要を、図1に示します。 図に示すように、ラインからニュートラルへ、ニュートラルからグランドへ、およびラインからグランドへわたって、Littelfuse V300SM7などのMOVを配置すると、高いサージ耐性が得られます。 MOVに過剰な電圧がかかると、デバイスは導電性パスを作り出し、サージのエネルギーを転送します。 TVSダイオードは、Littelfuse P6KE300などのデバイスで、過渡エネルギーを放散して回路部品を保護します。 選択するデバイスは、印加される過渡電圧から発生する最大インパルス電流に耐えられる必要があります。

図1:LED照明アプリケーションの設計にサージ保護デバイスを組み入れるためのLittelfuseのガイドライン
ライン電圧の変動に対しての保護
図に示されているデバイスは、短時間の高エネルギーパルスから回路を保護するために有効です。 しかし、時間定数のより低い変動も、損害を引き起こす恐れがあります。 エンドユーザーの要求が増大し、インフラストラクチャが老朽化し、さらに化石燃料を基盤とする従来の発電能力から、より環境負荷の低いモデルへの移行により、再生可能エネルギー源からの分散した発電に強く依存するようになるにつれて、公共施設は電力網の安定性を維持する大きな責任を求められていることは、良く知られています。 このような状況で不足電圧や過電圧の変動が発生すると、一部の種類の回路では部品の信頼性低下や寿命の短縮が起きる可能性があります。
一例として、MR16やGU10バルブのような使い慣れた照明製品をLEDで置き換えるには、コストとサイズの厳しい制約があります。 このような責任に対処するため、Texas Instruments TPS92210 LEDドライバコントローラには、外部の高電圧MOSFETとカスコード構成で接続するよう設計された、内部MOSFETが搭載されています。 これによってスタートアップが簡素化され、外付けの電流センス抵抗が不要になり、プライマリ側のスイッチング損失が減少します。 不連続伝導モード(DCM)での動作がサポートされているため、出力整流ダイオードの逆回復損失も最小化されます。 結果として、TPS92210により効率と信頼性が向上し、同時に従来型のフライバックアーキテクチャと比べてシステムコストが減少します。 一般的なアプリケーションの回路図を、図2に示します。 DRNピン(ピン6)に接続されている外付けMOSFETは、TPS92210の内蔵ドライバMOSFETのドレインに接続され、カスコード回路を形成していることに注意してください。

図2:従来型のフライバックコンバータと比較した性能向上のため設計されたLEDドライバ回路
このドライバ回路は、LEDストリングへ一定の電力を供給するよう設計されています。 電力網の不安定性からライン電圧の低下が発生した場合、ドライバへの入力電流が増加し、出力電力を一定に維持します。 この電流増加により、ドライバの部品に過剰なストレスが起きる可能性があります。 同様に、ライン電圧が大きく増大した場合、トランスのプライマリ側巻線インダクタンスによるリンギングと合わせて、MOSFETやコンデンサなど重要な部品の定格を超過する可能性があります。 既に述べたMOVやTVSダイオードなどの標準部品は、短時間の高エネルギーサージに対しては効果的な保護を行いますが、基盤となるラインの不安定性により損害が起きることを防止するには別の保護が必要になる可能性があります。
TPS92210のようなコントローラを使用する場合、ICのトランスゼロエネルギー検出(TZE)機能を活用し、ACライン入力が正常な範囲を上または下に逸脱した場合、ドライバを一時的にディスエーブルするよう、外部回路を設計できます。
過電圧/不足電圧保護回路の動作
ドライバがDCMで動作しているとき、連続する各スイッチングサイクルは、トランスが完全にリセットされたとき、またはエネルギーがゼロのときのみ開始されます。 TZEピンに接続されている抵抗分割器により、プライマリ側のバイアス巻線がグランドに対して負の電位になったとき、TZEピンから発生する電流を監視し、トランスゼロエネルギーポイントを検出できます。
入力の不足電圧/過電圧が発生したとき、次のスイッチングサイクルの開始を中止してドライバの動作を停止する保護回路を、図3に示します。 この動作は、TZEピン上のDC電圧でゼロクロス検出を禁止することによって行われます。 入力電圧が安全な動作範囲内のとき、この回路はTZEピンにDC電圧を出力しないため、通常のゼロクロス検出が可能になり、コントローラは谷値スイッチングを調整して効率を最適化できます。

図3:入力の不足電圧および過電圧保護の回路図
この回路は、ブリッジ整流器の出力から、整流され平滑化されていないライン電圧を受け取ることで動作します。 この電圧はツェナーD2により12Vにクランプされ、抵抗分割器によってさらに低下されます。 抵抗R3およびR4は不足電圧保護と関連付けられており、R5およびR6は過電圧保護を扱います。 抵抗R3、R4、R5、R6の値は、トリップ閾値をそれぞれ1Vと2.5Vに設定するように決められます。
また、高精度のクワッド単一電源マイクロパワーオペアンプU1(TLC27L4)へ電力を供給するため、12Vバイアスが使用されます。 U1のマイクロパワーオペアンプは、ツェナーダイオードから直接動作し、低い入力電圧において誤ったオン/オフサイクルが発生しないよう選択されます。大きな電源電流を必要とするデバイスを使用した場合に、このような誤ったオン/オフサイクルが発生する恐れがあります。 U1-Aはピーク検出器として動作し、コンデンサC4のVin(rms)に比例するDC電圧を生成します。 U1-BはこのDC電圧をバッファリングし、U1-Cはピーク検出器の電圧が不足電圧の基準であるVR1を下回った場合にエラー信号を出力します。 同様に、U1-Dはピーク検出器の出力を、過電圧の基準であるVR2と比較し、RMS入力電圧が過電圧トリガ閾値を超えたときにエラー信号を生成します。 U1-CおよびU1-Dの出力はツェナーD5で3.3Vにクランプされてから、トランジスタQ1によりバッファリングされ、TZEピンに供給されます。 R10およびR12は約5Vのヒステリシスを生み出し、境界付近での誤ったトリガを防止します。
TPS92210のTZE入力では谷値トランジションが常にスキャンされるため、保護回路によりピンのDC電圧が強制されると、スイッチングサイクルが中止されます。 入力電圧が正常な動作範囲内に復帰すると、スイッチングを再開できます。 この表は、入力が正常な場合と、サージの発生した場合について、デバイスおよびドライバの出力状態がどのように応答するかを示しています。
| 動作入力範囲 | AC入力(V) | U1-Cの出力 | U1-Dの出力 | TZEピンの入力 | LEDドライバの状態 |
|---|---|---|---|---|---|
| 不足電圧 | <85 | HIGH | LOW | DC電圧の強制 | オフ |
| 通常動作範囲 | 85~260 | LOW | LOW | 通常動作 | オン |
| 過電圧 | >260 | LOW | HIGH | DC電圧の強制 | オフ |
表1:TPS92210ドライバの状態の概要
結論
ヒューズ、MOV、TVSダイオードなど、従来型のサージ抑制デバイスは、LED照明ソリューションが国際的な安全性規格に準拠していることを保証するため不可欠です。 AC電源ラインの品質劣化に対してスマートな保護を提供するため、回路を追加して、損傷を引き起こす恐れのある電流や過電圧がドライバの部品やLEDへ到達することを防止できます。
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