RFコネクタの選択と実装を軍事用アプリケーション向けに最適化する方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2022-11-09
RF同軸コネクタ & ケーブルは、軍事用アプリケーションではほとんど目に見えませんが非常に重要な役割を果たしている一般的な部品です。このアセンブリの役割は、アンテナからレシーバに数十ギガヘルツ(GHz)までの周波数のRF信号を送信することです。戦場の過酷な環境に耐えうる堅牢性を持ちながら、繊細なRF信号を確実に処理し、その信頼性を維持しなければなりません。
RFコネクタを探している設計者には何百もの選択肢があります。RFコネクタは、いくつかの基本的な条件を満たせば、ほぼ同じであるという前提で、最も安価なものを選びたくなるかもしれませんが、それは間違いです。多くのRFコネクタは厳密な技術仕様に沿って作られていません。このため、設計不良の部品が故障する可能性があるわけです。ですが、そうなると、数百万ドルもする軍用ハードウェアが危機一髪というときに動作しなくなる可能性があります。そのため、一般に認められている国際規格に合わせて製造された部品を選定することが重要になります。
耐久性・耐湿性・耐塵性などの機械的特性やインピーダンス・周波数範囲・電圧定在波比(VSWR)・絶縁抵抗などの電気的特性ではないその他のファクターも、設計を左右する場合があります。たとえば、ロケットランチャーのレール、光学部品の内部表面、小火器などの軍事用アプリケーションでは、標準的なステンレス製コネクタからの光の反射が動作上の問題を引き起こすことがあります。
堅牢で信頼性の高いRFコネクタをお探しの場合は、自社のRFコネクタが関連する軍事性能仕様・規格に適合するように製造されているという認証を取得している、信頼できるメーカーに依頼するのがよいでしょう。
そこで、本稿では、軍事用アプリケーション向けRF同軸コネクタの主な電気的・機械的選定基準について考察します。Amphenol SV Microwave製の実例を示し、その応用について検討します。特に重点を置いて検討するのは、 黒色クロムのRFコネクタを使うニッチなアプリケーション向けに、ハイグレードで耐久性がある反射防止加工を使用することについてです。
高性能のRF同軸ケーブル & コネクタ
RF部品を軍事用アプリケーションの過酷さに耐えられるようにするには、関連する軍用性能仕様(MIL-PRF)に適合した部品を購入することがポイントになります。適合するRFコネクタを供給できるのは、一部のメーカーのみです。そのようなグレードのコネクタを製造している企業の一つが、Amphenol SV Microwaveなのです。同社は、MIL-PRFM39012に適合する、400種類以上のRFコネクタを提供しています。
MIL-PRF-39012は、RFコネクタの主要な規格です。この規格に適合するには、いくつかの製造段階において、目視、機械的、電気的なテストが必要とされます。また、この規格には、製造施設と製造プロセスが満たしていなければならない品質基準もあります。MIL-PRF-39012に適合した同軸コネクタ & アダプタは、レーダ、SATCOM地上装置、航空宇宙用RF/マイクロ波アセンブリなどの軍事用アプリケーション(およびその他の高い信頼性が要求されるアプリケーション)に適しています。
MIL-PRF-39012コネクタの鍵となる選定基準は、センターピンが規格に規定された深さ・接着品質・仕上げで金メッキされていることです。固定コンタクトに金メッキを施すことで、過酷な環境下でも長期間にわたって、良好な電気的接触が可能になるとともに挿入損失が最小限に抑えられるからです(図1)。
図1:MIL-PRF-39012コネクタの鍵となる選定基準は、センターピンが規格に規定された深さ・接着品質・仕上げで金メッキされていることです。(画像提供:Amphenol)
RF同軸ケーブルの設計上の留意点
軍事用アプリケーション向けのRF同軸ソリューションは、ケーブルとコネクタを一体型システムとして設計することが重要です。一体型システムの性能の大部分は、これら2つの部品が完璧に連携するかどうかによって決まります。
典型的な同軸ケーブルは、銅線または銅被覆鋼線のコアで構成されています。このコアは、接続された機器同士の間で高周波の入出力信号を伝送します。コアの周囲には、プラスチックを通常、材料とする誘電絶縁体が取り付けられています。この誘電絶縁体の厚さは一定のため、コアと、誘電絶縁体を囲むメタルシールドとの間隔を一定に保つことができます。この点は重要です。厚さが変化すると、インピーダンスが変化し、信号の完全性に影響を与えるからです。
前述のメタルシールドは、銅、アルミなどの金属を編んだものであり、絶縁体をしっかりと包み込みます。その役割は、内部コアを外部の電磁妨害(EMI)からを保護することです。次いで、アセンブリをゴムやプラスチックのジャケットでシースすることで、内部の導体を絶縁および保護します(図2)。屋外用ケーブルでは、日光や湿気からワイヤを保護するために、追加の絶縁体と特殊なジャケットが必要です。
内部のコアが高周波信号を伝送するのに対し、シールドはもっぱらリターンラインとして機能します。2つの導体の間には電磁場が存在しますが、シールドを超えて広がることはありません。つまり、ケーブルを通過するRF信号が近くの電気・電子機器に影響を与えることはありません。
図2:同軸ケーブルは、内部導体、プラスチック誘電体、戻り導体/シールド、外部(黒色)ゴムまたはプラスチックジャケットの4つの部品で構成されています。(画像提供:Amphenol)
誘電絶縁体が中心導体に接触する部分では、電気エネルギーの一部が吸収されます。ケーブルが長い場合、信号の減衰が大きくなる可能性があります。高効率ケーブルは、スペーサーを使用することで、内部導体との接触を最小限に抑え、内部導体と外部導体の間に一定の空隙を形成して効率的な誘電体として機能させています。
インピーダンスの重要性
高周波のRFシステムでは、トランスミッタやレシーバのインピーダンスとアンテナのインピーダンスを整合させることが伝送効率の向上につながります。
不整合が大きいと、順方向電力が妨害され、定在電圧波が発生するため、アンテナの効果が低下します。電圧定在波比(VSWR)は、インピーダンスがどの程度均等化されているかを示す一般的な指標です。VSWRが1の場合はインピーダンス不整合損失がないことを示し、この数値が大きくなるほど損失が大きくなることを示します。たとえば、VSWRが3.0の場合は、送信電力の約25%がアンテナシステムで失われていることを示します。
RFコネクタとRFケーブルはアンテナインピーダンスの一部を成しているため、設計者はRFシステムの効率を最大化するためにこれらの部品のインピーダンス値を知っておく必要があります。同軸ケーブルの特性インピーダンスは、内部導体の外径と外部導体の内径との比に比例します。この間隔を設定し維持することが、誘電絶縁体の主な役割です。
ケーブルメーカーが供給しているRFケーブルのインピーダンスは通常、50、75、または95オーム(Ω)ですが、その他のインピーダンスのRFケーブルも市販されています。ケーブルには、さまざまな固定インピーダンスのほかにも、いろいろなタイプの誘電体、静電容量、外径、減衰特性、シールド材料のものがあります。
ケーブルのバージョンは一般に、LMR(これらの文字の意味は歴史的なものです。重要なのはこのケーブルが低損失タイプであること)とRG(無線ガイド)の2系統に分類されます。RGタイプの方が、選択肢が多くなりますが、そのすべてが軍用仕様に適合しているわけではありません。軍事用アプリケーション向けのRGタイプケーブルは、信頼できるサプライヤから購入することができます。
RF同軸コネクタの留意点
RF同軸コネクタを使用すると、ケーブルを無線機器にしっかり接続することができます。どんなに良いケーブルでも、コネクタの装着が悪いと、電気的性能が低下します。ケーブルとコネクタ間の機械的に安全で電気的に堅牢な嵌合により、高周波でも良好な信号の完全性と安定したインピーダンスが実現されます。完全性を実現する一つの方法は、ケーブルとコネクタを一緒に指定し、一体型のアセンブリとしメーカーから納品してもらうことです。メーカーは、高品質の接続を実現するための最適な設備を持っているため、納品前にアセンブリの完全性をテストできるからです。
標準的な有極性オスコネクタには、シェルの内側のネジ山と、センターピンがあります。これに対し、標準的な有極性メスコネクタには、シェルの内側のネジ山はありますが、センターピンはありません。オスコネクタとメスコネクタを嵌合させてケーブルを接続することは、ケーブル固有の信号損失を増加させるので、良い設計方法ではありません。長尺のケーブルは連続ケーブルを指定することをお勧めします。この方が、信号損失を低減でき、インピーダンスを一定に保つことができるからです。オスコネクタを別のオスに、またはメスをメスに接続する正しい方法は、同軸ケーブルアダプタを使用することです。これは機能はしますが、ハイスペックなアプリケーションでは信号損失が増大するため、お勧めしません。
RFケーブルと同様に、RFコネクタにもさまざまなタイプがあり、インピーダンスも各値に固定されています。代表的な例としては、SMA(サブミニチュアバージョンA)があります。このコネクタは、堅牢なネジ式カップリング機構を備え、標準インピーダンスは50Ωで、DC(0ヘルツ(Hz))から18GHzまで使用できるように設計されています。アプリケーションとしては、マイクロ波システムやハンドヘルド無線などがあります(図3)。
図3:SMAコネクタはネジ込み式で、50Ωのインピーダンスを持ち、最大18GHzのRF信号を処理できます。(画像提供:Amphenol)
また、もう一つの代表的なタイプとして、SMB(サブミニチュアバージョンB)があります。SMAより小型で、スナップオンカップリング設計を採用しています。インピーダンスは50Ωと75Ωがあり、最大4GHzで動作します。このコネクタは、SMA製品ほど堅牢ではないため、過酷な環境には適していません。
その他のタイプのRFコネクタとしては、Fタイプ(ケーブルモデムやケーブルテレビなどのアプリケーション用)、Nタイプ(太いケーブルを使う業務用アプリケーション用)、FME(セルラー通信デバイス用)、TNC(屋外セルラーアプリケーション用)、UHF(アマチュア無線や船舶通信用)などのコネクタがあります。
RF同軸ケーブルに付属しているRFコネクタは通常、バルクヘッドに付属している反対タイプのコネクタにネジ込むか、RF信号を受信または送信する機器に直接ネジ込みます。バルクヘッドタイプでは、ケーブルコネクタの内部ネジが外部ネジで固着されています(図4)。バルクヘッドコネクタは、ケーブルのRFコネクタを製造しているメーカーが最も良い供給元ですが、標準化により、同タイプのコネクタならどのメーカーのものでも問題なく動作することが保証されています。
図4:SMAバルクヘッドコネクタの外部ネジに、ケーブルコネクタの内部ネジが固着しています。(画像提供:Amphenol)
さまざまな反射防止型RFコネクタ
信頼できるメーカーには、ストレート、アングル、オス・メスと、コネクタの一式が揃っています。ただし、Amphenol SV Microwaveなどのメーカーでは特殊な部品も提供しています。同社の一般的な製品群以外の特殊部品で主なものは、ケーブルとバルクヘッドの両方に使用可能な反射防止型SMA RFコネクタです。
軍事用アプリケーションでは、産業用RFコネクタの標準的なステンレスや真鍮の仕上げが問題となる場合が多くあります。そのようなRFコネクタは、たとえば小火器に使用すると、自然光を反射して戦闘員の位置が知られてしまう可能性があります。また、航空機やヘリコプターの光学系に使用されるRFコネクタは、光の偽信号を発生させるので、照準システムの精度を損なう可能性があります。
反射防止型RFコネクタの需要に応えるため、Amphenolは黒色クロムSMAオスケーブルコネクタ2911-61008(図5の左)と、それに関連する黒色クロムSMAメスバルクヘッドコネクタ2921-61689(図5の右)を発表しました。これらの製品はインピーダンスが50Ωで、最大18GHzのRF信号に対応し、最大500回の接続サイクルが可能です。いずれもセンターコンタクトは金メッキのベリリウム銅です。これらのRFコネクタが使用できるように設計されているRG-405は、0.085インチ(in.)のセミリジッドRF同軸ケーブルであり、軍用仕様に適合し、防衛アプリケーションで普及しています。
図5:Amphenolの軍用仕様SMAオスケーブルコネクタ(左)とメスバルクヘッドコネクタ(右)には、反射防止型黒色クロムプレートが付属しています。(画像提供:Amphenol)
RFコネクタ本体の材質はステンレスで、その上にMIL-C-14538規格に適合した黒色クロムメッキを施しています。この規格の対象となる黒色クロムメッキは、軍用独自のもので、硬くて密着性が高く、耐熱性があり、反射を完全に防止できることが特長です。これらのコネクタには、ケーブル切断時にバルクヘッドメスコネクタと一緒に使用するための反射防止型SMAオスダストキャップ2911-61009が付属しています。
まとめ
軍事用アプリケーションは、埃、グリース、熱、振動にさらされます。これらのアプリケーションに使用されるコネクタやケーブルは、高周波信号を何年にもわたって確実に伝送することが期待されています。これらのコネクタのバリエーションには、欠けたり摩耗したりせずに熱や衝撃に耐えるのに十分な強さと耐久性を備えた反射防止型コーティングが必要です。
軍事用RFアプリケーションの設計者は、Amphenol SV Microwaveのような、軍用性能仕様および規格に適合した製品を提供するサプライヤを利用することで、自身の設計で必要な要件を満たすことができるのです。
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