基板対基板コネクタで車載用高速組立と使用に関する要件を確実に満たす方法

著者 Steven Keeping(スティーブン・キーピング)

DigiKeyの北米担当編集者の提供

車載用システムの設計者は、極端な温度や湿度、汚染、振動などにさらされる環境下で、物理的にも電気的にも信頼性の高いコネクタを慎重に選択し、適用する必要があります。自動車が強力な「車輪の上のコンピュータ」となるにつれ、自動車の性能と信頼性の要件を満たし、それを維持することはますます困難になっています。10GBASE-T1やPCI Express version 3(PCIe 3.0)などの規格に対応するために必要な数ギガビット/秒の通信速度を備え、より狭いスペースで多くの伝送路に対応できるコネクタが求められています。

さらに困難なこととして、自動車メーカーが要求する非常に多くの生産量に対応するため、電子機器組立会社は高速組立機を使用する必要があります。しかし、高い生産速度と生産量を維持しながら、コネクタを正確に配置し、問題なく嵌合させることは困難です。

これらの課題は、自動組立中に発生する位置ずれやミスアライメントを吸収する、物理的・電気的に堅牢なフローティングコンタクトコネクタを使用することで対応できます。

この記事では、車載用コネクタが直面している電気信号や物理的なアプリケーションおよび製造上の要件について説明します。そして、これらの要求に応えるために設計者が使用できるJAE Electronicsのフローティングコネクタを紹介します。10GBASE-T1やPCI Express version 3(PCIe 3.0)などの車載用高速通信プロトコルに対応したコネクタの選定方法とともに、高速通信規格や適切なコネクタの選択およびアプリケーションについて具体的に解説します。

高速通信プロトコルの概要

10GBASE-T1は、10ギガビットEthernet(10GbE)規格のファミリの1つで、10ギガビット/秒(Gbps)の速度でEthernetフレームを送信します。10GBASE-T1は、ツイストペアケーブルを使用し、最大15mの距離で動作する「車載用Ethernet」ソリューションです。10Gbpsのデータスループットは車載用通信規格としては最速で、自律走行などのアプリケーションに対応できます。

PCIe 3.0は、もう一つの高速シリアルコンピュータ拡張バス規格です。最大で8ギガトランスファ/秒(GTps)を実現します。ハイエンドの「x16レーン」実装の場合、8GTpsは計126Gbpsのデータ転送速度に相当します。

従来、この技術はPCの高速バスとして使用されていましたが、ハードウェア設計によって伝送データパケットが意図した宛先に到達するよう保証されるため、現在は未来の車両の車載用アプリケーションを対象としています。これにより、自律走行に適した信頼性の高いシステムが実現されます。

車載用高速通信向けのコネクタ

高速通信プロトコルには、高品質なコネクタが必要となります。優れた信号の完全性を確保するために堅牢で信頼性の高い接続を提供するだけでなく、長年の使用において切断や再接続が比較的容易でなければなりません。また、マルチレーン接続による小型化を実現するために、小さなピッチで多くのピンやレセプタクルに対応できなければなりません。

10GBASE-T1やPCIe 3.0などの高速通信プロトコルに対応した最新のコネクタファミリの一例として、JAE ElectronicsのMA01シリーズがあります。これらのコネクタは、圧延面接触や2点接触構造などの機能を提供し、車載用アプリケーションに一般的な振動、衝撃、極端な温度環境下でも確実な機械的・電気的接続を保証します(図1)。

JAE ElectronicsのMA01シリーズ コネクタの画像図1:MA01シリーズのコネクタは、衝撃や振動に対しても電気的導通を維持するのに役立つ2点接触コネクタを備えています。(画像提供:JAE Electronics)

MA01シリーズのコネクタは、8~30mmのさまざまなスタッキング高さで提供され(図2)、10GBASE-T1やPCIe 3.0に要求される8Gbpsの伝送速度に対応できるため、車載用の基板対基板デジタル制御ユニットなどのアプリケーションに理想的です。これらのコネクタは、低い挿入力と抜去力を特長とし、誤嵌合を防止するキーイングも備えています。また、-40~125°Cの広い動作温度範囲を備えています。

JAE ElectronicsのMA01シリーズ コネクタのスタッキング高さを示す画像図2:MA01シリーズのコネクタは、8mm~30mmのスタッキング高さで入手可能です。(画像提供:JAE Electronics)

その範囲の一例として、MA01F030VABBR300があります。このコネクタは、車載グレードの高速伝送基板対基板コネクタです。20.925 x 8.8 x 12.3mmのボディに0.635mmピッチで30個のポジションを搭載しています。コンタクトは銅合金製で、0.1μm(最小)の金メッキ層が施されています。コネクタの電気的仕様は、定格電流0.5A、定格電圧50V ACです。最大100回の嵌合サイクルで設計されています。

MA01F030VABBR300は、MA01R030VABBR600と嵌合して、車載用高速アプリケーション向けの基板対基板接続を形成するように設計されています(図3)。

JAE ElectronicsのMA01F030VABBR300と MA01R030VABBR600が嵌合する画像図3:MA01F030VABBR300(下)は30個のポジションを備えており、MA01R030VABBR600と嵌合することで堅牢かつ信頼性の高い高速基板対基板接続を実現します。(画像提供:JAE Electronics)

組立の課題を克服

電子機器の大量生産には、ロボット組立技術の使用が求められます。しかし、その作業に使用される自動装着機には、機械的な限界があります。その結果、部品の位置決めに許容誤差が生じる可能性があります。能動部品や受動部品では、わずかな位置誤差は一般的で問題ありませんが、マルチポジション、ファインピッチのコネクタを嵌合する際に問題を引き起こす可能性があります。一般的なコネクタは、装着機の真空ノズルが適切に保持できるような平坦面を持たないため、問題はさらに大きくなります。

ピン間の一般的なピッチは1ミリ以下であるため、それほど大きなミスアライメントでなくても、コネクタの嵌合時にコンタクトが損傷してしまいます。

これを克服するため、JAEのMA01F030VABBR300は、X方向、Y方向ともに±0.5mmの移動を許容するフローティングコンタクト技術を備えています。このフロートにより、自動化された機械による取り付け中に発生する位置ずれやミスアライメントが補正されます。これらのコネクタには取り外し可能なキャップが付属しており、装着機の真空ノズルがしっかり保持できるようになっています。また、このキャップはコネクタ取り付け前の嵌合領域に大きな破片が入るのを防ぐ役割もあります(図4、図5)。

このMA01接続の下半分であるJAE ElectronicsのMA01F030VABBR300の画像図4:このMA01接続の下半分であるMA01F030VABBR300は、フローティングコンタクト技術を備え、X方向とY方向に±0.5mmの移動を許容します。これにより、組立時の位置ずれやミスアライメントを補正できます。(画像提供:JAE Electronics)

取り外し可能なキャップが付属するJAE ElectronicsのMA01シリーズの画像図5:MA01シリーズには取り外し可能なキャップが付属しており、装着機の真空ノズルがしっかり保持できるようになっています。(画像提供:JAE Electronics)

基板対基板コネクタのメス側であるMA01R030VABBR600は、配置位置の許容誤差に対応するために接続部の片側のみをフロートさせる必要があるため、リジッドコネクタとなっています。

組立プロセスを容易にするMA01シリーズ コネクタのもう一つの特長は、コネクタとプリント基板とのはんだ接合部が明確に見えることです。従来のコネクタは通常、これらのはんだ接合部を隠してしまうため、検査が難しく、使用中に不具合が発生する危険性があります(図6)。

JAE ElectronicsのMA01シリーズのサイドマウントコネクタを示す画像図6:MA01シリーズのサイドマウントコネクタは、コネクタとプリント基板とのはんだ接合部の品質検査を行いやすい設計になっています。(画像提供:JAE Electronics)

問題のない嵌合の実現

MA01シリーズのフローティングコネクタ技術は、配置位置の誤差を補償するのに役立ちますが、手作業でコネクタを接続すると、より大きなミスアライメントが生じる可能性があります。このようなミスアライメントは、コネクタをそれぞれ保持している上下のプリント基板をブラインドで嵌合する場合に発生することが多く、繊細なコンタクトの位置ずれが起こりやすくなります。さらに悪いことに、プロセス中にコンタクトが破損したにもかかわらず、コネクタが正常に嵌合したように感じることがあります。このようなミスアライメントは、XとY両方の水平方向で発生する可能性があります。

JAEのコネクタは、嵌合プロセス中にコネクタのX方向とY方向のどちらか、または両方に大きなずれが生じても不適切な接続を防ぐために、ガイドポストを備えています。ガイドポストは、コネクタ本体に成形されており、上下のコネクタを正しい嵌合位置に誘導します(図7、図8、図9)。

X方向にずれたコネクタの画像図7:X方向にずれた場合、JAE ElectronicsのMA01シリーズのガイドポストは、上のコネクタを垂直方向に誘導します。(画像提供:JAE Electronics)

過度のミスアライメントを防止するガイドポストの画像図8:Y方向では、コンタクトに損傷を与えるような過度のミスアライメントをガイドポストが防止します。(画像提供:JAE Electronics)

ブラインドでコネクタを挿入するために2枚の基板を近づけている画像図9:ブラインドでコネクタを挿入するために2枚の基板を近づけると、ガイドポストが最大1mmの水平ミスアライメントを補償します。(画像提供:JAE Electronics)

嵌合後は、コネクタのフローティングコンタクト機能により、コンタクト損傷のリスクなしで、車載用アプリケーションに一般的な衝撃や振動を吸収することができます。

高速コネクタの選択

高速通信システムの設計は厄介です。設計者が特定のコネクタの信号の完全性を考慮し始める前であっても、関連するプリント基板のレイアウトでは、クロストークや損失を抑えるために、ターゲットインピーダンスや高速差動信号チャンネルのルーティングなどの要素を考慮する必要があります。しかし、設計者がこれらやその他の重要な設計要素を考慮すれば、コネクタはシステムの最終的な帯域幅、生データのスループット、および信号の完全性において主要な役割を果たすことができます。

高速コネクタを選定する際にまず確認すべきことは、希望する通信プロトコルの最大帯域幅です。高速で動作可能なシステムを設計しても、プロトコルの動作周波数に対応できるコネクタでなければほとんど意味がありません。そのための簡単な方法は、関連するプロトコルの規格に準拠した認定済みコネクタを選択することです。そうすれば、コネクタが最大のスループットと帯域幅を確保するために特別設計されていることを確信できます。

また、準拠コネクタは、関連する高速プロトコルのターゲットインピーダンス(通常50Ω)を備えています。コネクタの材質、基板への取り付け方法、寸法などの選択要因も重要ですが、信号の完全性にはあまり影響を与えません。

コンプライアンス認証によってコネクタが作業に対応しているという自信が持てますが、最終選考に残ったコネクタを生産品と同様または同一のレイアウトのテスト用プリント基板でテストすることが重要です。データシートやコネクタ単独でのテストでは、実際の使用時に発生する可能性のある信号の完全性の問題が表面化しない場合があります。試作組立でテストすることで、信号の反射や歪みの問題を明確にすることができます。

コネクタの信号の完全性を判断するための重要な測定項目は、Sパラメータとアイダイアグラムです。Sパラメータは、周波数領域での信号のリターンロスと挿入損失を示します。コネクタを取り付けた状態で動作回路を測定してから、コネクタを取り外した状態と比較して、信号の完全性に対する影響を評価する必要があります。

オシロスコープで生成されたアイダイアグラムは、回路の性能をデジタル領域で視覚化したものです。これは、損失、クロストーク、符号間干渉(ISI)、ビット誤り率を視覚化するための標準的な方法です。繰り返しになりますが、信号の完全性に対する影響を確認するには、コネクタを使用した場合と使用しない場合のテストを行う必要があります。

まとめ

車載用基板対基板コネクタの厳しい物理的・電気的性能要件を満たすと同時に、高速自動組立時の位置決め不良やミスアライメント許容誤差によるコネクタ破損を回避することは、設計者にとって困難です。JAE ElectronicsのMA01シリーズ コネクタを使用することで、これらの課題を克服することができます。

上述したように、MA01コネクタはマルチギガビット通信プロトコルに準拠し、低抵抗の挿入と切断が可能な堅牢で信頼性の高いソリューションを提供します。また、高速組立を考慮した設計にもなっています。取り外し可能なキャップ、フローティングコネクタ、ガイドポストなどの機能により、ミスアライメントやコンタクト破損のリスクをなくし、基板取り付けやブラインドでの基板対基板接続において許容誤差を拡大することができます。

DigiKey logo

免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、DigiKeyの意見、信念および視点またはDigiKeyの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。

著者について

Image of Steven Keeping

Steven Keeping(スティーブン・キーピング)

スティーブン・キーピング氏はDigiKeyウェブサイトの執筆協力者です。同氏は、英国ボーンマス大学で応用物理学の高等二級技術検定合格証を、ブライトン大学で工学士(優等学位)を取得した後、Eurotherm社とBOC社でエレクトロニクスの製造技術者として7年間のキャリアを積みました。この20年間、同氏はテクノロジー関連のジャーナリスト、編集者、出版者として活躍してきました。2001年にシドニーに移住したのは、1年中ロードバイクやマウンテンバイクを楽しめるようにするためと、『Australian Electronics Engineering』誌の編集者として働くためです。2006年にフリーランスのジャーナリストとなりました。専門分野はRF、LED、電源管理などです。

出版者について

DigiKeyの北米担当編集者