マイクログリッドとDERで産業施設や商業施設の持続可能性とレジリエンスを最大化する方法

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

太陽エネルギー、風力エネルギー、熱電併給(CHP)、バッテリエネルギー貯蔵システム(BESS)、さらには従来型の発電機などの分散型エネルギー資源(DER)も、特にエネルギーの生成、フロー、貯蔵、消費をインテリジェントに調整および管理する自動制御システムを使用してマイクログリッドに統合した場合、商業施設や産業施設における持続可能性とレジリエンスの向上に大きく貢献する可能性があります。

マイクログリッドの環境的および経済的利益を最大化するために、コントローラは、DERの運転と統合のバランスをリアルタイムでとり、照明、暖房、換気および空調(HVAC)システム、電気自動車(EV)充電、情報技術設備などのスマート負荷を管理する必要があります。そして、過去の需要情報を使用して将来の負荷プロファイルを予測し、電力系統への安全で効率的な接続を提供し、リアルタイムのエネルギー価格データを使用して需要応答機能をサポートしなければなりません。

この記事では、マイクログリッドを構成する要素を確認し、マイクログリッドのアーキテクチャに注目して、DERの相互接続に関する要件を定めたIEEE 1547と、マイクログリッドコントローラの機能を記述するための包括的な技術プロセスを提供するIEEE 2030の概要を紹介します。その後、マイクログリッドコントローラがどのように持続可能性、レジリエンス、経済的利益を高めることができるかを考察し、最後にマイクログリッドに関するサイバーセキュリティの懸念について簡単に説明します。

マイクログリッドの構成要素

マイクログリッドは、その実装や構成要素が多様です。マイクログリッドとDERがどのように持続可能性とレジリエンスを最大化できるかを議論するには、まずマイクログリッドの定義と構成要素およびアーキテクチャの例をいくつか挙げることから始めるのがベストです。米国エネルギー省(DOE)は、マイクログリッドを「明確に定義された電気的境界線内で相互接続された負荷および分散型エネルギー資源のグループであり、系統に対して単一の制御可能な実体として機能するもの。マイクログリッドは、系統との接続と切り離しが可能で、グリッド接続モードとアイランドモードでの運用が可能である。」と定義しています。

マイクログリッドの定義は単純ですが、マイクログリッドを構築する際には、さまざまなマイクログリッドのカテゴリ、運転モード、可能なサブシステムから選択する必要があり、マイクログリッドの最大限の持続可能性とレジリエンスを実現するためには、多くのアーキテクチャと運用の選択が必要となります。自動化は重要な検討事項です。自動化されたサブシステムの例としては、以下のようなものがあります(図1)。

  • 多様なDERとCHPを含むマイクログリッド内の発電
  • 配電ネットワーク
  • BESS
  • HVACシステム、産業施設の機械やモータなどの負荷
  • 電気自動車の充電とVehicle-to-grid(V2G)接続の管理
  • マイクログリッドコントローラおよび開閉装置
  • グリッド接続設備のための電力系統への相互接続

さまざまなDER、CHP、負荷を含むマイクログリッドの画像(クリックして拡大)図1:マイクログリッドには、さまざまなDER、CHP、負荷が含まれます。(画像提供:Schneider Electric)

マイクログリッドのカテゴリ

マイクログリッドは、オフグリッドかグリッド接続かで以下のように分類できます。

オフグリッド施設主導型が最も一般的なカテゴリです。使用例としては、鉱山、工業用地、山間部の住宅、軍事基地など、商用電力系統によって電力供給されない遠隔地が挙げられます。

オフグリッドコミュニティ主導型も遠隔地で見られます。使用例としては、遠隔地の村、島、コミュニティなどがあります。施設主導型マイクログリッドが単一の事業体によって管理されるのに対し、コミュニティ主導型マイクログリッドは、利用者グループのニーズに応じなければなりません。より複雑な指揮制御システムが必要になることもあります。

グリッド接続施設は単一の所有者を持ち、主要な送電網が不安定で電力が必要な地域での信頼性を向上させるため、あるいはマイクログリッドの所有者から遮断可能負荷やその他のサービスを受ける経済的インセンティブがある場合に使用されます。使用例としては、病院、データセンター、連続プロセス製造工場、その他の可用性の高い建物などがあります。

グリッド接続コミュニティでは、複数のエネルギー利用者と生産者が主系統に接続され、単一の事業体として管理されます。使用例としては、企業や大学のキャンパス、村、小都市などがあります。これらの施設は、エネルギーの使用者、生産者、貯蔵施設が多様であり、制御が最も複雑になる可能性があります。

独立状態で動作することもあるマイクログリッド

DOEの定義では、マイクログリッドの構成要素についての議論に加え、「グリッド接続モードとアイランドモードの両方」でのマイクログリッドの運用についても言及されています。これらのモードの定義は簡単ですが、実装はより複雑で、いくつかのIEEE規格で扱われています。

IEEE 1547-2018は分散型資源と電力システムの相互接続に関する規格であり、DERとパワーグリッドの相互接続および相互運用性に関する技術的要件について詳しく記述されています。IEEE 1547は進化を続ける規格です。IEEE 1547の初期のバージョンは、DERの普及レベルが低い場合を想定して策定されており、DERがバルク電力システムに及ぼす地域全体の潜在的な影響が考慮されていませんでした。IEEE 1547-2018では、送電システムの信頼性を向上させるため、電圧および周波数の安定化とライドスルー能力に関するより厳しい要件が追加されました。さらに最近では、異常操業に対応するために、1547a-2020の修正条項が追加されました。

IEEE 2030.74では、マイクログリッドコントローラの機能を、2つの定常状態(SS)動作モードと4種類の遷移(T)の観点から、以下のように説明しています(図2)。

  • SS1の定常状態グリッド接続モードは、マイクログリッドが電力系統に接続された状態です。コントローラは、マイクログリッド内のコンポーネントを使用して、ピークカット、周波数安定化、無効電力サポート、ランプ管理などのサービスを系統に提供することができます。
  • SS2の安定したアイランド(「アイランディング」)モードは、マイクログリッドが電力系統から切り離され、単独で動作するモードです。コントローラは、安定したマイクログリッドの運用を維持するために、負荷とマイクログリッド発電およびエネルギー貯蔵サービスのバランスをとる必要があります。
  • T1は、グリッド接続から定常状態アイランドモードへの計画的移行を指します。電力系統が利用可能な場合でも、アイランドモードに切り替える経済的または運用上のインセンティブがあるかもしれません。さらに、このモードはマイクログリッドの動作テストをサポートします。
  • T2は、グリッド接続から定常状態アイランドモードへの計画外の移行を指します。これは、データセンターにおける無停電電源装置の動作に似ており、主系統が故障したときによく使われます。マイクログリッドはシームレスに切り離され、独立した電力ネットワークとして動作します。
  • T3は、定常状態アイランドの電力系統への再接続を指します。これは複雑な技術的手順であり、マイクログリッド上の「グリッドフォーミング」発電機が系統電力の周波数と位相角を感知し、マイクログリッドと主系統を正確に一致させてから再接続します。
  • T4は、定常状態アイランドモードへのブラックスタートです。この場合は、マイクログリッドがダウンするため、電力系統から切り離してアイランドモードで再起動する必要があります。このような状況は、マイクログリッドのコントローラがT2安定移行を使用して処理できない予期せぬ停電のために発生する可能性があります。あるいは、アイランドにすべての負荷を供給し続けるのに十分な発電またはエネルギー貯蔵の予備がなく、すべての不要な負荷をシャットダウンしてから発電機をオンラインにしなければならない場合に必要となる可能性があります。さらに、マイクログリッド上のBESSは、少なくとも部分的に再充電してから再接続しなければなりません。

IEEE 2030.74では、マイクログリッドのコントローラが2つの定常状態に対応する必要があることを示す画像図2:IEEE 2030.74は、マイクログリッドのコントローラに対し、2つの定常状態と、それらの状態間の4種類の遷移に対応することを求めています。(画像提供:National Rural Electric Cooperative Association)

マイクログリッドの導入

DERと負荷の組み合わせはマイクログリッドとほぼ同じ数だけありますが、自動化されたコントローラと開閉装置は共通の要素です。上の図1に示したような大規模なマイクログリッドは、多くの場合、集中制御室、DERと負荷用の分散型開閉装置、グリッド接続設計、マイクログリッドと電力系統間の開閉装置として機能する変電所に分けられます。

マイクログリッドのコントローラには情報が必要であり、レジリエンスと持続可能性を最大化するためには、情報が迅速である必要があります。コントローラは、センサのネットワークを使用して、DERおよび負荷の機能をリアルタイムで監視します。グリッド接続マイクログリッドの場合、コントローラはローカル電力系統の状態も監視します。何らかの異常が発生すると、コントローラはミリ秒単位で応答し、関連するDER、負荷、開閉装置にコマンドを送信します。

開閉装置の容量は数kWから数MWまであり、コントローラの要求に数ミリ秒で応答しなければ、深刻なフォールト状態に陥る危険性があります。一部の開閉装置は、自律的に動作するスマート回路ブレーカを備え、さらなる保護レイヤを提供します。

小規模な設備では、コントローラと開閉装置を一体化し、エネルギーコントロールセンター(ECC)と呼ぶこともあります。ECCは、配線済み、組み立て済み、工場試験済みで入手可能です。ECCは、マイクログリッドの設置を簡素化および迅速化し、系統電力やDERを含む複数のエネルギー源を、優先順位をつけた負荷とともに管理することができます。たとえば、Schneider Electricは、ビルディングスケールのマイクログリッド向けにECC 1600/2500ラインを提供しています(図3)。ECC 1600/2500ラインには、以下のような特長があります。

  • 電力定格は100kWから750kWまでオーダーメイドで設定可能で、既存の建物にも新しい建物にも最適化可能
  • PV、BESS、風力、ガス、ディーゼル発電機など複数のDERに対応
  • スタンバイ発電機やBESSのようなアンカーリソースとPVを併用するなどし、コントローラによって停電時でも電力の使用が可能。
  • 自動化されたインテリジェントな計測により、電力品質、エネルギー使用量、DER生産量の把握が可能
  • 1,600~2,500Aの配電バス付き開閉装置
  • DERのレジリエンスと投資収益率を最大化するためのクラウドベース分析

マイクログリッドのコントローラ(左)と開閉装置(右)を組み合わせたECCの画像図3:ECCは、マイクログリッドのコントローラ(左)と開閉装置(右)を一体化したものです。(画像提供:Schneider Electric)

安全で安心なエネルギー

サイバーセキュリティは、エネルギー安全保障およびレジリエンスの重要な側面です。国際エネルギー機関(IEA)は、エネルギー安全保障を「エネルギー源を取得可能な価格で、中断されることなく入手できること」と定義しています。マイクログリッドは、低コストで安全かつレジリエントなエネルギー供給の確保に大きく貢献します。

通信は、マイクログリッドに不可欠な要素です。これは、性能を最適化するために、クラウドや、場合によってはローカル電力系統と通信することを意味します。また、典型的なマイクログリッドを構成するさまざまなDERと負荷は異なるメーカーから供給され、異種の通信プロトコルおよび技術が採用されています。インターネットコネクティビティおよびWi-Fiのような無線技術は、ほぼすべてのマイクログリッドに見られ、最大の利益を得るために不可欠となる場合があります。また、天気予報や燃料およびエネルギーのリアルタイム価格の収集といった補助的な機能もサポートしています。

サイバーセキュリティの確保は複雑です。安全なハードウェアに加え、攻撃者が機密ネットワークやデータにアクセスしたり、制御ソフトウェアを操作してマイクログリッドの運用に損害を与えたりする可能性のあるサイバー脆弱性に対処するための方針、手順、人材が必要になります。テロリストは一つの懸念材料に過ぎず、競合他社や悪質従業員も考慮しなければなりません。オペレータのミスが生じる可能性や、古いソフトウェアによるネットワークの未知の抜け穴といった可能性もあります(図4)。サイバーセキュリティを後回しにすることはできません。効果をもたらすには、マイクログリッドのハードウェア、ソフトウェア、プロセスのあらゆる面で、最初から設計されていなければならないのです。

人、プロセス、物理的セキュリティホールによる脆弱性の画像図4:人、プロセス、物理的セキュリティホールによる脆弱性は、マイクログリッドの攻撃ベクトルとなり得ます。(画像提供:Schneider Electric)

まとめ

マイクログリッドは、多数のDERと負荷を単一のシステムに統合し、エネルギーの持続可能性とレジリエンスを最大化します。エネルギーとコネクティビティに対する特定のニーズをサポートするために、いくつかのマイクログリッドアーキテクチャを使用することができます。マイクログリッドの増加とDERの普及が進むにつれて、IEEE 1547の相互接続規格が進化し、マイクログリッドのサイバーセキュリティへの注目が高まっています。

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著者について

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Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

ジェフ氏は、パワーエレクトロニクス、電子部品、その他の技術トピックについて30年以上にわたり執筆活動を続けています。彼は当初、EETimes誌のシニアエディターとしてパワーエレクトロニクスについて執筆を始めました。その後、パワーエレクトロニクスの設計雑誌であるPowertechniquesを立ち上げ、その後、世界的なパワーエレクトロニクスの研究グループ兼出版社であるDarnell Groupを設立しました。Darnell Groupは、数々の活動のひとつとしてPowerPulse.netを立ち上げましたが、これはパワーエレクトロニクスを専門とするグローバルなエンジニアリングコミュニティで、毎日のニュースを提供しました。また彼は、教育出版社Prentice HallのReston部門から発行されたスイッチモード電源の教科書『Power Supplies』の著者でもあります。

ジェフはまた、後にComputer Products社に買収された高ワット数のスイッチング電源のメーカーであるJeta Power Systems社を共同創設しました。ジェフは発明家でもあり、熱環境発電と光学メタマテリアルの分野で17の米国特許を取得しています。このように彼は、パワーエレクトロニクスの世界的トレンドに関する業界の情報源であり、あちこちで頻繁に講演を行っています。彼は、定量的研究と数学でカリフォルニア大学から修士号を取得しています。

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