マイクログリッドとDERが産業および商業施設の持続可能性とレジリエンスを最大化する方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2023-08-16
太陽エネルギー、風力エネルギー、熱電併給(CHP)、バッテリエネルギー貯蔵システム(BESS)、さらには従来型の発電機などの分散型エネルギー資源(DER)は、特にエネルギー生成、フロー、貯蔵、消費をインテリジェントに調整および管理する自動制御システムを使用してマイクログリッドに統合した場合、商業施設や産業施設における持続可能性とレジリエンスの向上に大きく貢献する可能性があります。
マイクログリッドの環境的および経済的利益を最大化するために、コントローラは、DERの運転と統合のバランスをリアルタイムでとり、照明、暖房、換気および空調(HVAC)システム、電気自動車(EV)充電、情報技術設備などのスマート負荷を管理します。そして過去の需要情報を使用して将来の負荷プロファイルを予測し、ユーティリティグリッドへの安全で効率的な接続を提供し、リアルタイムのエネルギー価格データを使用して需要応答機能をサポートしなければなりません。
この記事では、マイクログリッドを構成する要素をレビューし、マイクログリッドのアーキテクチャに注目し、DERの相互接続に関する要件を定めたIEEE 1547と、マイクログリッドコントローラの機能を記述するための包括的な技術プロセスを提供するIEEE 2030の概要を紹介した後、マイクログリッドコントローラがどのように持続可能性、レジリエンス、経済的利益を高めることができるかを考察し、最後にマイクログリッドに関するサイバーセキュリティの懸念について簡単に説明します。
マイクログリッドの構成要素
マイクログリッドは、その実装や構成要素が多様です。マイクログリッドとDERがどのように持続可能性とレジリエンスを最大化できるかを議論するには、まずマイクログリッドの定義と構成要素およびアーキテクチャの例をいくつか挙げることから始めるのがベストです。米国エネルギー省(DOE)は、マイクログリッドを「明確に定義された電気的境界線内で相互接続された負荷および分散型エネルギー資源のグループであり、系統に対して単一の制御可能な実体として機能するもの。マイクログリッドは、系統との接続と切り離しが可能で、グリッド接続モードとアイランドモードでの運用が可能である。」と定義しています。1
マイクログリッドの定義は単純ですが、マイクログリッドを構築する際には、さまざまなマイクログリッドのカテゴリ、運転モード、可能なサブシステムから選択する必要があり、マイクログリッドの最大限の持続可能性とレジリエンスを実現するためには、多くのアーキテクチャと運用の選択が必要となります。自動化は重要な検討事項です。自動化されたサブシステムの例としては、以下のようなものがあります(図1)。
- 多様なDERとCHPを含むマイクログリッド内の発電
- 配電ネットワーク
- BESS
- HVACシステム、産業施設の機械やモータなどの負荷
- 電気自動車の充電とVehicle-to-grid(V2G)接続の管理
- マイクログリッドコントローラおよび開閉装置
- グリッド接続設備のためのユーティリティグリッドへの相互接続
図1:マイクログリッドには、さまざまなDER、CHP、負荷が含まれます。(画像提供:Schneider Electric)
マイクログリッドのカテゴリ
マイクログリッドは、オフグリッドかグリッド接続かで以下のように分類できます。
オフグリッド施設主導型 が最も一般的なカテゴリです。使用例としては、鉱山、工業用地、山間部の住宅、軍事基地など、商用ユーティリティグリッドが供給されない遠隔地が挙げられます。
オフグリッドコミュニティ主導型 も遠隔地で見られます。使用例としては、遠隔地の村、島、コミュニティなどがあります。施設主導型マイクログリッドが単一の事業体によって管理されるのに対し、コミュニティ主導型マイクログリッドは、利用者グループのニーズに応じなければなりません。より複雑な指揮統制システムが必要になることもあります。
グリッド接続施設 は単一の所有者を持ち、主要な送電網が不安定で電力が必要な地域で信頼性を向上させるため、あるいはマイクログリッドの所有者から負荷の遮断やその他のサービスを受ける経済的インセンティブがある場合に使用されます。使用例としては、病院、データセンター、連続プロセス製造工場、その他のハイアベイラビリティビルなどがあります。
グリッド接続コミュニティ は、複数のエネルギー利用者と生産者が主系統に接続され、単一の事業体として管理されます。使用例としては、企業や大学のキャンパス、村、小都市などがあります。これらの施設は、エネルギーの使用者、生産者、貯蔵施設が多様であり、制御が最も複雑になる可能性があります。
独立状態で動作することもあるマイクログリッド
DOEの定義では、マイクログリッドの構成要素についての議論に加え、「グリッド接続モードとアイランドモードの両方」でのマイクログリッドの運用についても言及しています。これらのモードの定義は簡単ですが、実装はより複雑で、いくつかのIEEE規格で扱われています。
IEEE 1547-2018、『分散型資源と電力システムの相互接続に関する規格』は、DERとパワーグリッドの相互接続および相互運用性に関する技術的要件について詳しく記述しています。IEEE 1547は進化を続ける規格です。IEEE 1547の初期のバージョンは、DERの普及レベルが低い場合を想定して策定されており、DERがバルク電力システムに及ぼす潜在的な地域全体の影響を考慮していませんでした。IEEE 1547-2018は、送電システムの信頼性を向上させるため、電圧および周波数安定化とライドスルー能力に関するより厳しい要件を追加しました。さらに最近では、1547a-2020の修正条項が追加され、異常操業に対応できるようになりました。
IEEE 2030.74では、マイクログリッドコントローラの機能を、2つの定常状態(SS)動作モードと4タイプの遷移(T)の観点から以下のように説明しています(図2)。
- SS1の定常状態グリッド接続モードは、マイクログリッドがユーティリティグリッドに接続された状態です。コントローラは、マイクログリッド内のコンポーネントを使用して、ピークカット、周波数安定化、無効電力サポート、ランプ管理などのサービスを系統に提供することができます。
- SS2の安定アイランドモード(「アイランディング」モードとも呼ばれる)は、マイクログリッドがユーティリティグリッドから切り離され、単独で動作するモードです。コントローラは、安定したマイクログリッドの運用を維持するために、負荷とマイクログリッド発電およびエネルギー貯蔵サービスのバランスをとる必要があります。
- T1は、グリッド接続から定常アイランドモードへの計画的移行を指します。ユーティリティグリッドが利用可能な場合でも、アイランドモードに切り替える経済的または運用上のインセンティブがあるかもしれません。さらに、このモードはマイクログリッドの動作テストをサポートします。
- T2は、グリッド接続から定常状態アイランドモードへの未計画的移行を指します。これは、データセンターにおける無停電電源装置の動作に似ており、主系統が故障したときによく使われます。マイクログリッドはシームレスに切り離され、独立した電力ネットワークとして動作します。
- T3は、定常状態アイランドをユーティリティグリッドへの再接続を指します。これは複雑な技術的手順であり、マイクログリッド上の「グリッドフォーミング」発電機が系統電力の周波数と位相角を感知し、再接続前にマイクログリッドとメイングリッドを正確に一致させます。
- T4は、定常状態のアイランドモードへのブラックスタートです。この場合、マイクログリッドがダウンし、ユーティリティグリッドから切り離され、アイランドモードで再起動する必要があります。このような状況は、マイクログリッドのコントローラがT2安定移行を使用して処理できない予期せぬ停電のために発生する可能性があります。あるいは、アイランドにすべての負荷を供給し続けるのに十分な発電またはエネルギー貯蔵の予備がなく、発電機をオンラインにする前にすべての不要な負荷をシャットダウンしなければならない場合に必要となる可能性があります。さらに、マイクログリッド上のBESSは、再接続される前に少なくとも部分的に再充電されていなければなりません。
図2:IEEE 2030.74は、マイクログリッドのコントローラに、2つの定常状態と、それらの状態間の4種類の遷移に対応することを求めています。(画像提供:米国農業電力協同組合2)
マイクログリッドの導入
DERと負荷の組み合わせはマイクログリッドとほぼ同じ数だけありますが、自動化されたコントローラと開閉装置は共通の要素です。上の図1に示したような大規模なマイクログリッドでは、多くの場合、集中制御室、DERと負荷用の分散型開閉装置、グリッド接続設計ではマイクログリッドとユーティリティグリッド間の開閉装置として機能する変電所に分離されます。
マイクログリッドのコントローラには情報が必要であり、レジリエンスと持続可能性を最大化するためには、迅速である必要があります。コントローラは、センサのネットワークを使用して、DERおよび負荷の機能をリアルタイムで監視します。グリッド接続マイクログリッドの場合、コントローラはローカルユーティリティグリッドの状態も監視します。何らかの異常が発生すると、コントローラはミリ秒単位で応答し、関連するDER、負荷、開閉装置にコマンドを送信します。
開閉装置の容量は数kWから数MWまであり、コントローラの要求に数ミリ秒で応答しなければ、深刻な故障状態に陥る危険性があります。一部の開閉装置は、自律的に動作するスマート回路ブレーカを備え、さらなる保護レイヤを提供します。
小規模な設備では、コントローラと開閉装置を一体化し、エネルギーコントロールセンター(ECC)と呼ぶこともあります。ECCは、配線済み、組み立て済み、工場試験済みで入手可能です。ECCは、マイクログリッドの設置を簡素化および迅速化し、系統電力やDERを含む複数のエネルギー源を、優先順位をつけて負荷とともに管理することができます。例えば、 Schneider Electric は、ビルディングスケールのマイクログリッド向けにECC 1600 / 2500ラインを提供しています(図3)。ECC 1600 / 2500ラインには以下のような特徴があります。
- 定格出力は100kWから750kWまでオーダーメイドで設定可能で、既存の建物にも新しい建物にも最適化可能
- PV、BESS、風力、ガス、ディーゼル発電機など複数のDERに対応
- スタンバイ発電機やBESSのようなアンカーリソースとPVを併用するなどして、コントローラによって停電時でも電力の使用が可能。
- 自動化されたインテリジェントな計測により、電力品質、エネルギー使用量、DER生産量を把握可能
- 1,600~2,500Aの配電バス付き開閉装置
- DERのレジリエンスと投資収益率を最大化するためのクラウドベース分析
図3:ECCはマイクログリッドのコントローラ(左)および開閉装置(右)を一体化したものです。(画像提供:Schneider Electric)
安全および安心なエネルギー
サイバーセキュリティは、エネルギーセキュリティおよびレジリエンスの重要な側面です。国際エネルギー機関(IEA)は、エネルギー安全保障を「手ごろな価格でエネルギー源を継続的に利用できること」と定義しています 3。マイクログリッドは、低コストで安全かつレジリエントなエネルギー供給の確保に大きく貢献できます。
通信はマイクログリッドに不可欠な要素です。これは、パフォーマンスを最適化するために、クラウドや、場合によってはローカルユーティリティグリッドと通信することを意味します。さらに、典型的なマイクログリッドを構成するさまざまなDERと負荷は、異なるメーカーから供給され、異種の通信プロトコルおよび技術を採用しています。インターネットコネクティビティとWi-Fiのような無線技術は、ほとんどすべてのマイクログリッドに見られ、最大の利益を得るために不可欠です。また、天気予報やリアルタイムの燃料およびエネルギー価格の収集といった補助的な機能もサポートしています。
サイバーセキュリティの確保は複雑です。安全なハードウェアに加え、攻撃者が機密ネットワークやデータにアクセスしたり、制御ソフトウェアを操作してマイクログリッドの運用に損害を与える可能性のあるサイバー脆弱性に対処するための方針、手順、人材が必要です。テロリストは一つの懸念材料に過ぎず、競合他社や悪質従業員も考慮しなければなりません。オペレータのミスが生じる可能性や、古いソフトウェアによるネットワークに未知の抜け穴があるなどの可能性があります(図4)。サイバーセキュリティを後回しにすることはできません。マイクログリッドのハードウエア、ソフトウエア、プロセスのあらゆる面で、最初から設計されていなければ効果はありません。
図4:人、プロセス、物理的セキュリティホールによる脆弱性は、マイクログリッドの攻撃ベクトルとなり得ます。(画像提供:Schneider Electric)
まとめ
マイクログリッドは、多数のDERと負荷を単一のシステムに統合し、エネルギーの持続可能性とレジリエンスを最大化します。特定のエネルギーと接続性のニーズをサポートするために、いくつかのマイクログリッドアーキテクチャを使用することができます。マイクログリッドの増加とDERの普及が進むにつれて、IEEE 1547相互接続規格が進化し、マイクログリッドのサイバーセキュリティへの注目が高まっています。
参照:
- 米国エネルギー省のマイクログリッド構想、DOE
- IEEE 2030.7を用いたマイクログリッドの定義、米国農業電力協同組合
- エネルギー安全保障 - 手頃な価格でエネルギー源の継続的な利用可能性の確保、IEA
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