ハプティクスを活用した製品設計の実践
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2024-03-06
デジタルツールやサービスを活用する機器の人気と実用性が高まっているため、より多くの製品設計者が、ユーザーエンゲージメントを高め、より没入感のある体験を提供する触覚技術を取り入れる意欲を高めています。デジタルインターフェースを触覚ベースで強化することで、触覚インタラクションが追加され、視覚や聴覚を補完する、あるいはそれを超える新たな体験が生まれます。触覚機能の活用を熱望する設計者は、容易に入手可能なコンポーネントを活用して、新たな使用事例やビジネスチャンスを追求することができます。
ハプティクスは、スマートフォンから自動車、ポイントオブセール(POS)機器、ATMに至るまで、目につきやすい消費者向け製品ですでに活用されています。また、医療機器や手術器具、産業機械や製造機械、ビルオートメーションアプリケーションにも使用されています。
ハプティクスの起源は、1880年にピエール・キュリーとジャック・キュリーが、機械的な力を加えることで微小な電荷を発生させる圧電効果を実証したことにさかのぼります。逆圧電効果は、電圧を印加することで物質の物理的な動きを発生させるもので、初期の超音波潜水艦探知機や空中無線システムの開発に利用されました。これと同じ原理が、小型スピーカやマイクロフォン、さらには音楽用ギフトカードによく使われているアクチュエータやトランスデューサの心臓部でも使われています。
触覚機能をバーチャルリアリティ(VR)、拡張現実(AR)、モノのインターネット(IoT)と組み合わせることで、既存の機器とのユーザーエンゲージメントを大幅に改善し、新たなアプリケーションへの道を開く可能性があります。圧電触覚アクチュエータは、バーチャルインタラクションにリアルなタッチを加え、レースから武器発射までのゲーム体験をシミュレートするなど、振動が自然で魅力的な反応感覚を提供します。
ハプティクスは、重要な警告を認識する上で視覚や聴覚が制限される要因を克服する上で、重要な役割を果たすことができます。たとえば医療現場では、ハプティクスは医療従事者が複数の入力に対してより容易に反応するのを助けることができ、1秒1秒が健康的な結果を左右するような状況で救命につながる可能性があります。
未来を感じる:アプリケーションおよび使用事例
ハプティクスの可能性は、製品設計者のビジョンによってのみ制限されます。ARやVRの人気が高まり、人工知能(AI)や機械学習(ML)が進化し続ける中、ハプティクスは、以下のようなさまざまな業界において、これまで以上に没入感のあるデジタル体験を提供する上で重要な役割を果たすことになるでしょう。
- 医療分野では、ハプティクスはすでにロボット支援手術や侵襲的な歯科処置で役割を果たし始めており、医師が長年の診療で身につけた触感を再現するのに役立っています。VRと組み合わせることで、ハプティクスは、メスの使い方から心臓の触診まで、実体験を提供する方法で実世界の治療法をシミュレートすることで、医療技術の学習を進めることができます。ハプティクスは、脳卒中患者の重要な運動技能の再学習を支援したり、切断者に機械的義肢の限界を克服する能力を提供したりすることで、衰弱した負傷者のリハビリテーションの進歩につながる可能性があります。
- 自動車での使用事例では、ハプティクスはすでに運転者に対して車線のはみ出しやハンドルの握り間違いに対する触覚的な警告を行っています。スマートウォッチとナビゲーションシステムを統合すれば、操作者に対して曲がり角を知らせることができ、車載モニタの地図に視線を移す必要がなくなります。
- 産業および製造では、重機のオペレータやラインの作業員は、ボタンや画面を見る必要があるため、注意が散漫になりがちです。ハプティクスは、目をそらさずに正しい選択をしたことを確認しながら、前方や後方の作業に集中し続けるのを支援することができます。ハプティクスを手袋や衣服に組み込むことで、機械の正確な遠隔操作、ピッキング作業の正確さ、潜在的に危険な環境でのフィードバックやアラートの提供が可能になります。
- 小売業および金融サービス業では、顧客はカードやモバイルデバイスを使用したやり取りの確認など、POSシステムやATMとの日常的な接触でハプティクスを体験しています。ハプティクスとAR/VRを組み合わせることで、消費者が実店舗で期待していることをバーチャルに再現できるような、リッチなオンラインショッピング体験ができる可能性があります。
- 民生用電子機器では、ハプティクスが適していることは証明されています。最初の触覚スマートフォンは2000年の民生用電子機器の展示会で発表され、この技術はすぐにAndroidやAppleのスマートフォンに採用されました。当初は、仮想キーボードで入力したり、スクリーンアイコンを押したりする際のユーザーエクスペリエンスを向上させるためのものでした。しかし、ハプティクスは1990年代にビデオゲーマーの体験を豊かにすることで成功を収め、ステアリングヨークのようなコントローラやアクセサリが、ドライブゲームやシューティングゲームなどで触覚フィードバックを提供しました。フィットネストラッカーからAR/VRヘッドセットや眼鏡に至るまで、消費者向け機器やデジタルサービスが進化を続ける中、製品設計者たちは、デジタルの世界を物理的な世界と同じように具体化する新たな機能の開発にしのぎを削っています。
成功のためのコンポーネント:あらゆるニーズに対応するオプション
製品設計者は、容易に入手可能なコンポーネントの製品ラインアップを使用して、仕様やアプリケーションのニーズに合った触覚対応インターフェースを作製することができます。
最初のステップは、利用可能な技術とその設計要件の違いを理解することです。電気機械式コンポーネントは、触覚反応を提供するための最も一般的な技術です。一般的には、以下のような主要カテゴリに分類されます。
- 偏心回転質量(ERM)アクチュエータは、DCモータに取り付けられた軸外回転質量を利用して振動を発生させ、低周波の「ゴロゴロ鳴る」感覚を与えることができます(図1)。アクチュエータは、デバイスの駆動電圧に直接相関する周波数で振動します。電圧印加時に回転モータが所望の速度に達するまでの時間が短く、モータを停止させるまで減速させることができるため、著しい振動の影響が伴いますが、正確な振動パターンを厳密に必要としない用途に最適です。PUI Audio は、3.4mm x 4.4mm x 11mmの小型パッケージで強力な触覚フィードバックを提供する表面実装 HD-EMB1104-SM-2を含む、複数のERMアクチュエータを提供しています。医療用、自動車用、産業用、民生用、携帯機器用、セキュリティ機器用に適しています。もう1つのオプションは、PCI Audio HD-EM0602-LW15-R ブラシレスDC ERMで、ブラシ付きアクチュエータよりもスピードとトルクの制御が改善され、寿命も長くなっています。
図1:ERMアクチュエータの分解図。(提供:PUI Audio)
- リニア共振アクチュエータ(LRA) 部品(図2)はAC駆動で、1軸に沿って2方向に振動を発生させ、高分解能で応答性の高い振動パターンでユーザーに情報を伝えることができます。LRAは、デバイスに印加された信号の周波数と電圧でコイルが励磁されると、質量が直線方向に移動することで振動を発生させ、振動の強さと周波数の両方を独立して制御することができます。ERMとは異なり、LRAを搭載した装置では、コイルが励磁され、質量が上下すると同時に振動を感じます。この技術は、コイルが波形によって励磁され、磁石と振動板が動いて音波を発生させる従来のスピーカと関連しています。PUI Audioの HD-LA1307-SM は、防水、IP定格、表面実装LRAで、バーチャルリアリティ環境、ゲーム機、医療シミュレータ、ハンドヘルド機器、民生用および産業用制御インターフェースなど、さまざまなエンドアプリケーションへのシームレスな統合を容易にします。
図2:LRAの分解図。(提供:PUI Audio)
- ボイスコイルモータ(VCM)(ボイスコイルアクチュエータ(VCA)とも呼ばれる) (図3)は、LRAと同じボイスコイル技術を使用していますが、よりスピーカに似ています。質量はLRAのように直線的に動きますが、サイズと質量が増加し、LRAで再現できるものより実質的でリアルな振動効果を生み出します。PUI Audioの HD-VA2527 円筒型VCMは、柔軟で複雑な振動効果を提供します。
図3:VCAの分解図。(提供:PUI Audio)
- 圧電 触覚部品(ピエゾベンダーやブザーと呼ばれる)は、逆圧電効果に基づいており、電圧が印加されると曲げたり縮めたりする活性圧電材料の平らな層で構成され、音や振動を生み出します。PUI Audioの HD-PAB1501のようなディスク型と、 HD-PAS2507のようなストリップ型があります。ピエゾベンダーは、心臓の鼓動音など、より複雑で詳細な信号を、かつてない臨場感で伝えることができます。さまざまなアプリケーションで、より高い変位精度、より速い応答速度、より大きな発生力、より長い寿命を実現し体験を向上させることができます。ERMやLRAよりも高い電圧を必要としますが、設計者は「ベンダードライバ」集積回路を利用することで、低電圧電源からの電圧要件を満たすことができます。
まとめ
製品設計者は、豊富なコンポーネント製品ラインアップを活用して、ハプティクスを機器に組み込むことができます。どのようなタイプの振動が設計に適しているか、また、設計仕様、エンドユーザーのニーズ、特定のアプリケーションを満たす上で、それぞれのアクチュエータの利点と限界を評価しなければなりません。適切なデザインを選択することで、新たなビジネスチャンスにつながる触覚対応製品を生み出すことができます。
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