エッジ処理はミリ波スキャンの高速化と高精度化を実現

著者 Jessica Shapiro

DigiKeyの北米担当編集者の提供

ミリ波(mmWave)イメージングシステムは、公共施設、競技場、空港などのセキュリティ業務において、ますます一般的になりつつあります。これらのシステムは、金属と非金属の両方の脅威を検出し、スキャン領域内の位置を報告することができるため、セキュリティの専門家は、より迅速に不審なアイテムを見つけ、識別することができます。この記事では、mmWaveイメージングの基礎について説明し、Analog Devices, Inc.(ADI)が設計したmmWaveソリューションでコンポーネントがどのように連携するかを説明します。また、エッジ処理が技術革新の迅速化に果たす役割についてもご紹介します。

mmWaveの基礎

mmWaveシステムでは、トランスミッタとレシーバのアレイが空間的に分散配備されたアンテナアレイに接続されます。ある時点で、アレイの1つのアンテナは、対象物で反射する低電力、単一周波数、無指向性の無線周波数(RF)信号を送信しています(図1)。この反射によって後方散乱信号が生成され、アレイ内のすべてのアンテナで受信されます。アンテナに取り付けられた集積回路(IC)は、受信した後方散乱信号の位相と振幅を測定します。

図:mmWaveシステムにおける送信アンテナ図1:mmWaveシステムでは、送信アンテナは順次、低電力、単一周波数、無指向性の信号を送信します。受信アンテナはその後、後方散乱を測定します。(画像提供:Analog Devices, Inc.)

各送信アンテナから同一の信号が順次送信され、送信ごとに測定プロセスが繰り返されます。10GHzから40GHzの間の複数の周波数ですべての手順を繰り返すことで、周波数が変化するにつれて変化するRF信号の透過の深さと信号の反射をシステムが確実に捉えることができます。分解能は送受信チャンネル数に依存します。たとえば、空港のスキャナは、カミソリの刃のような小さな物体を検出するのに必要な分解能をサポートするために、多くのチャンネルを持っています。武器や爆発物が主な懸念事項である状況では、チャンネル数を少なくすることでコストとスキャン時間を削減できます。

プロセッサは後方散乱情報をベクトルの行列に結合します。ベクトルを周波数と空間的位置に相関させると、得られた多次元アレイを使って、衣服の間や下に隠れている金属と非金属の物体を識別できる画像を作成することができます。

スキャンの速度は、システムが後方散乱データを処理し、トランスミッタからトランスミッタに切り替え、希望の周波数を循環させる速さに依存します。たとえば、10GHzから40GHzの範囲を50MHz刻みでカバーする500素子のシステムでは、30万回の切り替え(スイッチング)が必要となります。高速スイッチングにより、今日導入されているmmWaveシステムは、スキャンされる人物がわずか数秒間立ち止まっただけで有用な画像を作成することができます。さらに高速なスイッチング時間が実現されれば、対象者が立ち止まることなく検出器を通過する間に、ミリ波システムが脅威を検出できるようになるでしょう。

mmWaveシステムの構築

潜在的な脅威を検出し、望ましい分解能を達成し、迅速なスキャンを促進するために、mmWaveシステムの設計者は、連動して動作するハードウェアを選択しなければなりません。ADIの統合mmWaveシステムソリューションには、ADF4368マイクロ波広帯域シンセサイザ、複数のADAR2001トランスミッタIC、複数のADAR2004レシーバIC、AD9083 A/Dコンバータ(ADC)が含まれます。これらの製品については、以下で順に説明します(図2)。

画像:シンセサイザ、トランスミッタ、レシーバ、ADCを組み合わせたmmWaveシステム(クリックして拡大)図2:完全なmmWaveシステムでは、シンセサイザ、トランスミッタ、レシーバ、ADCを、電源管理、スイッチング、ロジックコンポーネントと組み合わせています。(画像提供:Analog Devices, Inc.)

信号チェーンは、電圧制御発振器(VCO)を内蔵したADF4368マイクロ波広帯域位相ロックループ(PLL)シンセサイザから始まります(図3)。ADF4368は、2.5GHzから10GHzまでの周波数ステップを12.5GHz刻みで生成し、800MHzから12.8GHzの範囲内に収まります。連続波(CW)のシングルエンドRF信号のジッタは、30fsecRMS未満です。

画像:Analog DevicesのADF4368マイクロ波広帯域シンセサイザ図3:VCO内蔵のADF4368マイクロ波広帯域シンセサイザは、2.5GHz~10GHzの周波数範囲で低ジッタCW RF出力を供給します。(画像提供:Analog Devices, Inc.)

ADF4368は9dBm(7.94mW)の電力で信号を出力します。トランスミッタICはより少ない電力で済むため、ADF4368の出力は7分割でき、最大128個の4チャンネルトランスミッタICまたは512チャンネルを駆動できます。

ADAR2001トランスミッタIC(図4)は、ADF4368からの入力を受け取り、信号を乗算、フィルタリング、減衰、分割、増幅して、ICごとに4つのアンテナ出力チャンネル(周波数10GHz~40GHz)を提供します。

画像:Analog DevicesのADAR2001トランスミッタIC図4:ADAR2001トランスミッタICは、10GHzから40GHzの範囲を段階的にカバーし、差動アンテナを通して出力されるRF信号を乗算、フィルタリング、減衰、増幅します。(画像提供:Analog Devices, Inc.)

ADAR2001 ICは最小電力-20dBm(0.01mW)のRF入力を受け取ります。その後、信号はハイバンド、ミッドバンド、またはローバンドの4x周波数逓倍器およびフィルタを通過します。次に、プログラマブルアッテネータが約15dBのデジタルステップ減衰範囲を提供し、周波数が下がるにつれて減衰量を増加させ、周波数範囲全体でフラットな出力を維持します。

その後、信号は4つのストリームに分割され、それぞれがパワーアンプ(PA)に送られます。各差動PAは+5dBm(3.2mW)の公称出力、-20dBc~-30dBcの高調波抑制、および最大20GHzの出力周波数に対応するローパス/ノッチフィルタを備えています。PA出力は、ダイポールアンテナやスパイラルアンテナなどの差動アンテナ構造を駆動します。

ステートマシンとも呼ばれる高度なシーケンサには、各周波数ステップを最適化するための乗算器とフィルタブロックの設定があらかじめプログラムされています。そしてシステムは、外部コントローラからの指示を待つのではなく、デバイスのMADV(アドバンス)ピンへのパルスに応答してステートを通過します。このローカルコントロールにより、システムは2nsecごとにチャンネルを切り替えることができます。

アンテナから全方位に送信され、対象物で反射された信号は、ADAR2004レシーバのアレイで拾われます(図5)。これらのICは、クワッドミキサとADCドライバを、デジタルプログラムされたゲインアンプ(DGA)と組み合わせています。

画像:Analog DevicesのADAR2004 4チャンネルレシーバIC図5:ADAR2004 4チャンネルレシーバICは、反射された10GHzから40GHzの信号を、LO入力と組み合わせ、最大800MHzのIF出力を生成します。(画像提供:Analog Devices, Inc.)

ADAR2004では、入力信号の各チャンネルがクワッドローノイズアンプ(LNA)を通過します。その後、2.4GHzと10.1GHzの間のオフセット局部発振器(LO)入力と混合され、4x逓倍器を通過してイメージング周波数に適合します。その結果、出力は800MHz未満の中間周波数(IF)となります。可変ゲインアンプ(VGA)は、IF出力に21dBから41dBのゲインを供給します。

ADAR2001トランスミッタのように、ADAR2004レシーバは、各反射周波数ステップに対してアンプとフィルタ設定を最適化するように事前プログラムが可能な2つのオンチップステートマシンを備えています。システムは、外部コントローラの入力を待つことなく、シンプルなアドバンスまたはリセットコマンドで状態を素早く切り替えることができます。

2GSPSのサンプルレートと100MHzの帯域幅を持つ16チャンネルADCであるAD9083(図6)は、ADAR2004出力から直接入力を受け取ります。コモンモード電圧を共有することで、不要な過渡現象を引き起こす可能性のあるACカップリングコンデンサなしで、これら2つの製品を直接接続することができます。

画像:Analog DevicesのAD9083 16チャンネルADC図6:AD9083 16チャンネルADCは連続時間シグマデルタアーキテクチャを使用し、オンボードデジタルダウンコンバータと信号処理を備えています。(画像提供:Analog Devices, Inc.)

AD9083では、ADAR2004からの入力はフィルタリングされ、連続時間シグマデルタ(CTSD)アーキテクチャを使用してデジタル信号に変換されます。フィルタには、カスケード積分器コーム(CIC)フィルタ、複数の有限入力応答(FIR)デシメーションフィルタ(Jブロックによるデシメーション)を備えた直交デジタルダウンコンバータ(DDC)、または平均化デシメーションフィルタを備えた最大3つの直交DDCチャンネルが含まれます。

AD9083のCTSD変換とフィルタの組み合わせにより、低周波数、高ビット、高速セトリング時間の信号が生成されます。これは、送信側における高速なチャンネルスイッチングにデータ処理が追いつくための重要な特性です。AD9083は、外部処理なしに対象の信号帯域を抽出し、オンチップクロックとPLLを使って他のICと同期することにより、エッジ処理を提供します。

よりスピーディーなスクリーニング

上記のチップセットは、スイッチングを同期させ、不要な信号処理段階を省き、スイッチング時間を短縮することで、スクリーニング時間を短縮します。4チャンネルのADAR2001トランスミッタと、対応するADAR2004レシーバおよびAD9083 ADCを組み合わせた大型アレイでは、必要なスクリーニング時間をさらに短縮できます。

このようなアレイでは、各チャンネルを必要な周波数ステップで循環させるよう、高度なシーケンサがあらかじめプログラムされています。あるICが送信している間、次のICはレディモードに入り、IC間の高速スイッチングを可能にします。チャンネル間スイッチング時間が2nsec、レディ状態から送信までの時間が10nsecの場合、システムは10GHzから40GHzまで0.1GHzステップで約20msecで掃引できます。

スキャン時間をさらに短縮するため、送信ICを3つのグループに分け、それぞれを独自のPLLで駆動することもできます。ADAR2001の各グループは異なる周波数を送信することができ、一度に3つの周波数を送信することができます。受信側のAD9083は、3つの周波数がすべてADCの125MHzのアナログ入力帯域幅内にある限り、3つの直交DDCチャンネルを用いて、一度に3つの周波数を復調することができます。この手法により、全体のスキャン時間を3分の1に短縮することが可能です。

まとめ

上記のADIのmmWaveチップセットは、ADF4368マイクロ波シンセサイザ、ADAR2001クワッドトランスミッタ、ADAR2004クワッドレシーバ、AD9083 16チャンネルADCを集積しています。これらのICは、インテリジェントなオンチップエッジ処理を提供することにより、同期して動作し、下流処理を削減するように設計されています。

オンチップ処理により、中央プロセッサには、すでに復調・デシメーションされ、AIやその他の高度な処理に直ちに使用可能なデータが供給されます。さらに、統合とインテリジェントなエッジコーディネーションにより、スキャン全体が数分の1秒で完了します。これにより、セキュリティ領域に入る人が立ち止まることなくスキャンエリアを通過できるシステムの実現が可能となります。

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著者について

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Jessica Shapiro

Jessica Shapiro uses her engineering and writing backgrounds to make complex technical topics accessible to engineering and lay audiences. While completing her bachelor's degree in Materials Engineering at Drexel University, Jessica balanced engineering co-ops with her work as a reporter and editor on The Triangle, Drexel's independent student newspaper. After graduation, Jessica developed and tested composite materials for The Boeing Company before becoming an associate editor of Machine Design magazine, covering Mechanical, Fastening and Joining, and Safety. Since 2014, she's created custom media focusing on products and technology for design engineers. Jessica enjoys learning about new-to-her technical topics and molding engaging and educational narratives for engineering audiences.

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