TDK-Lambda製PFH500電源モジュールを使用した過酷な環境向け電源の設計
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2020-03-19
産業用モノのインターネット(IIoT)への動きと5Gの登場により、電子システムはますます多様化し、要求の厳しい用途に展開されるようになっています。このようなシステムの設計者に特に重要なのは、ますます高まる信頼性要件を満たす電源です。信頼性要求を満たすには、物理的堅牢性や電磁妨害(EMI)の軽減などの特性が不可欠で、さらに新しいIIoT接続パラダイムの中で性能を発揮するために組み込みのインテリジェンスやコネクティビティも求められます。
このパラダイムの下では、電源およびシステム停止時間の影響を自己診断によって軽減すると同時に、動作時の遠隔からの更新、調整、性能監視を実現できます。
この記事では、こうした要件を満たすソリューションとして、TDK-Lambda社が提供しているPFH500シリーズの電源モジュールの構成を例に紹介します。これにより、PMBusを追加した電源の環境設計により、電源およびシステムの耐久性を高め、最も過酷なアプリケーション環境において性能を維持する方法を説明します。
PMBusを使う理由
デジタル電源管理のための電源管理通信プロトコルのオープン規格であるPMBusにより多くのことが実現できます。この規格は電源の利用を強化し、性能と信頼性を高めます。たとえば、外部計測器なしで、各種電源パラメータ(各出力の電圧および電流、各出力段の温度、各出力段のパワーグッド状態、各モジュールの出力イネーブル状態など)の測定および監視ができます(図1)。
図1:パラメータの監視および変更に使用されるPMBus通信機能。(画像提供:TDK-Lambda)
ユーザーは、連続的なPMBus測定によって突発故障の前に故障の発生を予測することもできます。これは、テレコム5G、スマート工場、データセンター、遠隔または到達困難な場所、その他のアプリケーションにおいて重要です。
TDK-Lambda PFH500電源の特長
PFH500Fシリーズはフットプリントが4 x 2.4インチで、¾ブリック形式で提供されています(図2)。22.4V~33.6V(±20%)から調節可能な28Vの安定化出力電圧で500Wを供給できます。
図2:PFH500FシリーズのAC/DCパワーコンバータは¾ブリックのフォームファクタで、28Vの安定化出力電圧により500Wを供給可能。(画像提供:TDK-Lambda)
この設計では、絶縁メタルサブストレートを要しない単一の多層プリント基板のみを使用することで、コモンモードノイズを低減し、相互接続ピンをなくしています。これによって信頼性が向上しています。この電源アーキテクチャでは、力率補正(PFC)技術と同期整流を採用しています。窒化ガリウム(GaN)電源デバイスは、損失を低くして効率を上げるために使用しており、90%~92%、電力密度100W/インチ3を達成できています。この電源は、入力が85~265VAC、47~63Hzで、世界中で使用できます。
基本的接続
外付け入力EMI(電磁妨害)フィルタなどの外部部品を含む、基本的な回路図を図3に示します。
図3:PFH500F電源モジュールの基本的な外部接続には、左側の外付けEMI(電磁妨害)フィルタが含まれます。 (画像提供:TDK-Lambda)
この電源は、図4に示すように、従来の工場およびスマート工場のどちらの過酷な環境にも適した選択肢です。
図4:PFH500F電源モジュールは、過酷な環境向けの厳格な試験要件に適合します。(画像提供:TDK-Lambda)
試験結果は、特に静電気放電(ESD)、放射無線周波数干渉(RFI)、電磁妨害耐性など、厳格な試験に合格していることを示しています。
ドループシェア並列機能
電源における余分な電圧降下(ドループ)は、接続する負荷に正比例します。大電力を発生させたり負荷を共有するために2つの電源を同時に接続する場合は、TDK-Lambda社のPFH500などの並列可能モデルを使用するようにお勧めします。余分な電圧降下は接続する負荷に正比例するため、2つ以上の電源を並列接続すると出力負荷はそれらの電源間で共有されます。並列接続された電源の片方がより大きな電流を流そうとすると、その出力はわずかにドループし、他の電源がつり合います(図5)。
図5:PFH500はドループモード電流シェアオプションにより他の電源と負荷を共有する並列動作が可能。(画像提供:TDK-Lambda)
最適性能を発揮させるには、すべての電源の出力電圧を同一に設定する必要があります。PFH500(28V版)の負荷安定化(ドループなし)は、28mV、つまり0.1%です(VIN = 115/230VAC)。
ベースプレート冷却能力
伝導冷却は、ある高温領域から他の低温領域へ直接接触により熱を移動させること、と定義されています。たとえば、PFH500には、直接接触により電源デバイスから熱を伝えて逃がす外付けのヒートシンクまたは冷却プレートを取り付けるための平坦面(ベースプレート)があり、それによって本体を冷却します(図6)。
図6:PFH500などの電源モジュールがヒートシンクによる伝導冷却で冷却されることが示されています。(画像提供:TDK-Lambda)
冷却の詳細については、「Techniques for Cooling Power and Other Electronic Devices(電源デバイスおよびその他の電子デバイスを冷却するための技術)」を参照してください。
設計者にとっての他の利点
PFH500には、設計者にとって他にも以下のような利点があります。
- ポッティング加工のメタルケースによる放射低減、および衝撃と振動に対する耐性向上
- 内部のデジタルアイソレーション(オプトアイソレーションは信頼性がない)
- 電源の故障および途絶を防止するサージ保護を備えた入力EMIフィルタ
- 内蔵の突入リレーおよび回路による電源の故障防止
- リモートセンス機能による、ケーブル全体にわたるリモート負荷に対する電圧の精密制御
- 内部の過温度保護および過電流保護による信頼性の確保
- 過電圧および不足電圧から保護するVBUS監視機能による中断のない動作の保証
- インサーキットプログラミング(例、スマートシステムによるもの)
- 安全規格認証による信頼性向上
評価ボードの使用
評価テストボードは、製品の市場投入までの期間を短縮できるため、役立ちます。これらの評価ボード用のガーバーファイルがTDK-Lambda社から入手できます。システムの基板レイアウトの最適化に役立ち、またさらに大きなシステムアーキテクチャの設計レイアウトに貼りこむことができます。
PFH05W評価テストボードには、以下の3種類があります。
- PFH05W28-1D0-EVK-S1(PFH500F-28-1D0-Rモジュール搭載評価キットアセンブリ)
- PFH05W-001-EVK-S0(電源モジュール非搭載評価キットアセンブリ)
- PFH05W28-100-EVK-S1(PFH500F-28-100-Rモジュール搭載評価キットアセンブリ)
各キットは、テストに必要な外部部品をすべて含んでいるため、電源モジュールの初期評価が簡単にでき、市場投入までの期間の短縮に役立ちます。注:負荷を使用した動作時にはモジュールのヒートシンクの冷却に外部の空気流が必要な場合があります。TDK-Lambda製ヒートシンクHS00110は、量産向け数量で注文可能です(図7)。
図7:PFH05W PFH500F評価ボードは、市場投入までの期間を短縮し、設計者の特定のニーズに対する性能を実証できます。ヒートシンクHS00110(図中)など、外付け冷却部品を装着可能です。(画像提供:TDK-Lambda)
これら3種類の評価ボードには、単相の調節可能AC電圧源(この入力源の適切な容量等の決定には各ボードのデータシートを参照)、0~500V DCマルチメータ、適切な出力負荷(適切な負荷の大きさについては各データシートを参照)、基板上のヒートシンクに気流を供給するファンが必要です。
ユーザーのための注:評価テストボードに電気的接続をする前に、いずれの入出力ケーブルも通電していないことを確認してください。
その他の用途
AC入力28V出力電源の本シリーズは、軍事用地上車両プラットフォーム向け商用即納製品(COTS)電源など他の過酷な環境や、VMEbus(Versa Module EuropaバスまたはVersa Module Eurocardバス)などのラックマウントシステムでも使用できます。電子顕微鏡などに使用されるイオンポンプ電源にも、PFH500Fシリーズの利点が活かせます。
結論
PFH500F-28シリーズは、標準的な電源の使用が適さない、衝撃、振動、極端な温度、および電磁妨害(EMI)、RFI、その他のノイズに対する高い耐性などの基本特性を備えているため、過酷な環境向けの優れた選択肢です。また、高電力密度、モジュール式設計、小型フットプリントにより、全体として大規模なアプリケーションにおいて小型の電源実装が可能です。
PMBusに準拠しているため、IIoTの予知解析および保全のアプリケーションにこの電源をうまく組み込むために必要な自己診断、遠隔監視、データ通信が実現できます。
関連リソース
- 「Techniques for Cooling Power and Other Electronic Devices(電源デバイスおよびその他の電子デバイスを冷却するための技術)」
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