多大なリソースが要求されない最新のHMI実装
2019-04-17
10年ほど前のiPhone登場をきっかけに、日常生活の主なあり方が大きく変わり始めました。今までの生活を大きく変えるきっかけとなったこのハンドセットは、テクノロジをすぐに使いこなす上で画面タッチの便利さを知らしめる重要な役割を果たす製品になりました。タッチスクリーンはiPhoneの登場より何年も前からありましたが、世界中がようやくその技術に注目し始めたのはまさにiPhone(そしてすぐに追随した他メーカーの製品)のおかげです。iPhoneに代表されるスマートフォンは、あらゆる面で社会生活の仕組みに実質的な革命を起こし、生活に不可欠なアイテムになっています。
以前のヒューマンマシンインターフェース(HMI)は、主に機械式ボタン、つまみ、スイッチ類や、7セグメントLEDディスプレイ、または文字マトリックスディスプレイユニットで構成されていましたが、今やフルカラーのTFT-LCDスクリーンに加えてサウンド、ビデオ、動画、そしてもちろんタッチ機能を盛り込んだインターフェースに様変わりしています。アプリケーションプロセッサの領域では処理速度が徐々に進化してきましたが、一般的な電子デバイスで単調な処理をこなすマイクロコントローラユニット(MCU)には計算能力にそれほどの進化が見られません。
現在ほとんどのMCUは定評ある8051コアまたはArm® Cortex®-Mシリーズ コアを搭載しており、主に制御やセンシングのタスクを行うために設計されています。これらのユニットは、その従兄弟にあたる高額で高機能なアプリケーションプロセッサが備えるようなグラフィカルプロセッシングユニット(GPU)は備えていません。そこに隔たりが生まれており、タッチによる優れた操作性に慣れたユーザーは、他の機器でも(小売、医療、産業などの分野を問わず)スマートフォンの操作と同じようなタッチ機能、操作感、応答性を期待します。しかしMCUはスマートフォンと同等レベルの使用感をユーザーにもたらすことはできません。何らかの橋渡しが必要です。
システムMCUにHMIへの対応が課せられるとすれば、MCUのコアタスク向け処理能力の一部をHMIに流用する必要性が生まれるでしょう。それは全体的な性能に影響する原因になります。また、ディスプレイにはピクセル単位でのレンダリング、リフレッシュが必要なので、フレームバッファに加えてすべてのグラフィックデータを格納する大容量のフラッシュメモリも必要になります。これらの部品を搭載するとスペースが占有され、電力バジェットが増え、部品コストも上がります。
受賞歴に輝くBridgetekが提供するEmbedded Video Engine(EVE)シリーズICは、その革新的なオブジェクト指向のアプローチによって、HMIの分野に見られるテクノロジのギャップに直接対処するために開発されました。このデバイスの各モデルには高機能なGPU、ディスプレイコマンドプロセッサ、JPEGデコーダ、LCDコントローラ、オーディオプロセッサ、およびタッチプロセッサが搭載されています。EVEチップを標準的なMCUとペアで使用することにより、システムのユーザーは、最新型スマートフォンの使用感をほぼそのまま再現したような操作感をそのシステムで味わうことができます。
EVEは、必要なあらゆる画像や音声コンテンツを、事前に定義済みの特性(円、正方形、ビープ音など)を持つ多数の構成オブジェクトの形で扱うことによって、HMIシステムを能率化できます。つまり、HMIに含まれるグラフィックや音声のあらゆる細部にアクセスするのではなく、単に各要素にシンプルな識別子を割り当てます。その結果、必要となるデータ転送量が大幅に削減され、MCUにかかる負担が軽減され、フレームバッファまたは大容量フラッシュメモリが不要になります。より複雑なオブジェクト、たとえばスライダ、トグル、時計、ゲージなどが必要な場合は、それらはすべて事前にプログラムされた拡張ライブラリから利用できます。

図1: 家電製品向けと小売向けのEVEの使用例(画像提供: Bridgetek)
第3世代のBT81Xシリーズ EVEチップは、ASTC(adaptive scalable texture compression)機能を備えており、強力なスタンドアロンのイミディエイトモードレンダリング性能を発揮します。これらのチップは最大1280 x 720ピクセルのディスプレイ解像度と最大11インチのパネルサイズに対応し、最大で5点タッチポイント検出を備えた静電容量式タッチスクリーンをサポートします。EVEには、HMIの性能を大幅に刷新することで従来の電子ハードウェアに新たな命を与える機能性があります。この技術により恩恵を受ける幅広いアプリケーションには、POS(ポイントオブセール)ユニット、家電製品、血圧モニタ、電力計、セットトップボックス、科学用計測器、エレベータ制御、セキュリティシステム、産業制御、GPSナビゲーション機器、心拍モニタ、自動販売機、ホームオートメーションシステムなどがあります。図1は、EVE(SPIインターフェース経由でのMCUとの連携)の実装例を示しており、それぞれ、a)最先端の洗濯機のHMIと、b)ワイン専門店のスマートな陳列棚です。
さらに洗練されたHMIの展開が期待される有望な分野は自動車業界にあります。EVEはすでに、電気自動車(EV)やアフターマーケットの自動車用アクセサリに関連した市場に幅広く浸透しています。EVEは他にも、ダッシュボードの各種インストルメント類、インフォテイメントコンソール、サイドおよびリアビューのミラーディスプレイ、ヘッドアッププロジェクタ、そして後部座席のエンターテイメントコンソールなどに応用できます。
現在、中心となるインフォテイメントコンソールを補助する多種多様なディスプレイがありますが、これらは走行中に同乗者が車の旅を楽しめるように、そしてより充実したパーソナルな空間を実現できるように車内に組み込まれます。そして、ナビゲーション、マルチメディアエンターテイメント、コネクティビティのために利用されています。このような用途では、統合型のHMIエンジンとして機能するEVEを比較的低コストなMCUとペアで使用することにより、高額なアプリケーションプロセッサやフラッシュ/DRAMメモリサブシステムを置き換えることができます。簡単でコンパクトなソリューションを今までより大幅に低価格で実現できるのです。

図2: 自動車のインストルメント類に応用されたEVE(画像提供: Bridgetek)
図2は、自動車のインストルメント類やダッシュボードユニットにすでに使われているEVEテクノロジの例を示しています。機械的な実装ではなくディスプレイによる実装なので、大幅に柔軟な設計が可能になります。運転手の好みに応じて、モダンな表示とレトロ調の表示を簡単に切り替えることができます。さらに標準のドライビングモードからスポーツモードの表示にも移行できます。色調も運転手の好みに応じて変更できます。

図3: EV充電アプリケーションでのEVE(画像提供: Bridgetek)
さらに、車両の状態を把握する機能にも大きな可能性があります。図3はEVのダッシュボードに使われるEVEを示しています。ここでは、連携するECUからMCUへの入力によって、EVEが重要なパラメータ(車速、航続距離、モータ速度、バッテリ充電レベル、エネルギー回生など)を、そのビデオ再生機能によりリアルタイムの動画でディスプレイにレンダリングできます。

図4: 自動車の座席調整(画像提供: Bridgetek)
図4は座席調整のHMIを示しています。ここでは、EVEがグラフィカルな表示、ディスプレイ上のレンダリング、ユーザーのタッチ入力を処理します。座席位置、背もたれ位置、背もたれの高さなど、好みに応じた設定も可能です。設定はプリセットに保存して、必要なときいつでも呼び出すことができます。
エンジニアがEVEプロジェクトで目的を達成できるように、このプラットフォームをサポートする包括的な開発スイートが用意されています。このスイートは、EVE Screen Designer(ESD)、EVE Screen Editor(ESE)、およびEVE Asset Builder(EAB)で構成されます。最高レベルの抽象化を可能にするESDは、EVEの開発サイクル全体をサポートする完全なワークフローをエンジニアに提供します。またESDはビジュアルプログラミングパラダイムの使用により、すばやいHMIの構築を可能にします。ESEは、初心者/中級レベルのEVEユーザー向けの、直感的なHMIアプリケーションです。このツールにより、EVEコマンドの使用方法を理解できるようになります。ユーザーは、オブジェクトをドラッグアンドドロップするかEVEコマンドを直接入力して、画面上のオブジェクトをインスタンス化することで、1つの静止画面を構築できます。内蔵のEVEエミュレータは、ディスプレイコマンドの効果を、選択した画面サイズと解像度で表示されるように正確に反映します。EABアプリケーションでは、ユーザーがすべてのHMIアセット(画像、音声、ビデオ、フォントデータなど)を変換し、それらを1つのEVE互換形式にまとめることができます。
EVEエコシステム(EVEチップとサポートツールチェーンによる)は、生き生きとしたカラフルでリッチなタッチ対応HMIを作成するための手段を提供し、ユーザーはさらに充実したHMIの操作性を実感できるようになります。しかも、高額なアプリケーションプロセッサICを採用する必要なく、それを実現できるのです。このテクノロジは、自動車業界での普及が進むなど、幅広い多様な産業分野でその用途が見出されています。
免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、DigiKeyの意見、信念および視点またはDigiKeyの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。