Bluetooth® Low Energy設計の第一歩:チップセットからプロトコルスタックおよびモジュールまで
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2016-07-14
Bluetooth Low Energy(BLE)はBluetooth Smartとも呼ばれ、ウェアラブルの接続、スマート家電、近接読み取りタグを可能にしている主要な要素です。 短距離のワイヤレス標準は、より高速な接続で少量のデータを短いレイテンシで転送し、消費電力を削減するよう設計されています。
Bluetooth Smartは、Bluetooth Classic接続と比較して約1/10の消費電力を目指しており、小さなフォームファクタのアプリケーションでこのワイヤレス接続性メカニズムを実現するために、莫大なエンジニアリングの労力が注ぎこまれています(図1)。
Bluetooth Smartのリンクのビットレートは1Mbit/sで、アプリケーションのスループットは800Kbit/sです。 ここでのビットレートの減少は、6msのレイテンシを減算して求められ、この値はBluetooth Classic仕様の100msと比較して大幅に減少しています。 これらの革新により、Bluetooth Smartはスマートウォッチやリストバンドなど通常のウェアラブル設計に使用される接続性の枠を超えて、より広範なウェアラブルや、モノのインターネット(IoT)アプリケーションに対応できるようになりました。

図1:Bluetooth Smart(BLE)は既存のプロトコルから、ウェアラブルやIoTデバイスに利用できるよう進化しました(画像提供:Aislelabs)
たとえば、仮想現実(VR)のモーションゲームプラットフォームで使用されるウェアラブルセンサは、現在ではBluetooth Smart接続を使用して、最小限のレイテンシでデータをワイヤレスヘッドセットへ転送します。 さらに、補聴機能ではBLEリンクを使用して音声の調整を行い、アラートを通知し、バッテリの状態をチェックし、スマートフォン上でプログラムを変更できます。
それ以外にビーコン、リモートセンサ、ウェアラブルの生体認証パスポートも、Bluetooth Smartテクノロジの使用が急激に増大している分野で、数多くのモバイルでの広告や商取引、チケット販売、ドアロック、その他安全性用途を推進しています。 ここでも、Bluetooth Smart対応のスマートフォンやノートブックPCなどのデバイスで位置、加速、および5~30m半径内のタグ付きデバイスとの近接性を監視できます。
最新バージョンであるBluetooth v4.2仕様では、超越的に接続された世界において、より多くのデバイス、または「モノ」を結合し、次世代のウェアラブルやIoTアプリケーションの基礎を築こうとしています。 手始めとして、最大データ転送速度を従来バージョンの2.6倍高速な800Kbit/sに拡張し、センサからのより高速なデータログ出力を可能にし、ファームウェアの更新も迅速に行えるようにしています。
BLEの設計の簡略化
新しい種類のエンドツーエンドBLEソリューションは、シリコンからソフトウェアスタックやモジュールまでにわたり、接続性、セキュリティ、消費電力の観点からBLE設計に主要な改良を加えています。 しかし、IoTの主要な課題として明確に識別されているセキュリティから話を始めることにしましょう。
Bluetooth v4.2ではセキュリティに関する多くのアップグレードが行われているとともに、Bluetooth接続を経由してデバイスを追跡することがより困難になっています。 最初に最も重要な点として、認証機構がBluetooth Classicのレベルになり、接続が十分に安全な場合にのみデバイスのペアリングが許されます。
次に、自動的なペアリングとデュアルモード通信が提供され、オープンモードではペアリングが簡単になり、クローズドモードではデータ転送により厳重なセキュリティが要求されます。 セキュリティと電力効率に関係がある、別の重要な機能として、ビーコンまたは近接タグを使用するには、通信相手のデバイスからの許可が必要となります。
このようなプライバシーおよびフィルタリング機能により、Bluetooth Smartのチップセットは、信頼できるものとして割り当てられているオブジェクトがユーザーの近くに来た場合のみウェークアップします。 さらに、新しいBLEサブシステムは、電力を増分的に消費し、使用されていないときは自身をシャットダウンしてエネルギーを節約します。

図2:高度に統合されたBluetooth SoCとモジュールにより、ウェアラブルやIoTの設計へ簡単にBLEリンクを組み入れることができます (画像提供:Cypress Semiconductor)
Bluetooth Smartチップセットでは、アクティブ、スリープ、ディープスリープ、ハイバネート、ストップなど各種の電源モードを即座に切り替え、電力の使用状況を常にチェックできるようになりました。 たとえば、Bluetoothチップはデバイスをいつ「ディープスリープ」モードへ移行するべきかを判断できます。このモードではCPUがオフになりますが、BLEリンクはアクティブ状態に保たれます。
Bluetooth Smartチップは、ディープスリープモードでの消費電流が500nA未満で、保持メモリのデータは維持されます。 その一方、ハイバネートおよびストップモードでは接続が切断され、チップの消費電流はナノアンペア単位まで低下します。
すでに述べたように、BLEの設計における他の大きな課題は、開発コストとボード面積の2つです。 ここで、シングルチップのBluetoothソリューションと、高度に統合されBluetooth仕様の最新バージョンと互換性のあるモジュールを使用すると、設計者はボード面積を最適化し、BOMの低減と開発期間の短縮という両方の面からコストを削減できます。
シングルチップのBLEソリューション
複数のチップの使用は、基板面積と電力効率という両方の観点から、BLE設計に反しているため、その代わりに革新的なプロセッサアーキテクチャとマルチプロトコルの無線回路を組み合わせた超低消費電力のシステムオンチップ(SoC)を使用して、コスト、面積、消費電力を削減することを検討してください。
これらのSoCでは、特定の要求に応じて、特定の時点で、電源モードを実行するなどの制御機能を、オンボードプロセッサが処理します。 そして、十分なメモリ容量があれば、セキュリティや複数のプロファイルを含む認定済みBluetooth Smartプロトコルスタックを、このプロセッサで実行できます。 この単一のICは、データストレージや顧客向けアプリケーションソフトウェア用のメモリも提供します。 これらのすべてをオンボードで行うことにより、2つ目のマイクロコントローラが不要になり、コスト、消費電力、データインターフェースの電力損失のすべてを削減できます。
さらに、マルチプロトコルのBluetooth無線を使用すると、設計者はミッションクリティカルなデータ転送に合わせてBLEリンクを最適化し、同時に2.4GHzの専用プロトコルによるオーディオストリーミングなど、レイテンシの低いアプリケーションをサポートできます。 信号強度のブーストとマルチファセットのデータ転送手法により、バッテリ駆動時間を延長しながら、送信範囲を安定させることができます。
当然ながら、BluetoothやRF設計一般について十分な経験がない場合、高度に統合されたSoCを使用することにより、設計の一般的な課題に対処し、設計へ簡単にBLE接続性を追加できるようになります。 さらに、Bluetooth SoCは無線の感度が向上し、範囲が拡大され、最も重要な点として電源管理システムが完全に自動化されています。

図3:Cypressの低消費電力Bluetooth SoCは、センサベースのウェアラブルおよびIoTアプリケーションを対象としています
適切な例として、Cypress Semiconductor製のPSoC 4 BLEチップセットが挙げられます。 このチップセットには、アナログフロントエンド、デジタル論理、Bluetooth Smart無線、およびCapSenseという容量性センサが内蔵されています。 このチップセットはARM® Cortex®-M0プロセッサをベースとし、Bluetooth 4.2仕様と互換性のある、ロイヤリティ不要なBLEプロトコルスタックも含まれています。
Cypressは、モジュールを筆頭にPSoC 4を中心とした完全な設計エコシステムを構築することで、設計者が簡単に利用できるよう取り組んでいます。 EZ-BLE PSoCモジュールには、PSoC 4 BLEチップ、アンテナ、水晶振動子、およびプラグアンドプレイのBluetoothサブシステムを作成するために必要なすべてのパッシブコンポーネントが含まれています。

図4:Cypress Semiconductor製のEZ-BLEモジュールは、完全に統合され認証済みの、プログラム可能で広範なモジュールで構成され、オンボードの水晶振動子、トレースアンテナ、遮蔽、受動部品により設計を簡単かつ迅速に作成できるようになります。 比較の例を挙げると、10 x 10 x 1.80mmのモジュールは米国のペニー通貨よりも小さいものです。
さらに、Cypressの提供する評価ボードを使用して、エンジニアはEZ-BLE PSoCモジュール上でアプリケーションを開発し、評価できます。 この評価ボードにより、GPIOをCapSense、LED、スイッチなどのコンポーネントへルーティングし、プロトタイプを簡単に作成できます。 これらの機能は、PSoC Creatorのクイックデザイングラフィカルユーザーインターフェースから使用できます(図5)。

図5:Cypress PSoC Creatorツールにより、設計を迅速に作成できます。この例は、カスタムのアナログフロントエンド(AFE)を持つBLEの心拍数モニタです (画像提供:Cypress Semiconductor)
このツールでは、グラフィカルなドラッグアンドドロップのインターフェースを使用してコンポーネントを事前構築でき、設計が完了すると、回路図に含まれる各コンポーネント用のアプリケーションプログラミングインターフェース(API)が生成されます。 BLEコンポーネントにより、スタックやプロファイルの構成が簡単になります。
モジュール:完全なBLEサブシステム
設計者に役立つよう、Bluetooth Smart SoCのサプライヤであるAtmel、Cypress、Silicon Labsなどはモジュールも提供しています。 これらのサプライヤにとっても、自社のICを中心とした革新により、コスト、フットプリント、低消費電力の観点から、より多くの利益を設計者へ提供する必要があるため、このようなモジュールは望ましいものです。 そのため、これらのBLEモジュールは、ウェアラブルやIoT製品用の完全なハードウェアサブシステムを提供する設計の新たな先端分野といえます。
これらのモジュールには、BLEを中心とするアプリケーションを開発するために必要なすべてのハードウェアおよびファームウェアが組み込まれています。 これらは、Bluetooth Smart SoCと、周辺機器やセンサを接続するためのアンテナやインターフェースとを組み合わせたものです。 これらのモジュールは認定済みで、設計者は複雑なアンテナの設計および認証のプロセスを省くことができます。
しかし、それでもBluetoothアンテナ経由のRF通信の処理は面倒な場合があります。 アンテナの設計はBluetoothにおいて極めて重要で、特定の位置に特定の出力プロファイルを使って実装する必要があります。 そうでないと、アンテナがボードの不適切な位置に配置されている場合、パフォーマンス(放射される出力電力と受信感度)が大幅に低下し、ひいてはバッテリ駆動時間が短くなります。
今日のBLEモジュールの多くには、セラミックチップアンテナ、ローパスフィルタ、一致するバランを組み合わせたフロントエンドが組み込まれています。 バランは、信号をバランス化と非バランス化モードとの間で変換し、アンテナのマッチングを実行します。 これによって、スプリアス発射や高調波が大幅に低下し、結果的にウェアラブルの設計において全体的な設計のフットプリントを減らすことができます。
たとえば、Skyworks Solutions製のSKY66111-11フロントエンドモジュール(FEM)はTX/RXおよびアンテナスイッチ、フィルタリング、アンプで構成されます(図6)。 これはほとんどの場合、Nordic Semiconductor、Dialog Semiconductor、Texas Instruments、その他各社製のBluetooth無線と組になっています。 フロントエンドモジュールは、ホストのBluetooth ICを使用して貧弱な接続を排除し、消費電力を+10dBmで約10mAまで低下させます。

図6:Skyworks Solutions SKY66111-11は、範囲を拡大するためSoCに追加されるRFフロントエンドモジュール(FEM)の適切な例です。 単純に見えますが、高度に統合されており、RFドメインにおいてパフォーマンスに関係する重要な機能を果たします。
Cypress EZ-BLEモジュールの大きさが10 x 10mmなのに対して、Skyworks FEMは20ピンでも、わずか3.3 x 3.0mmです。 1.8V~5Vで動作し、スリープ電流は1µA未満です。 使用時には、入力に過大なRFを印加してスイッチがオーバードライブしないよう注意する必要があります。 その代わりに、入力電力は-20dBmから始めて、次第に大きくします。
次に、Silicon Labs製のBlue Gecko BGM113 Bluetooth Low Energyモジュールを紹介します。この製品は、2.4GHzのBlue Geckoのワイヤレスチップセットと、高効率のチップアンテナとを組み合わせたもので、ここでも開発の期間と労力を最小化することができます。 このモジュールにはBluetooth 4.1準拠のソフトウェアスタックが付属していますが、Bluetooth 4.2へソフトウェアをアップグレード可能です。 それに加えて、Silicon LabsはEnergy ProfilerやPacket Traceなどの開発ツールを提供しています。

図7:Silicon Labs製のBlue Gecko BGM113モジュールは組み立てとテストが完了したプラットフォームで、オンボードスタック、アンテナ、証明書が付属しています
BGM113には独自のDC/DCコンバータが付属しており、自律的なハードウェア暗号化アクセラレータと真の乱数発生器(TRNG)によりセキュリティが強化されています。
結論
迅速かつ確実な市場投入を考えた場合、Bluetooth Smartモジュールと付属のフロントエンドモジュールが成功のための優れた方法であることは明白です。 設計者はそのことを熟知しており、サプライヤやベンダも理解しているため、革新がさらに迅速に起きるよう、必要なサポートシステムとソフトウェアのエコシステムを提供しています。 レイアウト、一致するコンポーネント、ソフトウェア開発キットの詳細に総合的な注目を払うことにより、設計者はクリエイティブなウェアラブル、コネクテッドホーム、その他各種のIoTアプリケーションにおいて主導的位置に立つことができます。
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