自動効率拡張により、低出力電圧でも降圧コンバータが高効率を維持可能
Electronic Products の提供
2015-09-23
伝統的に、降圧DC/DCコンバータでは、出力電圧がより低い値に設定されるにつれ、コンバータの電力変換効率が低下します。 たとえば、全負荷で90%を超える効率を提供できる、12V入力を3.3V出力に変換する降圧DC/DCコンバータについて考えてみましょう。 この同じコンバータが1.8Vの出力電圧に設定され、同様の入力特性を持つ場合、全負荷で84%未満の効率を提供することがあります。 その性能は同一の入力パラメータに対して、より低い値にさらに設定されるにつれ、継続して悪化します。 その結果、損失の増大によりパッケージ内の消費電力が増加し、消費電力による発熱により温度が上昇します。 これは、動作温度の上昇が製品性能を妨害する可能性がある、ノートブック、タブレットおよびソリッドステートドライブ(SSD)などの特に電池駆動の製品では望ましくありません。
この問題に対処すべく、Texas Instrumentsの技術者は、自動効率拡張(AEE:Automatic Efficiency Enhancement)と呼ばれる新しい電力変換方法を開発しました。 この独自の技術により、出力電圧が低い値に設定された時でも降圧DC/DCコンバータが高効率を維持できます。 言い換えれば、電力変換効率は、設定された出力電圧にかかわらず高いままとなります。
効率の低下
AEEについて考察する前に、この低下を引き起こす原因について考えてみましょう。 TIのアプリケーションエンジニアであるChris Glaser氏は、「低出力電圧降圧コンバータ向けにAEEは効率を向上」1という記事で、この効率の低下について論じています。 Glaser氏によると、より低い設定出力電圧での降圧コンバータの効率低下は、対応する電力損失の低減なしで、出力電力の低減と直接関連があります。
一般的に、スイッチモード電源において、損失はスイッチングおよび伝導損失から構成されます。 スイッチング損失は入力電圧、出力電流、およびスイッチング周波数に依存し、その一方で伝導損失は出力電流およびMOSFETオン抵抗によって決まることはよく知られています。 その結果、出力電圧は、コンバータの全体的な損失の原因ではありません。しかし、出力電圧と出力電流の積である出力電力は、同じ入力電圧で出力電圧が低下すると、確実に低下します。 そこで、同じ電力損失で、コンバータがより低い出力電圧に設定されるにつれ、効率は、効率 = (出力電力)/(出力電力 + 損失)であるため、明らかに低下します。
TIの記事によれば、スイッチング損失は、効率向上のために、コンバータがより低い電圧に設定されるにつれ、スイッチング周波数を低減することで削減可能です。 しかし、それは、出力フィルタおよびループ補償回路の再設計を意味します。 「それにはより多くの設計労力と時間がかかり、おそらく、システムで異なる出力電圧回路向けに異なるコンポーネントが必要になります。それにより、部品表(BOM)が増大する可能性があるでしょう」とGlaser氏は述べています。
スイッチング周波数の動的適応
AEEは、スイッチング周波数のジレンマに対処します。 TIによると、AEEは、出力フィルタおよびループ補償回路を妨害せずに、変換効率を向上するようにスイッチング周波数を自動的に調整します。 入力および出力電圧に基づいて、スイッチング周波数は、制御ループの安定性と出力フィルタを維持しながら、効率を高めるように自動的に調整される、とGlaser氏は述べています。
手短に言えば、全体のデューティサイクル(VOUT/VIN)範囲にわたって高効率を維持するために、AEEは、低い値でインダクタリップル電流を維持しながら、スイッチング周波数が調整されることを確保します。 リファレンス1は、インダクタリップル電流(ΔIL)、スイッチング周波数(FSW)、およびデューティサイクル(D = VOUT/VIN))の関係を次のように表しています。
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その結果、式1に基づいて、特定の入力電圧で異なる出力電圧向けにインダクタリップル電流の変動を最小限に抑えることをAEEが確保することが分かります。 これは、出力電圧がより低く設定されるにつれてスイッチング周波数を低減することで実現します。
TIの2相降圧コンバータであるTPS62180/TPS62182は、4V~15Vの入力電圧範囲を備え、最大6Aの出力電流で0.9V~6Vの可変出力範囲にわたって高効率を実現するためにAEEを組み込んでいます。図1は、AEEおよび可変出力電圧を備えたTPS62180の機能ブロック図を示します。 TPS62180とは異なり、TPS62182は、AEEと3.3Vの固定出力電圧を備えた固定出力降圧コンバータのオプションです。

図1:TPS62180は、より低い出力電圧が設定されるにつれ降圧DC/DCコンバータの高効率を維持するために、自動効率拡張の方法を組み込んでいます。 (Texas Instrumentsの提供)
AEEがどのように機能するかを示すために、TIは、TPS62180を使用したいくつかの測定結果を提供しています。 たとえば、図2は、特定の入力電圧で出力電圧が3.3Vから最小0.9Vに設定されるに従って、TPS62180のスイッチング周波数調整を示しています。 同様に、スイッチング周波数は入力電圧の変化とともに変化します。

図2:高効率を維持するために、2相降圧DC/DCコンバータのTPS62180は、出力および入力電圧に基づいてスイッチング周波数を適応させるために自動効率拡張を採用しています。 (Texas Instrumentsの提供)
同様に、TPS62180の効率性能に及ぼすAEEの影響を示すために、このサプライヤは異なる入力電圧で異なる出力電圧での効率を測定しました。 2つの異なる出力電圧(3.3Vおよび1.8V)に対する測定された効率対入力電圧が、図3および4に示されます。 これらの数値をよく見ると、AEEで、1.8Vのより低い出力での効率は、12V入力で全負荷で約88%であることが分かります。 同じ入力と3.3V出力で、効率は約92%であり、これは、2つの出力間の効率差がAEEで大きく縮まっていることを示しています。 AEEなしであれば、この差ははるかに拡大していたであろう、とTIは述べています。

図3:AEEを組み込む2相降圧DC/DCコンバータのTPS62180での入力電圧に対する効率。 このコンバータでの出力電圧は3.3V。(Texas Instrumentsの提供)

図4:AEEを組み込む2相降圧DC/DCコンバータのTPS62180での入力電圧に対する効率。 このコンバータでの出力電圧は1.8V。
要約すると、AEEは、固定周波数トポロジと比べて、当該のコンバータがより低い出力電圧に設定されるにつれ、より高い電力変換効率をTPS62180などの降圧コンバータが実現するのを支援しています。
この記事で扱っている製品の詳細については、このページにあるリンクを使用して、DigiKeyウェブサイトの製品ページにアクセスしてください。
リファレンス
- 「低出力電圧降圧コンバータ向けにAEEは効率を向上」、Chris Glaser、アプリケーションエンジニア、Texas Instruments Inc.
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