電気通信用電源の高効率化
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2023-11-16
電気通信分野は、現代社会と瞬時のグローバルコミュニケーションの重要な要素となっています。電話、テキストメッセージ、ウェブコマンドなどの区別を問わず、電気通信機器は信頼性の高い接続を保証します。その舞台裏で動作している電源は、ほとんど認識されることのない必須コンポーネントです。
この記事では、Analog DevicesのMAX15258に焦点を当てます。これは、最大2個のMOSFETドライバと4個の外部MOSFETを、単相または2相ブースト/反転バックブースト構成で搭載できるように設計されています。また、3相または4相の動作用に2つのデバイスを組み合わせ、より高い出力電力と効率レベルを実現することも可能です。
増大する電力需要のニーズに対応
電気通信業界内の電力需要は、技術の発展、ネットワークトラフィックの増大、電気通信インフラの拡張などが要因となり、時代とともに増大しています。第3世代(3G)から第4世代(4G)、第5世代(5G)ネットワークへの移行は、高度な高出力装置をもたらしました。
5G技術の展開は、基地局やセルタワーの電力要件に大きな影響を与えています。基地局、特に都市部の基地局では、マッシブMIMO(Multiple Input, Multiple Output)構成やビームフォーミングに必要なアンテナや無線ユニットの数の増加に対応するために、より高い電力レベルが必要となります。
また、冗長性も重要な要素です。電源は冗長性を考慮して設計する必要があり、多くの場合は、停電の際にも動作が中断されないように、バッテリやジェネレータなどのバックアップ電源を備えています。
前世代のワイヤレスネットワークと比較した場合、5Gモバイルテクノロジーの導入により、電源デバイスの要件にいくつかの変更が生じます。5Gで期待される信頼性の高い高速・低遅延通信を実現するには、いくつかの基準に対応する必要があります。
パワーアンプ要件
- 信号伝搬特有の課題となる、サブ6GHzやmmWave(ミリ波)の周波数を含む幅広い周波数帯域をサポートする。
- より広い信号帯域幅とより高い電力レベルに対応し、リニアな増幅を提供することで、高データレート信号の歪みを防ぐ。
- 特にバッテリ駆動のデバイスやリモートスモールセルでは、消費電力と発熱を最小限に抑えて効率的に動作する。
- スモールセルサイトやユーザー装置などの小さな筐体に収まる、軽量で小型のフォームファクタを含む。
- 窒化ガリウム(GaN)やシリコンカーバイド(SiC)製の半導体デバイスなどの先進的な材料や技術を組み込み、電力密度の向上、性能の強化、動作周波数の向上を実現する。
パワー変換要件
歴史的経緯と実用的および技術的な理由により、電気通信システムには通常、-48VDC電源が使用されます。送電網の故障やその他の緊急事態が発生した場合、電気通信ネットワークには信頼できるバックアップ電源が必要です。予備電源としてよく使用される鉛蓄電池は、-48VDCでも動作します。一次電源とバックアップ電源の両方に同じ電圧を使用することで、バックアップシステムの設計と保守が簡単になります。また、-48VDCなどの低電圧は、電気通信機器を扱う人員にとってより安全であり、感電や怪我のリスクが低減されます。
電気通信機器の電源は、信頼性と効率を確保するために、特定の動作要件を満たしている必要があります。重要な仕様の一部を以下に示します。
- 入力電圧範囲:電源は、広い入力電圧範囲に耐えられるように設計する必要がある。
- 電圧安定化:電源は、電気通信機器の要件に従って、一定の安定化出力電圧を提供する必要がある。
- 高効率:電源は、電力損失とエネルギー消費を軽減できるよう高効率でなければならない。90%以上の効率が一般的です。
- 冗長性:中断のない動作を確保するため、電源には、追加電源を使用するN+1などの冗長性機能を含むことが多い。一方が故障した場合は、もう一方が負荷を担うことができます。
- ホットスワップ可能:ミッションクリティカルな設置では、電源はホットスワップ可能とし、交換やメンテナンス時のダウンタイムを最小限に抑える必要がある。
- 高信頼性:電源は、過電流、過電圧、短絡などの不利な動作条件による損傷を回避するための保護機構を備えている必要がある。
アクティブクランプフォワードコンバータ
アクティブクランプフォワードコンバータ(ACFC)は、電源システムでは一般的なDC/DCコンバータ構成で、主に-48VDCを正電圧レベルに変換するために使用されます。ACFCは、フォワードコンバータとアクティブクランプ回路の特性を組み込んで効率を高めた電圧変換回路です。この技術は、電気通信機器やデータセンター機器の電源システムで一般的となっています。
ACFCの中心的要素はトランスです(図1)。トランスの主巻線は入力電圧を受け取り、二次巻線に電圧が誘導されるようになります。トランスの出力電圧は、その巻数比によって決まります。
補助的な半導体スイッチとコンデンサを組み込んだアクティブクランプ回路は、トランスのリークインダクタンスに含まれるエネルギーを調整・制御します。一次スイッチがオフのとき、リークインダクタンスに蓄積されたエネルギーはクランプコンデンサに振り向けられて、電圧スパイクが防止されます。この方法により、一次スイッチ上のストレインが軽減され、運用効果が高まります。トランスの2次巻線からの電圧はダイオードによって整流され、出力電圧は出力フィルタコンデンサによって平滑化されます。最後に、ACFCはソフトスイッチングで動作するため、スイッチング遷移がスムーズでノイズが少くなります。つまり、電磁妨害(EMI)が減少し、スイッチング損失が低減されます。
図1:ACFCトポロジ。(出典:Analog Devices)
ACFC回路は、電圧スパイクや部品へのストレスを低減するため、特に高い入出力電圧比での効率向上につながります。しかも、幅広い入力電圧に対応できるため、入力電圧が変化する電気通信やデータセンターのアプリケーションに適しています。
アクティブクランプ回路の欠点は以下のとおりです。
- 最大値に制限されていない場合、デューティサイクルが増加すると、トランスが飽和したり、メインスイッチにさらなる電圧ストレスがかかったりする可能性があるため、クランプコンデンサの正確なサイジングが必要となる。
- ACFCはシングルステージのDC/DCコンバータである。電力レベルが上がるにつれ、電気通信などの電力集約型アプリケーション向けの多相設計の利点が増大します。
- アクティブクランプフォワード設計では、より高い出力電力にスケールアップして同様の性能を維持することはできない。
ACFCの制限を乗り越える
Analog DevicesのMAX15258は、電気通信および産業用アプリケーション向けに設計され、I2Cデジタルインターフェースを備えた高電圧マルチフェーズブーストコントローラです。このデバイスは、ブースト構成で8V~76V、反転バック/ブースト構成で-8V~-76Vという広い入力電圧範囲を特長としています。出力電圧範囲は3.3Vから60Vで、電気通信デバイスなどのさまざまなアプリケーションの要件を満たしています。
この汎用ICの代表的なアプリケーションは、図2に示す5Gマクロセルまたはフェムトセルの電源です。ホットスワップ機能は、ADIのADM1073などの負電圧ホットスワップコントローラ(-48VDC で電源供給)によって保証されます。同じ電圧がMAX15258バック/ブーストコンバータに供給され、最大800Wの出力電力を供給できます。
図2:5Gアプリケーション用電源ステージのブロック図。(出典:Analog Devices)
MAX15258は、最大2個のMOSFETドライバと4個の外部MOSFETを、ブースト/反転バックブーストの単相または2相構成でサポートするように設計されています。また、2つのデバイスを組み合わせることで、3相または4相動作にも対応します。反転バックブーストコンバータとして構成される場合でも、出力電圧を差動検出するための高電圧FBレベルシフタを内蔵しています。専用の基準入力ピンまたはI2Cデジタルインターフェースを介して、出力電圧を動的に設定できます。
また、外付け抵抗を使用して内部発振器を調整することも、レギュレータを外部クロックと同期させてスイッチング周波数を一定に保つこともできます。スイッチング周波数は、120kHzから1MHzまでに対応します。コントローラは、過電流、出力過電圧、入力不足電圧、サーマルシャットダウンに対しても保護されています。
OVPピンの抵抗器は、コントローラへのフェーズ数を指定します。この識別を使用し、コントローラが1次フェーズの多相クロック信号にどのように応答するかを決定します。4相コンバータでは、MAX15258コントローラまたはターゲットの2つの位相が180°インターリーブされ、コントローラとターゲットの間の位相シフトは90°です(図3)。
図3:4相構成 - コントローラとターゲットの波形。(出典:Analog Devices)
多相動作の場合、MAX15258はアクティブな相電流バランシングのためにローサイドMOSFET電流を監視します。フィードバックとして、電流の不均衡がサイクルごとの電流センシング回路に適用され、負荷電流を調整するのに役立ちます。それにより、2つの位相間の公平な分配が保証されます。このICを使用する場合は、フォワードコンバータ設計とは異なり、設計計算段階で15%から20%の位相不均衡の可能性を考慮する必要はありません。
3相または4相動作の場合、チップあたりの平均電流は、専用の差動接続を介してコントローラとターゲットの間で伝送されます。電流モードコントローラとターゲットデバイスは、それぞれの電流を調整し、全相が負荷電流を公平に共有できるようにします。
図4に示す4相インターリーブ反転バックブースト電源は、大電力が必要なアプリケーションに適しています。CSIO+信号とCSIO-信号が2つのコントローラを接続し、SYNCピンは、位相が調整された位相インターリーブ方式のクロック同期を保証するために接続されています。
図4:4相反転バックブースト-48VIN~+48VOUT 800W電源。(出典:Analog Devices)
MAX15258は低周波ブーストコンバータです。これにより、コンバータの電力損失の主な原因であるスイッチング損失が低減されます。各コンバータは低周波での低損失領域で動作するため、高い等価合計周波数で高出力が得られます。このため、-48VDCを変換するのに最適なデバイスとなっています。
安定したデューティサイクルで動作し、極めて高い効率で高出力を得ることができます。図5は、VINとVOUTのさまざまな組み合わせに対する、結合インダクタベースのMAX15258 800Wリファレンス設計の効率曲線を示しています。伝導損失が減少した結果、プロットには98%を超える効率値が明確に示されています。
図5:MAX15258 CL 800Wリファレンス設計の効率対出力負荷電流。(出典:Analog Devices)
まとめ
電源は、電気通信業界で重要な役割を果たしています。アクティブクランプフォワードコンバータ(ACFC)は高効率を達成し、電力損失を最小限に抑えることができるため、電気通信用電源の設計で好評を得ています。ただし、固有の制限により、特定の状況下での有効性が妨げられる場合があります。アクティブクランプフォワードコンバータのこの制限を克服するため、新世代の電源技術が登場し、効率の向上、電力密度の増加、簡易制御機構が実現しました。電気通信業界では、これらの斬新なソリューションによって、より高度で最適化された電源への道が開かれています。
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