JPY | USD

LED照明を屋内栽培に最適化して設計する方法

著者 Barry Manz(バリー・マンズ)氏

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

屋内農場の分野では、LED照明が持つ多くの利点がますます活用されていますが、その理由は誰もが納得できるでしょう。LEDは非常に小型、軽量で、その動作寿命は他の光源に比べて10倍以上、消費電流は最小限で、効率性が高く、さまざまなスペクトル波長を生成し、デジタル制御システムを応用できます。一方で、LED照明システムの働きを最適化する設計は至難の業で、従来使われてきた比較的シンプルな光源、たとえば高圧ナトリウム(HPS)ランプなどに比べて、注意すべき評価基準がより多くあります。

この記事では、屋内農場でLEDが果たす役割、LEDの課題について説明し、LEDを利用する際の推奨事項について述べます。また、屋内農場用途向けのLEDや関連部品の例として、OSRAMLuminous DevicesWürth ElektronikamsRayVioMicrochip Technologyなどの製品を紹介します。最後に、UVスペクトルを利用する最近の開発状況と、LED照明システムを最適化するその他の要件について検討します。

広がるLED農場エコシステム

HPSなどからLEDへと屋内栽培用光源の移行を可能にしたのは、大規模な民生用照明市場です。その規模の大きさが、この最先端技術を短期間で普及させる後押しとなりました。これにより近年、LEDの種類、性能、信頼性が大幅に向上し、コスト効率も高まっています。たとえば、OSRAMのモデルGH CS8PM1.24-4T2U-1は、646~666nm(ナノメートル)(赤色)のスペクトルを中心に、425mWの放射パワーと59%の効率、80°の照射角を備えます。

Luminous DeviceのモデルSST-10-Bは、450nm(青色)の波長を中心に、510mWの最小照射パワー、57%の効率性を備えます。照射角度は、90°または130°のいずれかに指定できます。Würth Elektronikの栽培用LEDの1つである150353GS74500モデルは、125°の照射角に525nm(緑色)の波長を備えます。これらを含むメーカー各社は、屋内農場向けに他の波長のLEDも提供しており、成長に必要なスペクトルの全域がカバーされています(図1)。

光合成に使われる色素の吸収スペクトルのグラフ図1:光合成に使われる色素の吸収スペクトルは、約400~700nmの可視スペクトル全域に及びます。(画像提供:Würth Elektronik)

屋内での植物栽培にはさまざまな科学分野が関係しており、その範囲は、植物学から草木に纏わる土壌科学、作物管理、さらに今では電子モニタリングシステムや制御システムにまで及びます。屋内栽培の環境を新たな光源で照らす試みには、新しいことが矢継ぎ早に発見される中で、困難と収穫の両面があります。LED照明を使用して屋内で最適な条件を実現できれば、真に驚くべき成果が得られます。

広く知られる例には、宮城県多賀城市のMIRAI株式会社が運営する垂直型レタス農場があります(図2)。この施設は面積が25,000ft.2(約2,240平方メートル)に及び、以前はソニーの工場だった建物にクリーンルームが設けられ、2015年以降、1日あたり数千個に及ぶレタスなどの野菜が収穫されています。ここでは17,500個のLEDを使用して野菜を無農薬で栽培し、水の使用量は1/50に、食品廃棄物は40%削減しており、無菌の状態が保たれています。

MIRAIの垂直型農場の画像図2:MIRAIの垂直型農場は世界第2位の規模で、世界で初めて本格稼働を達成した農場の1つです。(画像提供:National Geographic)

汎用性の高さが仇に

皮肉にも、LEDの汎用性は屋内栽培特有の主な利点の1つでありながら、LEDを活用した屋内農場の実現をより複雑にする要素でもあります。たとえばLEDは調光可能なので、ドライバにはその機能が必要です。また植物固有の波長を可能にするには、LEDの複雑な仕様についての知識が必要になります。

LEDはソリッドステートデバイスでもあるので、「電球」には必要ない注意点もあります。たとえば、確実で高速な過負荷保護や制御回路へのダイオードの正確なマッチングなどです。幸いにも、栽培、特に垂直型農場の急成長は、照明部品メーカーによる農業分野用途に向けた総合的なエコシステム開発を後押ししており、リファレンス設計、評価ボード、さらには設計者の仕事に役立つ基本から上級に至る技術文献などを含んだシステム開発が進んでいます。

生産者の間には、LEDはHPS器具よりも発熱が少ないという誤解があるようですが、これはLED器具が低いワット数でドライブされる場合に限られます。このため、600ワットのLED器具と600ワットのHPS光源が発生する熱の量はほぼ同じです。2つの違いは、生成される光エネルギーの量と器具から熱がどのように放射されるかにあります。

HPS光源からの熱は800°Fに達し作物に向かって放射されますが、LEDの熱はダイオードとその電子回路がプリント基板に取り付けられている場所に存在し、熱が植物に向かって放射されるわけではありません。これが、LEDが垂直型農場でHPSよりもはるかに優れている主な理由でもあります。LEDは植物の非常に近くに配置でき、しかも植物を傷めることがありません。

上記の内容から論理的に選ぶとすれば、低電力LEDがその選択の候補に挙がるでしょう。LEDを対象物に近づける積層アプリケーションの場合、これが通常の選択肢といえます。ただし、大半の低出力LEDは照射角度が固定されており、他方、高電力LEDは照射角度を80~150度まで変えることができます。さらに、高電力LEDのパフォーマンスに合わせようとすると、低電力LEDは多くの数が必要になります。高電力LEDは、その高出力により遠くからでも広い範囲をカバーできるため、多くの場合キャノピ用途に最も適します。

それでも、LED器具で生成される熱が存在することに変わりないので、熱管理システムによる基板からの速やかな熱除去が必要です。除去しないとLEDの寿命が大幅に短くなり、完全に故障することさえあります。主な冷却方法には、ヒートシンクを備えたパッシブな装置、およびファンまたは水を使用するアクティブな冷却装置があります。後者のタイプはエネルギーを消費し、機械的なデバイスなので故障すればLEDが過熱します。

動作寿命の最適化

メーカー仕様では、LEDの動作寿命は通常であれば20,000時間以上で、最大50,000時間に達する場合もよくあります。LEDの寿命は本来の輝度から70%低下した時点と定義されています。LED照明システムの設計者の目標は、LEDが定格寿命を全うし、同時に入力電圧と電流の安定化によって寿命期間にわたり最大の出力を維持することです。これは、電源、特にLEDドライバの役割であり、ドライバは温度センサからデータを継続的に取得し、最適な性能を維持するために調整を行います。これらの機能を補うため、光源の輝度をリアルタイムに測定し、その情報を再びドライバに供給することが望まれます。スペクトルセンサは、これを行うために最もコスト効率が良く簡潔な手段です。

たとえば、amsが提供しているスペクトルセンサのファミリは、LEDの実際のスペクトルプロファイルをリアルタイムに測定し、LEDドライバを直接制御して出力を調整することで、色度と強度を仕様目標値と一致させます。モデルAS7263-BLGTには6つの独立した光学フィルタがあり、それらのスペクトル応答は600~870nmの範囲に調整されます(図3)。またAS7262-BLGTは450~650nmの範囲をカバーします。いずれのデバイスも、個々のLEDを器具内部または植物のレベルで正確にモニタリングできます。また、UARTまたはI²Cを介したテキストベースのメッセージによる通信も可能です。これらのセンサと他の機能を組み合わせることにより、LEDの動作寿命を最適化しながら傾向分析などの解析も可能になります。

amsのAS7263-BLGT光センサの図図3:AS7263-BLGT光センサは450~650nmの波長に対して感受性があります。これはスペクトルセンサファミリに属するデバイスで、LEDスペクトルプロファイルのリアルタイム測定とLEDドライバの直接制御により出力を調整し、色度と強度を仕様目標値に一致させます。(画像提供:ams)

回路保護

大半のアプリケーションでは、LEDストリングに定電流電源を供給する必要があり、これを長いストリングに設計するのは難しいことも考えられます。回路保護は制御システム内の複数の部品に依存しますが、これはLEDから受動部品およびアクティブコンポーネントまでの制御回路全体を過渡から保護する必要があるためです。主な過電圧保護デバイスはAC入力に配置された酸化金属バリスタ(MOV)で、高度な過渡電圧抑制を可能にしながら、リング波効果により生じる応力を低減します。MOVは潜在的な破壊力を吸収し、それを熱として放散することで部品の保護に貢献します。通常、LEDストリングのドライバ回路には、LEDを過電流や過熱から保護する正の温度係数(PTC)抵抗器、および過電圧保護用の並列過渡電圧抑制(TVS)ダイオードも含まれています。ライン整流回路には、高電圧DCヒューズを二次保護用に出力に含める必要があります。熱暴走を防ぐために、LEDと直列にリセッタブルヒューズを追加することも推奨します。

もう1つの考慮事項は、屋内農業には、通常、植物の成長を促進するために比較的高い周囲温度と高い湿度が必要なので、照明システムがこうした環境で動作できる必要があるという点です。さらに、動作寿命を通じて1つの場所に留まる他の用途での照明器具とは異なり、垂直型農場の照明器具は、植物の成長を最適化するため、位置を上下できたり、移動できたりするよう設計されます。これは照明器具の配線の要件に影響します(詳しくはUL 8000を参照)。

ドライバの考慮事項

ドライバには主に2種類があり、それぞれ低電圧DC入力電力を使用するドライバ、および高電圧AC電源を使用するドライバです。たとえば、Microchip TechnologyのCL88030-E/MFは、低電流LEDの長いストリングを120、230、または277VACから直接駆動するように設計されています。一般的なアプリケーションには、ドライバIC、4つのパワーFET、4つの抵抗器、2つのコンデンサ、およびブリッジ整流器1つが含まれています。過温度保護を備え、ラインレギュレーションにより温度の上昇につれて発光出力を徐々に低下させます。過温度保護を追加で実装する場合は、NTCサーミスタを使用できます(図4)。

Microchip TechnologyのモデルCL88030-E/MFシーケンシャルリニアドライバの図図4:Microchip TechnologyのモデルCL88030-E/MFシーケンシャルリニアドライバのアプリケーション回路。デバイスがMOVを使用した保護回路とともに示されています。(画像提供:Microchip Technology)

直列に並べられるLEDの数は、ドライバ、入力電圧、電気工事規定や安全基準に応じて異なります。LEDを1つの直列のチェーンに並べると、1つのドライバだけを使えばよく、LEDごとに電流フローが等しいという利点があります。一方で、出力電圧が高くなるので回路部品が増え、場合により新たな安全規格に対応する必要があります。

直並列では入力電圧が低く、感電が生じる確率が減ります。1つのLED分岐に不具合が起きても、他の分岐は稼動し続け、1つのLEDが故障しても全体の並びが機能不全になることはありません。とはいえ、ドライバは定電流源なので動作デバイスにより多くの電流を流すことが避けられず、過熱につながることがあります。また直並列では、LEDの順方向電圧がほぼ同じでない限り、LED間で駆動電流を等しく共有することはできません。

このような問題への1つの回答は、LEDストリングごとにドライバを使用することです。この場合、信頼性は最も高まりますが、コストが増えサイズも大きくなります。この手法では、複数のLEDストリングが故障した場合でも、ある程度の光は出力できます。

UV照明の問題

学界や産業界では、280~385nmのスペクトル範囲の紫外線「B」(UV-B)不可視部分にLEDを使用して植物を育てる可能性について、議論が継続的に重ねられています。UV光は、一般的に屋内農場に利用する検討対象にはならないと考えられてきました。これは紫外光が光合成有効波長の外側にあるためです。そのため、15年ほど前までこれに関する本格的な研究は行われていませんでした。

このスペクトル領域があまり注目されないもう1つの要因は安全性です。UV-B光子は、人間や植物の細胞を損傷することが知られています。実際に照明メーカーは、自社のデバイス製品から放出されるUV光を大幅に減らすため幅広い対策を講じています。このように、屋内農場でUVを利用するには、施設内の全作業員に対して徹底した保護対策が必要になります。

では垂直型農場や農業一般から何が注目を集めているかといえば、それは植物のUV-B光に対する反応です。この光によって、植物はその波長から自身を保護しようとする防御メカニズムを活性化させます。研究によれば、植物にはUV-Bに晒されると15種類もの防御タンパク質を生成できるものがあることも判明しました。これらのタンパク質には、植物の匂い、色、味、さらに病気への抵抗力に影響するものがあり、そのようなタンパク質は他の波長では生成されません。

この議論の主題に明るい光が差したのは、2000年代初めにUV-B固有の光受容体(UVR8)が発見されたとき、そして2011年にその特性評価が行われたときです。UVR8が遺伝子発現を制御するメカニズムは明確には解明されておらず、UVR8の経路が機能する仕組みや他の光受容体の制御下で他の経路と相互作用する仕組みも明らかになっていません。

それでもなお、UV-B光による潜在的な利点が文献に発表されており、その利点は伸長成長の低減、葉の厚さや蝋分の増加、サニーレタスなどの葉の濃い色付き、病原菌や昆虫への高い耐性、保存寿命の倍増、有益な抗酸化物質やフラボノイド生成の増加、果物や野菜の栄養価の向上など、多岐にわたります。

怒涛のように主張されるこれらの利点が真実かどうか、機器類や安全維持に欠かせない訓練などに多大な時間と費用、労力を投入してまで屋内栽培にUV-B照明を利用する価値があるかどうかを判断するには、今後の幅広い研究を待つことになります。その答えが出るまでは、他の用途向けに開発されたUV LED、たとえば280nmのスペクトル波長を備えたRayVioのモデルRVXR-280-SB-073105 UV LEDスターボードなどを利用できるでしょう。

まとめ

LEDの柔軟性には、HPSのような比較的シンプルな光源を使用する施設以上に課題もあります。とはいえ、より多くの植物をより少ない空間で栽培でき、化学物質を必要とせず、使用する土の量が大幅に少なく(または皆無)、さらに野菜の栄養価を高めて植物の開花を改善する特長は非常に魅力的です。このため、照明装置や半導体部品の業界はLED照明をより簡潔に応用できるように努めており、ソリューションのサポートを拡充し、同時に技術の向上を図っています。

免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、Digi-Key Electronicsの意見、信念および視点またはDigi-Key Electronicsの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。

著者について

Barry Manz(バリー・マンズ)氏

Manz Communicationsの創設者であるBarry Manz氏は、27年以上にわたって電子機器分野でライター活動を続けています。氏の提供する記事や他のさまざまな解説は、高度に技術的なメッセージを伝え、多くの企業に先行きの見通しを示唆しています。執筆範囲は、製品関連の技術的見解、アプリケーションタイプの記事、データシート、パンフレット、カタログ、その他の資料と多岐にわたっています。

出版者について

Digi-Keyの北米担当編集者