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産業用Ethernetを標準Ethernetに代わる堅牢で決定論的な手法として使用

著者 Bill Giovino

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

Ethernetは、ローカルエリアネットワーク(LAN)およびワイドエリアネットワーク(WAN)で最も広く使用されている有線ネットワーク規格です。標準のEthernet通信は瞬時に行われているように見えることが多いですが、実際には、ネットワーク上で送信されるデータパケットが所定の一定時間内に宛先ポートに到着するという保証はありません。

このような非決定論性は、メッセージが遅延すると生産ラインが停止したり作業員が怪我をしたりする原因にもなる産業用アプリケーションでは問題になる場合もあります。「産業用」に改変されたバージョンのEthernetを使用すれば、Ethernetに決定論性をもたらすことができます。

この記事では、産業用Ethernetの主要な要素について説明し、Delta Electronicsから提供される2種類のEthernetスイッチを紹介します。このスイッチにより、決定論的な産業用Ethernetネットワークの基盤を形成できます。

Ethernetに求められる決定論性

Ethernetは物理的なネットワーク規格で、ネットワーク上のデータパケット送信に使用する物理的なケーブルおよびコネクタを定義します。標準のEthernetでは、TCP/IPプロトコルスイートにより、ネットワークに接続されたデバイス間でデータをやり取りする方法が定義されます。ただし、ローカルネットワークでも、TCP/IPは非決定論的であり、数百ミリ秒もの遅延を引き起こす可能性があります。これは、産業用オートメーションシステムを接続する産業用ローカルネットワークでは受け入れられることではありません。このような産業用システムは、多くの場合、指定された時間枠内に到着するパケットまたはメッセージに依存しており、10ミリ秒(ms)の応答時間、また極端な場合には1msより高速な応答時間が要求されます。

広く使われているもう1つのEthernetフレーム形式(通信プロトコルとも呼ばれる)として、産業用ネットワークで使用されているProfinetがあります。Profinetは、完全機能版のTCP/IPよりシンプルな代替手法として開発されました。リアルタイムバージョンのProfinet RTは、時間的な制約がより厳しい中で優先度の高いプロセス制御メッセージを配信できるように、データに優先順位を付けます。時間依存の少ないステータスメッセージには、低い優先度が設定されます。それでも、Profibus RTはまだ決定論的ではありません。決定論性の実現のために、Profinet RTのアイソクロナスバージョン(Profinet IRT)も開発されました。

Profinet IRTは、ネットワーク帯域幅にスケジュール化されたタイムスロットを重ねることで決定論性を実現します。IRTデータは1つのスロットを使用し、RTおよびIPデータは他のスロットを使用します。こうすることで、IRTスロット上のデバイスは決定論的にデータを受信するようにクロックされることができます。

重要な注意点として、産業用EthernetネットワークがProfinet IRTなどの決定論性をともなう通信プロトコルに基づく場合、ネットワークに接続されている全デバイスにもProfinet IRTとの互換性が必要になります。そのため、IPカメラやハードウェアファイアウォールなどの標準的なTCP/IPデバイスはネットワーク上で機能しなくなります。これにより、オペレータがネットワーク上で未承認のデバイスを操作できなくなり、セキュリティの形成につながります。

Ethernetハブから堅牢なスイッチへの移行

Ethernetハブはリピータとして機能しますが、これは本質的に非決定論性をもたらすものです。1つのポートから受信されたデータパケットは、ハブのネットワーク上にある他のすべてのポートに転送されます。このため、たとえば25のポートがハブに接続されており、ポート22を宛先とするデータパケットがポート3から送信される場合、ハブはポート22だけでなくすべてのポートにデータパケットを送信します。ハブに接続されているすべてのポートは同じ帯域幅を共有するので、ハブに追加されるポートが多くなると、ポート同士が帯域幅で競合する状態になります。これにより衝突の可能性が高まり、パケットが遅延して決定論性を実現できなくなるのです。さらにこのような構成の場合、ハブは一度に1つのメッセージしか送信できません。別のポートからデータ送信が必要な場合、ネットワークがデータ送信可能になるまで待つ必要があります。これが、Ethernetハブが本質的に非決定論的になる理由です。

一方で、Ethernetネットワークスイッチはインテリジェントデバイスです。このスイッチは、接続されている全デバイスの一意のメディアアクセス制御(MAC)アドレスを、スイッチに内蔵されるMACアドレステーブル(通常は高速RAM)に格納します。接続されている全デバイスのMACアドレスを把握しているので、データの宛先ポートにのみデータパケットを転送できます。このため、ポート3からポート22にデータパケットを送信する場合、スイッチはポート22のみにデータパケットを送信します。

スイッチは、複数の同時データ通信を管理できます。これにより、ポート3からポート22にデータを送信すると同時に、ポート4からポート7へのデータパケット送信も可能です。このような機能により、Ethernetハブに本質的にともなう衝突が解消され、ネットワーク全体の速度、効率性、スループットも向上します。唯一の遅延はスイッチの既知のスイッチング速度(スイッチのデータシート上の仕様)なので、決定論的なEthernetネットワークを構築する際にはネットワークスイッチが必要になります。

ネットワークスイッチは、セキュリティに厚みをもたらします。ポートはそのポート宛のデータパケットのみを受信するので、1つのポートに接続されたデバイスによってネットワークが監視されることはありません。

産業用Ethernetスイッチは、市販のEthernetスイッチよりも堅牢です。市販のスイッチは家庭やオフィスでのライトデューティな利用に適する一方、産業用Ethernetスイッチは過酷な工場環境に耐え、より強い振動や衝撃、極端な温度にもその堅牢性を発揮します。さらに産業用Ethernetスイッチは、爆発性ガスがある環境で使用しても安全なように設計されており、腐食性雰囲気にも耐性があります。

DINレール上のEthernet

産業用Ethernetスイッチの代表的な製品には、Delta Electronicsの5ポート、DINレール実装DVS-005W01があります(図1)。

Delta Electronicsの産業用EthernetスイッチDVS-005W01の画像図1:Delta ElectronicsのDVS-005W01産業用Ethernetスイッチは過酷な産業環境に耐える堅牢型スイッチです。5つのEthernetポートをサポートしIP40の防塵防水機能を備えます。(画像提供:Delta Electronics)

他のEthernetスイッチと同様に、DVS-005W01はデータパケットを受信ポートのみに送信します。また最大100Mビット/秒の100Base-T伝送速度をサポートします。MACアドレステーブルは1024のエントリをサポートし、512Kビットのパケットバッファメモリを使用して、転送されるパケットを保存できます。さらに、市販のスイッチおよびハブは単一電源を使用しますが、DVS-005W01には2つの12~48Vの冗長電源入力があります。そのため1つの電源がダウンしても、もう1つのバックアップ電源を簡単にオンにできます。しかも外付けハードウェアは必要ありません。

DVS-005W01は、1ギガビット/秒(Gbps)の内部スイッチング速度をサポートします。これは、受発信データパケットを処理するときのネットワークスイッチの内部速度です。この仕様は決定論性の挙動にとって重要な意味を持ちます。なぜなら、スイッチング速度が速いほど遅延が短くなるからです。

さらに複雑な産業用ネットワーク向けに、Delta Electronicsは16ポートを備えたDVS-016W01 Ethernetスイッチも提供しています(図2)。

Delta Electronicsの産業用EthernetスイッチDVS-016W01の画像図2:Delta ElectronicsのDVS-016W01は16のEthernetポートをサポートし、DINレールまたはウォールマウントの実装が可能です。(画像提供:Delta Electronics)

DVS-016W01のMACアドレステーブルは8192エントリをサポートし、1メガビットのパケットバッファメモリを備えます。DVS-016W01は3.2Gbpsの内部スイッチング速度をサポートします。

Delta Electronicsの5ポートおよび16ポートのスイッチは両方ともアンマネージドスイッチなので、基本的にプラグアンドプレイに対応します。ネットワークデバイスがポートの1つに接続されるたびに、スイッチはそのデバイスのMACアドレスを自動的に検出し、そのアドレスを内蔵MACアドレステーブルに保存します。MACアドレスの自動検出は、スイッチの電源をいったん切って入れ直すたびにも実行されます。マネージドスイッチには、セットアップ時に構成しなければならないポート単位のトラフィック管理機能がより多くあります。

このスイッチを完全に機能させるために、IP67またはIP68等級を持つ産業用Ethernetケーブルが提供されています。これらのEthernetケーブルはヘビーデューティで、極端な高温/低温、腐食性溶剤、水没などの過酷な使用条件に耐えることができます。また、産業用Ethernetケーブルは、工場内でケーブルを曲げても、捻っても、引っ張っても、衝撃を与えても耐えられるような高い許容度も備えています。

まとめ

産業用オートメーションの用途では、標準Ethernetの機能性をはるかに超える通信遅延、決定論、およびハードウェアの堅牢性の要件が求められます。この記事で述べたように、設計者およびライン運用技術者は、決定論的な通信プロトコルと既製のスイッチおよびケーブルを使用して、産業用の高い性能を持つEthernetを実現できます。

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著者について

Bill Giovino

Bill Giovino氏は、シラキュース大学のBSEEを持つエレクトロニクスエンジニアであり、設計エンジニアからフィールドアプリケーションエンジニア、そしてテクノロジマーケティングへの飛躍に成功した数少ない人の1人です。

Billは25年以上にわたり、STMicroelectronics、Intel、Maxim Integratedなどの多くの企業のために技術的および非技術的な聴衆の前で新技術の普及を楽しんできました。STMicroelectronicsでは、マイクロコントローラ業界での初期の成功を支えました。InfineonでBillは、同社初のマイクロコントローラ設計が米国の自動車業界で勝利するように周到に準備しました。Billは、CPU Technologiesのマーケティングコンサルタントとして、多くの企業が成果の低い製品を成功事例に変えるのを手助けしてきました。

Billは、最初のフルTCP/IPスタックをマイクロコントローラに搭載するなど、モノのインターネットの早期採用者でした。Billは「教育を通じての販売」というメッセージと、オンラインで製品を宣伝するための明確でよく書かれたコミュニケーションの重要性の高まりに専心しています。彼は人気のあるLinkedIn Semiconductorのセールスアンドマーケティンググループのモデレータであり、B2Eに対する知識が豊富です。

出版者について

Digi-Keyの北米担当編集者