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調節可能な低リークLDOを使用してウェアラブル設計の電池寿命を拡張

著者 Steven Keeping

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

スイッチング電圧レギュレータは、その高効率性に定評があり、電池寿命を延ばすためのウェアラブルの電源設計で広く採用されています。しかし、このようなレギュレータは電気的にノイズが多く、設計が複雑で、多くのスペースを占有するうえ、比較的高価です。

これに対して、リニアレギュレータはリップルのない出力が可能であり、シンプル、小型で安価です。しかし、広範な負荷範囲では、スイッチングレギュレータよりも通常は効率性が下がり、電池寿命にも影響します。ただし、低ドロップアウト(LDO)リニアレギュレータ(単に「LDO」と呼ばれることが多い)を採用し、デバイスの出力を最適化して最も効率的な領域で動作するようにすることで、技術者は総合的な面でスイッチングレギュレータの効率性に近づけることができます。

一方で重要な問題が残ります。ウェアラブルは、電池寿命を維持するために大半の時間を低電力のスタンバイモードで費やすように設計されているのです。このようなモードでも、内部的にLDOによる相当の電流消費があります。この電流消費は小さいとは言え、最終製品の電池寿命を短くします。

新世代のLDOソリューションはこの問題に対処します。それらのデバイスを使用して、技術者は出力電流とドロップアウト電圧を調整し、ウェアラブルが低電力モードのときの内部消費電力を最小限に抑えることができます。

この記事では、ウェアラブルに電力供給するためのLDOの選び方について述べます。次に、ユーザーエクスペリエンスを損なうことなく効率を最大化できるように、新世代のLDOを使用する方法について説明します。

LDOかスイッチングレギュレータか?

ウェアラブル電源の設計プロセスで重要になるのは、レギュレータの選択です。技術者は、スイッチングレギュレータまたはLDOのどちらを選ぶかを迫られます。それぞれに利点と欠点があるので、特定の用途でどちらを採用するか決めるのが難しい場合があります。「リニアレギュレータの利点と欠点の理解」も参照してください。

ウェアラブルには設計上の課題が複数あり、これにより選択プロセスがさらに難しくなります。

  • 小型設計を可能にするための小型バッテリの使用
  • 長寿命の電池に対する要求
  • 消費電力要件の厳しい電子機器への安定した電源の必要性
  • ユーザーエクスペリエンスの向上を目指したスリープからの迅速なウェイクアップ

効率的なスイッチングレギュレータは、電池寿命のニーズに対応できますが、大きな欠点として、レギュレータの高周波動作によって引き起こされる比較的高レベルの電磁妨害(EMI)があります。これは、ウェアラブル内にある繊細なマイクロコントローラとトランシーバの動作異常の原因にもなります。

この問題は、電圧変換へのスイッチングレギュレータの使用、およびLDOの直列への追加によって、デバイス出力の電圧と電流のリップルを最小限に抑えることで解決できます。一方でこのようなトポロジでは、複雑さとコストが増すとともに電源のサイズも大きくなります。

別のアプローチとしては、安定した電圧供給のためにLDOを使用する方法、および内部消費電力の少ないデバイスの選択とレギュレータの入出力電圧差の最小化によって効率を最大化する方法があります。

LDO効率の計算

LDOの効率は、そのグラウンド電流(IGND)と入出力電圧(VINおよびVOUT)によって決まります。効率性の計算式は次のようになります。

効率性 = IOUT/(IOUT + IGND) x VOUT/VIN x 100%

IGNDは、LDOの内部回路の動作に必要な電流です(これは入力電流と出力電流の差です)。ここで重要なのは、LDOの静止電流(IQ)です。これは、外部負荷電流がゼロに近いときにLDOの内部回路に電力を供給するために必要な電流です。この電流には、誤差アンプの動作電流、出力分圧器、過電流および温度検出回路などが含まれます。

IGNDとIQは、効率性に影響することから、LDOのデータシートで重要な仕様になっています。たとえば、MicrochipMCP1811BT-028/OT LDOなど、ウェアラブルに電力を供給するのに適した製品では、IGND = 180マイクロアンペア(μA)(IOUT = 300ミリアンペア(mA)時)およびIQ = 250ナノアンペア(nA)などの数値になります。IQ(したがってIGNDも)は、IOUTが上昇すると増加します。この関係は、STMicroelectronicsLDL112との関連性により明確に示されます(図1)。

STMicroelectronicsのLDL112 LDOの負荷電流および静止電流のグラフ図1:このグラフは、STMicroelectronicsが提供するLDL112 LDOの負荷電流と静止電流の関係を明確に示しています。(画像提供:STMicroelectronics)

データを記録および送信するウェアラブルに典型的に見られる負荷(たとえば、数百ミリアンペア)を満たすLDOの場合、IGNDはIOUTに比べて重要ではないので、効率性の決め手となる重要な要素は入出力の間の電圧差になります。

たとえば、5VのVINと3.3VのVOUTをともなうLDOの効率は66%です。しかし、電源電圧が3.6Vに低下すると、この効率性は91.7%にまで上昇します。LDOの消費電力は、P = (VIN - VOUT) x IOUTから計算できます。

ただし、入力/出力電圧の差を最小限に抑えてLDOの効率性を高めることが通用するのはここまでです。なぜなら、その値を下回るとデバイスが出力電圧を適切に調整できなくなるような閾値があるからです。この最小閾値は、ドロップアウト電圧(VDROPOUT)と呼ばれます。STMicroelectronicsのLDL112などの最新デバイスでは、VDROPOUTの値は350ミリボルト(3.3V、1A出力時)です。

設計者は、VDROPOUTの時点でLDOが電源電圧を制御できなくなることに注意すべきです。LDOの仕様全体を満たすには、標準のLDOに「ヘッドルーム電圧」が加わる必要があり、通常はVDROPOUTがさらに250~500mV増えます。ただし、LDOによってはそれが1.5Vにもなる場合があります。入力電圧と出力電圧の差を決めるには、VDROPOUTとヘッドルーム電圧を考慮する必要があります。

電池駆動デバイス用のLDOの設計について詳しくは、「高度なLDOを使用してIoTワイヤレスセンサ電源設計の問題に対処」を参照してください。

LDO性能の最適化

上記で述べたように、電力に制約のある設計の場合、LDO全体の電圧差を最小化することは良い設計手法と言えます。これにより電力が節約され、バッテリ寿命を大幅に延ばすことができるからです。しかし、電力バジェットが厳しく制約される場合は、他にも実行できる手立てがあります。

考慮すべき対象の1つとなるのが、ウェアラブルが低電力または「スリープ」モードのときに生じる電力消費です。このような状態の場合、デバイスはマイクロコントローラやトランシーバまたはGPS機能を使用していません。このモードでは最終製品の消費電流は少ないですが、ユーザーが操作ボタンを押すかタッチスクリーンをアクティブにしたとき遅延が最小になるように、LDOはアクティブのままである必要があります。

ウェアラブルがスリープ状態のとき、IOUTは小さくなります。このため、IGNDは通常の動作時よりも効率性に大きく影響します。デバイスの負荷は低いので実際の消費電力は大きくありませんが、その負荷は持続的なので長期的にはバッテリの寿命に著しく影響します。仕様を満たすと同時に、内部的な消費電流が最低レベルでありIOUTが低いときの損失を最小化するようなLDOを選択することが、良い設計手法と言えます。

さらに好都合といえるのは、大半の最新LDOには、選択したピンをLowにプルすることでデバイスをシャットダウンモードにするオプションがあることです。これにより、デバイスを負荷から完全にディスコネクトし、実質的にIOUTをIGNDに制限できます。

たとえばMicrochipのMCP1811Aには、LDO出力電圧のオフとオンの切り替えに使用するシャットダウン(「SHDN」)入力が組み込まれています(図2)。このデバイスは1.8~5.5V入力で動作し、1~4Vの範囲で9通りの固定出力があります。LDOのVDROPOUTは400mVで、最大出力は150mA、250nAのIQおよび80μAのIGNDをともないます(IOUT = 150mA、VIN = 5V、VOUT = 4V)。

シャットダウンモードを備えるMicrochipのMCP1811Aの図図2:MicrochipのMCP1811Aにはシャットダウンモードが備わっています。SHDNピンに対する応答時間が長くなり、安定化電圧の供給は600~1400μsの間で変わります。(画像提供:Microchip Technology)

SHDN入力が高い場合(最小でVINの70%)、LDO出力電圧が有効になり、デバイスは安定化電圧を供給します。SHDN入力がLowにプルされると(最大でVINの20%)、安定化電源電圧がオフになり、LDOは低電流シャットダウン状態に移行し、その状態ではIQが標準で10nA、IGNDは約2μAです。

MCP1181Aをシャットダウンモードにできるということの長所は、省電力面の効果が明らかな点ですが、短所としては起動時間がシステム応答に与える影響が挙げられます。LDOがSHDNピンのシステムノイズスパイクによってオンになりバッテリ電力を無駄にすることがないように、シャットダウン回路には、レギュレータをオンにする前のSHDN入力の立ち上がりエッジに400マイクロ秒(μs)の遅延があります。これは動作の面では良い考えですが、応答に影響します。このあらかじめ設定された遅延の後、SHDN入力が高いままの場合、出力が0ボルトからその最終的な安定化された値まで上昇すると、レギュレータは負荷コンデンサの充電を開始します。このため、SHDN入力がオンになってから安定化電圧の出力までの合計時間は、組み込まれた400μsの遅延時間に出力電圧の立ち上がり時間を加えたものになります。この立ち上がり時間はVOUTによって決まり、200μs~1000μsの範囲で変わります。

同様に、ON SemiconductorNCP171デュアルモードXDFN4パッケージLDOは、そのENAピンをロー(0.4V未満)に駆動することでシャットダウンモードにできます。LDOには、1.7~5.5V入力からの0.6~3.3Vの固定出力電圧範囲、および110mVのVDROPOUTがあります。ただし、NCP171ではバッテリ寿命を延長する高度なシステムが実現されており、低電力モードから通常動作に必要な安定化電圧出力に切り替わる際の応答を改善できます。

アクティブモードでは、LDOは最大80mAを供給できますが、低電力モードを使用するときLDOの安定化出力電圧はオフになりません。代わりに、IOUTが最大5mAに制限されます。安定化にはLDOの異なる部分が使用されるので、IGNDが大幅に低減されバッテリ寿命を延ばします。低電力(およびアクティブ)モードは、LDOのECOピンによって選択可能です(図3)。

ON SemiconductorのNCP171の図図3:ON SemiconductorのNCP171は、ECOピンによりアクティブモードから低電力モードに切り替えられます。低電力モードではIOUTが最大5mAに制限され、IGNDは大幅に低減されます。(画像提供:ON Semiconductor)

ECOピンが(グランドに)ローに駆動されると、LDOは低電力モードに切り替わります。IQは55μAから50nAに低減します。IGNDへの影響も同様に顕著で、アクティブモードではIGND = 420μA(IOUT = 80mA)ですが、対照的に低電力モードではIGND = 2.5μA(IOUT = 5mA)です。このモードでの消費電力は、デバイスがシャットダウンモードにあるときよりもわずかに高い程度です。低電力モードでの消費電力をさらに減らすことも可能で、そのためには内部でプログラムされた50、100、150、200ミリボルトのオフセットのいずれかによって、公称アクティブモード出力電圧を下げます。

低電力モードの主な利点は、通常の安定化電圧の要求に対する応答時間です。ハイにプルされると(VOUTに等しい)、ECOピンによってデバイスがアクティブモードに切り替わり、NCP171 LDOを安定化電圧および80mAまでの最大IOUTに100μs未満で回復します(図4)。

ON SemiconductorのNCP171を低電力モードからアクティブモードに切り替える際の図図4:NCP171を低電力モードからアクティブモードに切り替えると、100μs未満で安定化電圧が回復します。(画像提供:ON Semiconductor)

起動時に、NCP171はデフォルトでアクティブモードなので(ECOピンの状態を問わず)、目標の出力電圧に迅速に到達しそこで安定化します。この強制アクティブモードの標準的な期間は35ミリ秒(ms)で、出力コンデンサの急速充電とIOUTの急速な立ち上がりを確保し、負荷の需要を満たします。

一方、低電力モードで動作する場合には、欠点もいくつかあります。電源電圧変動除去比(PSSR、入力電圧スパイクを除去するLDO能力の指標)は低く、電気ノイズがわずかに増加します(図5)。

ON SemiconductorのNCP171の低電力モードとアクティブモード時の比較グラフ図5:NCP171が低電力モードにあるとき、基本的にPSSRはアクティブモードにあるときよりも低くなります。(画像提供:ON Semiconductor)

NCP171 LDOには、STR-NCP171-EVK評価キット(EVK)が付属します。EVKは、ON SemiconductorのStrata Developer Studio統合開発環境(IDE)で使用するように設計されており、このIDEはPCで実行します。EVKはUSBケーブルでIDEに接続され、LDOの機能を試すために使用できます。たとえば、LDOの有効化/無効化、アクティブモードと低電力モードの切り替えなどです。

また、このEVKとIDEを利用することで、技術者は入出力電圧、消費電力、デバイスの温度といったLDOの他の動作パラメータを構成、監視することもできます。

まとめ

LDOを慎重に選ぶことで、ウェアラブルの電源設計を簡素化し、同時に安定した電圧と電流を確保できます。設計者は、低接地電流のLDOを選択しその入出力電圧の差を最小限に抑えることにより、スイッチングレギュレータの効率に近い効率性を実現できます。

ウェアラブルのバッテリ寿命のさらなる延長を可能にするには、新世代のLDOの1つを選択します。そのようなLDOには、専用のピンで選択する複数の動作モードがあり、それらのモードはウェアラブルが長時間スリープモードにある間は消費電力を抑えるように設計されています。多くの場合、シリコンサプライヤはLDOに評価ツールを付属させており、設計者はそのツールを利用してデバイスの最適な設定を試しバッテリ寿命を最大化できます。

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