より多くの技術を包含する将来の自動車

著者 Rich Miron

Digi-Key Electronics の提供

以前は、車載用の電子機器システムが自動車の総価格に占める割合はわずか1パーセントでした。しかし現在では、より多くのテクノロジに対する消費者の要求と、実用的な技術能力の向上によって、自動車に必要とされる電子制御ユニット(ECU)の数は急増しています。たとえば、現在の高級車には100個に及ぶECUと最大1億行のコードが必要な場合もあります。その規模は過去の自動車をはるかに超えており、自動車の構造でECUが重要な役割を担うことの証でもあります。

電力が高度な電子機器により多く供給されハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)の駆動源となり、CO2の排出量を削減するのと並行して、電子機器システムが手動部品や電動部品の代わりに導入されています。このような状況が進み、将来の自動車の運転は現在の交通手段とは大きく異なるスタイルになるはずです。エミッションが最適化されたHEVや、自動運転とゼロエミッションによるEVは、車両自体のシステム内での通信に加え、都市や道路のインフラストラクチャとの通信、さらに他の自動車との通信も行うようになります。Texas Instruments(TI)のホワイトペーパー、「Driving the Green Revolution in Transportation(交通機関におけるグリーン革命の活性化)」には、HEVとEVのメリットがさらに詳しく解説されています。

HEVやEVを求める消費者が急増している背景には、いくつかの要因があります。

  • 内燃エンジンへの環境規制の圧力
  • 電動パワートレインとバッテリ技術の進歩
  • 利便性やインフォテイメントなどの機能性への消費者の期待

ここで1つの制約的な要素として、従来の12V鉛酸バッテリの容量が、さまざまな革新技術に求められる電力負荷の増大によって限界に達しつつあることが挙げられます。このような急増する電化の需要に対処するため、自動車業界が見いだした解決策があります。それは、従来の12Vバッテリが単独で生み出す電力を上回る48Vの2次電気系統の開発です。しかしこのような高電圧システムには、運転者と同乗者を感電から安全に保護し、システムの安全性が破綻しないように、安全と絶縁管理のための多岐にわたる分離が必要になります。

このような設計上の課題を克服しさらに安全で効率的な輸送システムを実現するために、TIはさまざまなソリューションと設計支援を提供しています。以下に、その製品とリファレンス設計の例をご紹介します。

TIDA – Texas Instrumentsのリファレンス設計

TIDA-03040 – 車載用シャントベース±500A高精度電流センシングのリファレンス設計。 このTIの車載用シャントベース電流センサのリファレンス設計(図1)は、-40°C~+125°Cの動作温度範囲にわたり誤差0.2% FSR未満の精度を実現しています。バッテリ管理システム、モータ電流など、多くの車載アプリケーションで、高精度の電流センシングが必要になります。これらの重要なアプリケーションの精度が低い場合、その根本原因としては非線形性、温度ドリフト、シャント公差が考えられます。この設計では、TIの電流シャントモニタ(INA240)と信号コンディショナ(PGA400-Q1)を使用して、これらの問題を解決します。

Texas Instrumentsが提供するTIDA-03040リファレンス設計のブロック図

図1: Texas Instrumentsの車載用シャントベース±500A高精度電流センサ用TIDA-03040リファレンス設計ブロック図(画像提供:Texas Instruments)

TIDA-03050 - 車載用mA~kA範囲電流シャントセンサのリファレンス設計。 このリファレンス設計は、バスバー型のシャント抵抗を使用して、mAからkAの範囲の電流を検出します。EVとHEVにより大容量バッテリの需要が増大しているため、電力需要モニタ用により大きな動作電流スパンと高精度な電流センサの必要性が高まりつつあります。3桁の幅で(mAからA、1Aから100A、100Aから1,000A)高精度に電流を測定するのは、大量のシステムノイズがあるためにきわめて困難な課題になります。この問題を解決するため、この設計ではTIの高分解能A/Dコンバータ(ADC)と高精度の電流シャントモニタを使用しています。

TIDA-01604 - HEV/EVオンボード充電器向けの効率性98.6%、6.6kWトーテムポールPFCのリファレンス設計。 このリファレンス設計では、C2000 MCUと炭化ケイ素(シリコンカーバイド、SiC)絶縁型ゲートドライバで駆動するSiC MOSFETをベースにしています(図2)。この設計には3相のインターリーブが実装されており、連続伝導モード(CCM)で動作し、240V入力電圧および6.6kWの最大電力で98.46%の効率を実現します。C2000 MCUは位相制限とアダプティブデッドタイム制御を実現し、軽負荷時の力率を向上させます。ゲートドライバ基板(下記のTIDA-01605を参照)は、4Aのソース電流と6Aのシンクピーク電流を供給できます。また強化絶縁を実装しており、100V/ns超のコモンモード過渡耐性(CMTI)を実現します。またゲートドライバ基板は2レベルのターンオフ回路を搭載し、短絡状態が生じた場合に電圧オーバーシュートからMOSFETを保護します。

Texas Instrumentsが提供するHEV/EVオンボード充電器用TIDA-01604リファレンス設計の図

図2: Texas InstrumentsのHEV/EVオンボード充電器用TIDA-01604リファレンス設計(画像提供:Texas Instruments)

TIDA-01605 - 2レベルのターンオフ保護機能搭載、車載用デュアルチャンネルSiC MOSFETゲートドライバのリファレンス設計。 このTIリファレンス設計は、SiC MOSFETをハーフブリッジ構成で駆動する、車載用に認定済みの絶縁型ゲートドライバソリューションです。この設計では、デュアルチャンネルの絶縁型ゲートドライバ用に電力を供給する2個のプッシュプルバイアス電源を搭載しており、各電源は+15Vと-4Vの出力電圧で1Wの出力電力を供給します。前述のとおり、このゲートドライバは4Aのソース電流と6Aのシンクピーク電流を供給できます。このドライバの強化絶縁は8kVピークと5.7kV RMSの絶縁電圧に耐え、100V/ns超のCMTIも備えています。この基板には、前述のとおり、2レベルのターンオフ回路が搭載されており、短絡が発生した場合でもMOSFETを電圧オーバーシュートから保護します。この設計では、DESAT検出閾値と2段目のターンオフ用の遅延時間を構成できます。フォールト信号とリセット信号のインターフェース用に、ISO7721-Q1デジタルアイソレータを使用しています。全体として、このリファレンス設計は40mm x 40mmの小型フォームファクタを採用した2層プリント回路基板(PCB)に適合します。

TIDA-01168 - 12V/48V車載用システム向け双方向DC/DCコンバータのリファレンス設計。 このリファレンス設計は、12V/48V車載用システム向けの4相双方向DC/DCコンバータ開発プラットフォームとして考案されたものです。システムは、パワー段制御に1つのTMS320F28027F MCUと2つのLM5170-Q1電流コントローラを使用しています。C2000 MCUが電圧フィードバックを提供する一方、LM5170-Q1サブシステムは平均電流フィードバックを使用して電流制御を行います。このような制御方式では、多相コンバータで使われる位相電流バランスが不要になります。LM5170-Q1ベースのシステムでは高集積化の実現により、PCB面積の削減、設計の簡素化、開発期間の短縮を可能にします。

製品

ISO7731-Q1ISO773x-Q1デバイスファミリは、高性能のトリプルチャンネルデジタルアイソレータです。UL 1577準拠で5,000VRMS(DWパッケージ)および3,000VRMS(DBQパッケージ)の絶縁定格を備えています。このファミリでは、CQC、CSA、TUV、およびVDEに基づく強化絶縁定格を有しています。これらのデバイスでは、電磁イミュニティが高く、低エミッション、低電力を実現し、CMOSまたはLVCMOSデジタルI/Oを絶縁します。それぞれの絶縁チャンネルには論理入力と出力バッファがあり、二酸化ケイ素(SiO2)の絶縁バリアによって分離されています。このデバイスにはイネーブルピンがあり、対応する出力を高インピーダンスに移行して、マルチマスター駆動アプリケーションや、消費電力の低減に使用できます。ISO7730-Q1デバイスには3つのチャンネルがあり、すべて同じ方向です。ISO7731-Q1デバイスには2つの順方向チャンネルと、1つの逆方向チャンネルがあります。入力電力または信号が消失した場合、サフィックス「F」のあるデバイスではLOW、サフィックス「F」のないデバイスではHIGHがデフォルト出力です。

UCC21520-Q1: このデバイスは、絶縁型デュアルチャンネルのゲートドライバです(図3)。4Aのソース電流、6Aのシンクピーク電流に対応します。パワーMOSFET、SiC MOSFET、IGBTを最大5MHzで駆動するよう設計され、伝播遅延とパルス幅歪を低く抑えます。入力側と2つの出力ドライバは、5.7kVRMSの強化絶縁バリアによって分離され、CMTIは最小で100V/nsです。2つの2次側ドライバ間が内部で機能的に絶縁されているので、最大1500VDCの電圧で動作できます。このデバイスの設計では、いずれのドライバも2つのローサイドドライバ、2つのハイサイドドライバ、または1つのハーフブリッジドライバとして構成可能で、デッドタイム(DT)をプログラム可能です。両方の出力はディスエーブルピンによって同時にシャットダウンされるので、オープンのままにするか接地すると通常動作が可能になります。フェイルセーフの手法として、1次側の論理障害が発生すると両方の出力が強制的にLOWになります。

Texas Instrumentsが提供するUCC21520-Q1絶縁型デュアルチャンネルゲートドライバの機能ブロック図

図3: Texas InstrumentsのUCC21520-Q1絶縁型デュアルチャンネルゲートドライバの機能ブロック図。(画像提供:Texas Instruments)

UCC21222-Q1: この絶縁型デュアルチャンネルゲートドライバはプログラム可能なデッドタイムを備え、温度範囲が広いことから、極端な温度条件化でも一定した性能と堅牢性を発揮します。ピーク電流はソース4A、シンク6Aで、パワーMOSFET、IGBT、GaNトランジスタを駆動するように設計されています。UCC21222-Q1は、2つのローサイドドライバ、2つのハイサイドドライバ、または1つのハーフブリッジドライバとして構成できます。5nsの遅延マッチング性能により、内部貫通電流のリスクをともわずに、2つの出力を並列化して2倍の駆動力で高い負荷条件にも対応できます。2つの出力ドライバは、3.0kVRMSの絶縁バリアによって入力側から分離され、CMTIは最小で100V/nsです。

LM5170-Q1: LM5170-Q1コントローラは、車載用48Vおよび12Vデュアルバッテリシステム用のデュアルチャンネル双方向コンバータに不可欠な高電圧および高精度を実現します。このために、高電圧と低電圧のポート間を流れる平均電流を、DIR入力信号により指定される方向にレギュレートします。電流レギュレーションレベルは、アナログまたはデジタルPWM入力によりプログラムされます。デュアルチャンネルの差動電流センスアンプと専用のチャンネル電流モニタにより、標準値で1%の電流精度が得られます。5Aのハーフブリッジゲートドライバは並列のMOSFETスイッチを駆動することができ、チャンネルごとに500W以上の電力を供給できます。また、同期整流器のダイオードエミュレーションモードにより、負の電流が防止されるだけでなく、不連続モードの動作が可能になり、負荷が低いときの効率性を向上できます。多様な保護機能がデバイスに組み込まれており、MOSFET障害検出、HVとLVの両方のポートにおける過電圧保護、サイクル単位の電流制限、過温度保護が含まれます。

INA301-Q1: このデバイスは、高コモンモード電流センシングアンプと高速コンパレータの両方を含んでおり、過電流保護を行うように構成されています。これは、電流検出または電流シャント抵抗器における電圧を測定し、定義された閾値制限に対してその電圧を比較することで行います。INA301-Q1は、1つの外部制限設定抵抗を使用して設定できる調節可能な制限閾値の範囲を特長とします。この電流シャントモニタは、電源電圧に関係なく0Vから最大36Vまで変動するコモンモード電圧でこの差動電圧信号を測定します。オープンドレインアラート出力には、出力状態が入力状態に従うトランスペアレントモード、またはアラート出力がラッチのリセット時にクリアされるラッチモードのいずれかで動作するよう構成するオプションがあります。1µs未満のデバイスアラート応答時間により、過電流の事象を迅速に検出できます。

INA240-Q1: 車載用認定済みのINA240-Q1は、電圧出力の電流センスアンプで、強化されたPWM除去機能を備えています。電源電圧にかかわらず、–4V~80Vの広いコモンモード電圧範囲でシャント抵抗の電圧降下を検出できます。負のコモンモード電圧により、デバイスはグランドより低い電位で動作でき、標準的なソレノイドアプリケーションのフライバック期間に対応できます。強化されたPWM除去により、パルス幅変調(PWM)信号を使用するシステム(モータドライブやソレノイド制御システムなど)で、大きなコモンモード過渡電圧(ΔV/Δt)を高いレベルで抑制します。この機能により、大きな過渡電圧や、それにともなう出力電圧の回復リップルなしに、正確な電流を測定できます。INA240-Q1は2.7V~5.5Vの単電源で動作し、消費電流は最大2.4mAです。現在、4種類の固定ゲイン、 20V/V、50V/V、100V/V、200V/Vが利用できます。デバイスの低オフセット、ゼロドリフトアーキテクチャにより、シャントでの最大電圧降下が最小で10mVフルスケールであれば電流の検出が可能です。グレード1バージョンは、8ピンのTSSOPおよび8ピンのSOICパッケージで提供され、–40°C~+125°Cの拡張温度範囲で動作します。グレード0バージョンは、8ピンのSOICパッケージのみで提供され、-40°C~+150°Cの拡張温度範囲で動作します。

AMC1305M05-Q1: これは高精度のデルタシグマ(ΔΣ)変調器で、磁気干渉に対して非常に高い耐性の容量性二重絶縁バリアを備えており、入力回路から出力を分離します(図4)。この絶縁バリアは、DIN V VDE V 0884-10、UL1577、およびCSA規格に準拠し、最大7,000VPEAKの強化絶縁を提供することが認証されています。絶縁型電源とともに使用することで、AMC1305M05-Q1は、高コモンモード電圧ライン上に存在する場合があるノイズ電流がローカルシステムグランドに入り込み、低電圧回路を干渉または損傷するのを防止します。このデバイスは、シャント抵抗や他の低電圧レベル信号源に直接接続するために最適化されており、優れたACおよびDC性能をサポートします。一般的にシャント抵抗は、オンボード充電器、トラクションインバータ、その他の車載用アプリケーションで電流を検出します。ビットストリームをデシメートするための適切なデジタルフィルタ(たとえばTMS320F2837xに統合されているもの)を使用することで、このデバイスは78kSPSのデータレートで85dB(13.8ENOB)のダイナミックレンジを持つ16ビットの分解能を達成できます。

Texas Instrumentsが提供するAMC1305M05-Q1高精度デルタシグマ(ΔΣ)変調器の概略回路図

図4: Texas InstrumentsのAMC1305M05-Q1高精度デルタシグマ(ΔΣ)変調器の概略回路図(画像提供:Texas Instruments)

TMS320F28069M車載用認定済みF2806x Piccoloファミリ MCUは、C28xコアとCLAの性能を高集積化した制御ペリフェラルと組み合わせて、少ピン数のデバイスに組み入れています。このファミリは従来のC28xベースのコードと互換性があり、アナログも高レベルで統合されています。他の特長として、シングルレールでの動作を可能にする内蔵の電圧レギュレータ、およびデュアルエッジ制御(周波数変調)を可能にするHRPWMモジュールの強化が含まれます。さらに、10ビット基準を内蔵したアナログコンパレータが追加されており、直接配線によりePWM出力を制御できます。このADCは、オーバーヘッドを小さくしレイテンシを短くするよう最適化されたインターフェースを備えており、0から3.3Vの固定フルスケール範囲に変換し、レシオメトリックVREFHI/VREFLO基準電圧をサポートします。

ISO1042-Q1: このデバイスは、ISO11898-2(2016)規格に準拠した、ガルバニック絶縁のコントローラエリアネットワーク(CAN)トランシーバです。ISO1042-Q1は、±70VのDCバス障害保護機能を備え、±30Vのコモンモード電圧範囲に対応します。CAN FDモードで最高5Mbpsのデータレートをサポートすることで、従来のCANよりはるかに高速にペイロードを伝送できます。このデバイスでは、耐電圧5,000VRMS、動作電圧1,060VRMSを実現する二酸化ケイ素(SiO2)絶縁バリアを採用しています。ISO1042-Q1の電磁適合性は大幅に強化されており、システムレベルのESD、EFT、サージ、放射の規格に準拠できます。絶縁型電源と組み合わせて使用した場合、このデバイスは高電圧に対する保護を可能にして、バスからのノイズ電流がローカルグランドに入り込むことを防止できます。ISO1042-Q1デバイスには基本絶縁型と強化絶縁型のアプリケーション向けがあり、-40°C~+125°Cの広い周囲温度範囲に対応します。SOIC-16(DW)パッケージおよび小型のSOIC-8(DWV)パッケージの2種類のサイズで提供されます。

結論

自動車産業には明るい将来があります。しかし、環境規制や消費者の要求に後押しされ、より多くの機能が自動車に追加されている現状は、自動車の設計をさらに複雑化する要因にもなります。これらの機能に対応できるように、現在Texas Instrumentsは各種のリファレンス設計と製品を幅広く提供しており、設計期間を短縮し将来型設計の自動車を消費者により早く届けるために役立てることができます。

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著者について

Rich Miron

Digi-Key Electronicsのシニアテクニカルコンテンツ開発者であるRich Miron氏は、記事、ブログ、製品トレーニングモジュールの作成と編集に主に責任を持つ技術コンテンツグループに2007年から参加しています。Digi-Keyに加わる前は、原子力潜水艦の計装制御システムをテストし、認定していました。Richはノースダコタ州立大学ファーゴ校の電気電子工学の学位を取得しています。

出版者について

Digi-Key Electronics

ミネソタ州シーフリバーフォールズに拠点を置くDigi-Key Electronicsは、試作および設計段階、量産段階のいずれにおいても、電子部品を卓越したサービスとともにグローバルに提供し、Digi-Keyでは、750社以上の一流メーカーから提供される600万点以上の製品を取り扱っている。