いつどのようにマイクロコントローラ向けの外部DACを適用し選択するかを把握する

著者 Bill Giovino

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

32ビットマイクロコントローラによっては、周波数または電圧の生成向けに、デジタル/アナログコンバータ(DAC)がチップに搭載されています。DACにより、多くの用途で基板スペースを節約すると同時に追加の機能を実現することができます。ただし、用途によってはマイクロコントローラにはない特殊なDAC機能が必要な場合があります。

この記事では、オンチップのマイクロコントローラDACの機能と制約について取り上げていきます。さらに、非常に正確な外部DACソリューションの例を紹介し、それらのソリューションを使用して高精度なアナログ信号を生成する方法を説明します。

オンチップDACの動作

設計者がカスタムのアナログ信号を生成できるようにするため、マイクロコントローラメーカーはチップにDAC周辺機器を組み込み始めています。これらの周辺機器を使用することで、高精度な電圧に加えてサイン波や三角波などのカスタムの波形を生成することができます。DACは音声の合成にも使用できます。

DACは最低で0ボルト、最高でDACのアナログ基準電圧と同じ値の出力電圧を生成します。この電圧はDACデータレジスタ内のデジタル値に比例し、精度はDACの分解能に基づきます。たとえば、DACの分解能が8ビットで、基準電圧が5ボルトの場合、1LSBのDACの精度は5/255 = 0.0196ボルトとなります。したがって、理論上は、8ビットのDACデータレジスタに01hが格納されている場合、DACの出力は1LSB、つまり0.0196ボルトと同等になります。8ビットのDACデータレジスタに値F1h(241)が格納されている場合、DACの理論上の出力は4.7236ボルトになります。理論的には、DACデータレジスタに01hを加えるごとに、出力電圧の値は1LSBずつ増えていくことになります。

もちろん、あらゆるアナログ回路と同じように、DACも理論どおりに動作するわけではありません。データレジスタの理論上の値とDACの出力の差異は、微分非直線性(DNL)誤差と呼ばれ、LSB単位で測定されます。たとえば、標準的なマイクロコントローラのDACでは、±2LSBのDNLが指定される場合があります。

DACでは直線性ゲイン誤差も生じることがあります。この誤差は、理論上の出力に加わるパーセンテージとして測定され、多くの場合は出力電圧に0.5%が加わります。

理論上のDACの場合、DACデータレジスタの内容に対する出力値をプロットすると直線になります。DAC回路パラメータの変動が原因である、実際のDACの直線性誤差の加算でもやはり直線になります。実際には、この線は直線から外れて外側へ曲がり、非直線的なカーブを形成します。この非直線性は電圧と温度に対するDAC回路内の変動の結果でもあります。この非直線性の誤差は、積分非直線性(IRL)誤差と呼ばれています。マイクロコントローラのDACの場合、これは±4LSB以上になる可能性があります。

周波数の生成では、マイクロコントローラのDACの最速出力周波数は、マイクロコントローラのCPUの周波数に制限されます。

高精度なアナログ信号を実現するには、あらゆるDACで正確な基準電圧が必要になります。最新のマイクロコントローラでは、そのようなDACの基準電圧は、通常の場合専用のアナログ基準電圧ピンから供給されます。このアナログ基準電圧はマイクロコントローラ内部のものであるため、電源のリップルを最小化するために内部のデジタルロジックとは分離され、絶縁されています。ただし、高速デジタル論理による小規模な干渉が発生することが予測されます。DAC周辺機器はサイン波の生成時には電源リップルの影響をそれほど受けません。このリップルが顕著になるのは、安定した正確な出力電圧が必要な場合または合成された音声または楽音を生成する場合です。

高めの基準電圧を使用する場合は電源リップルへの影響を最小化できる可能性がある一方で、DACによる低めの電圧の生成が妨げられる可能性があり、1LSBの場合のDACの精度も低下します。

小さい信号向けのシングルチップ外部DAC

ほとんどのマイクロコントローラ上のDAC周辺機器が実現できる精度は、一般的な用途には十分です。ただし、非常に高い精度か高速、またはその両方が必要とされる状況があります。外部DACが実際に必要となるのはこうした状況です。

Texas Instrumentsは、設計のあらゆる問題に対応するために、アナログ信号を生成できる一連の外部DACを提供しています。たとえば、基板スペースが十分でない場合は、DAC80508MYZFTの16ビットのDACが非常に小さく、DSBGAパッケージで2.4 x 2.4mmであるため有用性があります。このDACには8つの出力があり、SPIインターフェースを使用して、クロックレートが最大で50メガヘルツ(MHz)であるほとんどのマイクロコントローラとのインターフェースを実現できます(図1)。

Texas Instrumentsが提供するDAC80508 DACの図

図1: DAC80508は、SPIインターフェースを使用してほとんどのマイクロコントローラに対応でき、8つの同じアナログ出力チャンネルを備えています。(画像提供:Texas Instruments)

DAC80508は、外部のアナログ基準電圧を使用するか、DACのデジタル電源電圧を使用して、2.5ボルトの独自の基準電圧を±5mVの精度で生成します。基準電圧のドリフトは、最小で2パーツパーミリオン/摂氏(ppm/°C)です。これにより、-40°C~+125°Cの温度範囲に対して、非常に安定した基準電圧が実現されます。基準電圧を2分割して、最高値が1.25ボルトのアナログ信号を提供することもできます。

DAC80508の精度は、ほとんどのマイクロコントローラDAC周辺機器にはないものです。INLとDNLは、どちらも標準で±0.5LSB、最大で±1LSBです。ゲイン誤差は標準で±0.5%、最大で±1%です。16ビットの分解能でのこの精度は、デジタル音声信号をアナログ音声に変換するのに最適です。たとえば、光ファイバケーブル経由で送信されるパルス符号変調(PCM)の変換や、ストレージデバイスからのデジタル音声の変換に使用することができます。デジタル音声が16ビットの音声データに変換されると、DAC80508ではそのデータを一般的なRCAケーブル経由で送信されるアナログ音声信号へと変換することができます。基準電圧が1.25ボルトに設定されている場合、これはラインレベルの音声信号を生成するのに十分な精度以上のレベルとなります。

DAC80508は出力ゲインアンプも備えています。このアンプは出力電圧に2を掛けた、基準電圧の2倍の出力電圧を生成することができます。

DAC80508でSPIインターフェースを使用したアナログの波形の生成はシンプルに行えます。DACデータレジスタに送信される各SPIコマンドパケットは32ビット幅です。各パケットには、レジスタに書き込まれる16ビットのデータとともに書き込まれるチャンネルアドレスが含まれています。DAC80508のすべての出力チャンネルは、レジスタへのデータ書き込み時に出力電圧を即座に生成するようにプログラムすることも、SPIが内部ブロードキャストレジスタに書き込むまですべての値がDACデータレジスタに保持されるようにプログラムすることもできます。8つのブロードキャストレジスタビットのいずれかの位置に論理上の「1」を書き込むと、当該のDAC出力のみが、そのDACデータレジスタの値で更新されます。これにより、同一の信号を生成することができます。これは、テスト機器用に波形を生成する場合に有用です。

信号エラーおよびノイズの回避

ノイズの多い産業環境で使用される場合、特に高電圧が存在する場合は、干渉が随時発生するのを回避することは不可能です。SPIで干渉が原因で発生する出力信号の誤差を防ぐために、DAC80508では、オプションで各SPIパケットの終わりで8ビットのチェックサムを生成することができます(図2)。このチェックサムが有効であれば、DACのデータレジスタへの書き込みが行われます。チェックサムが失敗した場合、データの書き込みは行われません。チェックサムが失敗した場合、DACではオプションでSPI SDOピンをローに設定し、アクティブローのアラームピンとして機能するようにできます。失敗したチェックサムに対する処理はマイクロコントローラファームウェアの役割です。

ビット フィールド 説明
31 RW アドレス指定されたレジスタに対する読み取りまたは書き込みコマンドとしての通信を特定します。R/W = 0は書き込み操作を設定します。R/W = 1は読み取り操作を設定します。
30 CRC-ERROR リザーブビット。ゼロに設定されます。
29:28 Reserved リザーブビット。ゼロで埋める必要があります。
27:24 A[3:0] レジスタのアドレス。読み取りまたは書き込み動作時にレジスタへのアクセスが行われるかどうかを指定します。
23:8 DI[15:0] データサイクルのビット。書き込みコマンドの場合、データサイクルのビットはアドレスA[3:0]のレジスタに書き込まれる値です。読み取りコマンドの場合、データサイクルのビットでは値について考慮されません。
7:0 CRC 8ビットCRCの多項式。

図2: 32ビットSPIパケットの構造。DAC80508のDACデータレジスタのSPIパケットに8ビットのチェックサムが含まれていると、このパケットは、まずチェックサムが含まれた最後のビット(7:0)とともにMSBに送信されます。このチェックサムは、DAC80508によって自動的に生成されます。(画像提供:Texas Instruments)

いずれかのDACの指定された精度に関係なく、精度はクリーンな電源を使用した場合にのみ保証できます。DAC80508のVDDがリップルのない低ノイズであることが非常に重要です。DAC80508がDC/DCコンバータで使用されている場合は、非常にノイズが多いという性質が電源にあるため、十分に注意することが必要です。VDDでのフィルタリングが重要であるため、1マイクロファラッド(µF)~10µFのコンデンサを、0.1µFのコンデンサとともにVDDとアナロググランドの間に配置する必要があります。低ESRセラミックコンデンサを使用し、VDDピンに可能な限り近い場所に配置してください。

アナログ信号出力はプリント基板のエッジの近くに維持し、デジタルコンポーネントから十分に絶縁されている必要があります。これはDACのアナログ出力への干渉を防ぐだけではなく、これらのアナログ信号がプリント基板上の他の信号に干渉することも防止します。

高速かつ高性能なDAC

妥協が許されない用途では、非常に高い性能が要求される場合があります。DACはギガヘルツ範囲の信号を生成することもできます。これはレーダ装置で、ストレートなアナログ回路ではレーダに要求される高精度を実現できない場合に特に重要です。そのような用途では、Texas InstrumentsのDAC38RF82IAAV高速RFデュアルチャンネルDACを使用して、1ギガヘルツ(GHz)を超える波形を比較的小型の10mm x 10mm BGAパッケージで生成できます(図3)。

Texas Instruments提供のDAC38RF82超高性能DACの図

図3: DAC38RF82は超高性能のDACであり、1GHzを超える波形を生成することができます。これは低電力の8レーンJEDSD204B 12.5Gbit/sインターフェースを使用して、ホストマイクロプロセッサとの接点を実現します。(画像提供:Texas Instruments)

DAC38RF82では3つの分解能がサポートされます。16ビットの分解能に設定された場合は、最大2GHzのRF信号を生成できます。12ビットの分解能が選択された場合は、2.66GHzの信号を生成できます。最速モードになるのは8ビットの分解能に設定された場合です。この場合は、4.5GHzの波形を生成することができます。当然のことですが、これらの速度はあらゆるオンチップマイクロコントローラDAC周辺機器の能力を超えています。

DAC38RF82はセルタワーなどのベースバンドトランスミッタとして使用するのに十分な性能を備えていて、ハイエンドのテスト機器などの用途を対象としたカスタムの波形の生成に使用することもできます。DAC38RF82は、自律車両用のレーダ信号の生成にも使用できます。

このデバイスは、DAC80508よりも複雑です。最大4.5GHzの信号を生成するには、非常に高速なデータインターフェースが必要です。DAC38RF82では、8ビットモードでの速度が9Gbit/sのJESD204Bシリアルデータインターフェースが使用されます。デバイスは、これらのインターフェース速度でFPGAまたはASICへのインターフェースを実現します。

12ビットまたは16ビットモードで使用された場合、DAC38RF82は2つのRF波形を生成できます。高速8ビットモードの場合、サポートされるのは1つの波形のみです。1ボルト、1.8ボルト、および-1.8ボルトの3つの電源電圧が必要です。デバイスの標準的な用途での要求を考慮すると、これらの電源電圧は非常にクリーンで、リップルがないものでなければなりません。DACの3つの主要かつ比較的独立したセクションであるデジタルサブシステム、アナログサブシステム、およびクロックサブシステムは、意図しないインタラクションを避けるために、それぞれが分割された独自の電源を持つことが理想的です。

DACのDNLは標準で±3LSB、INLは標準で±4LSBであり、標準的なゲイン誤差は±2%です。特定の用途での精度は、テスト時に適切なDACレジスタ値を選択することで保証することができます。

DAC38RF82の開発の始動

このような高周波数を十分な精度で生成するときは、評価ボードが開発プロセスの必須要素となります。DAC38RF82はDAC38RF82EVMの評価および開発ボードでサポートされています。この開発ボードはハイエンドDACのすべての機能に対応しています。DAC38RF82EVMにインターフェースするデジタル信号を生成するには、TSW14J56EVMデータキャプチャインターフェースボードが必要です。このデータキャプチャボードは、USB 3.0インターフェースをPCとの接点として使用します。

Texas Instruments提供のDAC38RF82EVM(左)およびTSW14J56EVM(右)の画像

図4: 左側のDAC38RF82EVMには、テスト用のRF信号を生成するJESD204Bインターフェースを経由して、右側のTSW14J56EVMによって生成されたデジタル信号が供給されます。(画像提供:Texas Instruments)

供給された評価ソフトウェアには、対象となる用途に対してDAC38RF82の評価、テスト、およびプログラミングを行うのに必要なすべてのものが用意されています。

このような高速デバイスを使用する場合は、レイアウトが非常に重要です。DAC38RF82はプリント基板のエッジにあり、他のコンポーネントからは可能な限り分離されている必要があります。RFトレースは短くし、供給ピンとグランド間にあるコンデンサをバイパスするという推奨事項は必ず遵守する必要があります。その他のレイアウトの推奨事項は、パッド内にビアがあるバイパスコンデンサを使用し、寄生インダクタンスを避けるためにこれらのコンデンサのスタブを最低限にすることです。また、設計者は、出力トレースに対して差動100Ωの共平面性ウェーブガイドを使用する必要があります。

まとめ

汎用のオンチップDACが使用されたマイクロコントローラは、相応の精度の電圧および波形をキロヘルツの範囲で生成する用途に適しています。ただし、高精度な電圧または超高速生成の場合は、外部DACを使用して、アプリケーションの正確さと性能を著しく強化できますが、電源およびレイアウトに関して高度な設計を実施する必要もあります。

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著者について

Bill Giovino

Bill Giovino氏は、シラキュース大学のBSEEを持つエレクトロニクスエンジニアであり、設計エンジニアからフィールドアプリケーションエンジニア、そしてテクノロジマーケティングへの飛躍に成功した数少ない人の1人です。

Billは25年以上にわたり、STMicroelectronics、Intel、Maxim Integratedなどの多くの企業のために技術的および非技術的な聴衆の前で新技術の普及を楽しんできました。STMicroelectronicsでは、マイクロコントローラ業界での初期の成功を支えました。InfineonでBillは、同社初のマイクロコントローラ設計が米国の自動車業界で勝利するように周到に準備しました。Billは、CPU Technologiesのマーケティングコンサルタントとして、多くの企業が成果の低い製品を成功事例に変えるのを手助けしてきました。

Billは、最初のフルTCP/IPスタックをマイクロコントローラに搭載するなど、モノのインターネットの早期採用者でした。Billは「教育を通じての販売」というメッセージと、オンラインで製品を宣伝するための明確でよく書かれたコミュニケーションの重要性の高まりに専心しています。彼は人気のあるLinkedIn Semiconductorのセールスアンドマーケティンググループのモデレータであり、B2Eに対する知識が豊富です。

出版者について

Digi-Keyの北米担当編集者