X線セキュリティシステムのスループットを向上させるアーキテクチャ

著者 Bonnie Baker

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

デジタルX線ベースのセキュリティシステムは、禁制品、麻薬、爆発物、武器、その他安全保障上の脅威の検知に使用できるため、郵便物、手荷物、その他の貨物処理アプリケーションで防御の最前線に立つことがよくあります。X線技術そのものは十分に理解されていますが、設計者は脅威を検出する時間を短縮しつつ、特にX線システムがポータブルになるにつれ、精度、解像度、低電力消費を維持することも常に迫られています。

これらの多様な要件に対応する最適なアプローチが、最小遅延の高性能多重化データ収集システムです。

この記事では、逐次比較レジスタのA/Dコンバータ(SAR-ADC)に基づくシステムの実装に必要な情報を説明します。一般的なパイプラインADCとは異なり、SAR-ADCは待ち時間なしのサンプリングに対応します。アプローチのニーズに合ったサンプルソリューション、およびSAR-ADCを使用する際に必要な検討事項についても紹介します。

X線システムの機能と利点

デジタルX線(DXR)デバイスがセキュリティシステムの需要を満たすためには、小型、高性能、低電力のデータ収集システムが必要です。一般的なDXRシステムでは、精度を損なうことなく、高サンプリングレートで多くのチャンネルを単一のADCに多重化します(図1)。

一般的なデジタルX線信号チェーンの図

図1:一般的なデジタルX線信号チェーンでは、多くのチャンネルが、高サンプリングレートで単一のADCに多重化されます。(画像提供:ボニー・ベイカー氏)

デジタルX線画像検出器の性能はその画像品質に基づいて評価されます。したがって、X線ビームの捕捉は正確で、処理も正確であることが重要です。デジタルX線画像の増大したダイナミックレンジ、高速の捕捉速度とフレームレート、および特殊画像処理技術を使用した均一性により、拡張された画像を表示できます。

セキュリティ画像処理システムは拡張した画像を提供して、正確な検出とスキャン時間の短縮によりスループットを向上させる必要があるため、X線ベースのセキュリティシステムには、正確で高感度かつ高速のADC回路が必要です。最初はX線信号のデジタル化です。

X線信号のデジタル化

図2の回路は、図1のアンプのADC信号チェーン部分への電気的な接続を示しています。2台のAnalog DevicesADA4897-1ARJZ-R7アンプで差動アンプドライバが作成され、信号をAnalog DevicesのAD7625BCPZの差動入力段に送信します。AD7625は、16ビットの6メガサンプル/秒(MSPS)SAR-ADCです。

AD7625 SAR-ADCを駆動するAnalog DevicesのADA4897-1アンプの回路図(クリックして拡大)

図2:AD7625 SAR-ADCを駆動するADA4897-1の回路図(デカップリングコンデンサなし)。(画像提供:Analog Devices)

ADA4897-1ドライバは、AD7625 ADCの動的な性能を維持するのに役立つ2台の低ノイズオペアンプを使用しています。また、ADA4897-1の、0.1%内までに45nsという高速セトリング時間は、多重化アプリケーションに最適です。

高速のパイプラインADCとは異なり、AD7652のSAR-ADCアーキテクチャサンプルは遅延がなく、その6MSPSサンプリングレートにより、複数チャンネルで高速のサンプリングを可能にします。ADCのシリアル低電圧差動信号(LVDS)インターフェースと16ビットのDC直線性性能によって、低デジタルノイズが確保され、低ピン数が提供されます。

このアンプとADCの組み合わせは、全体的に低ノイズで歪みの少ない動作になるよう最適化されており、高性能多重化データ収集システムに最適です。この組み合わせのアプリケーションとして、ここで説明するポータブルデジタルX線システムやセキュリティスキャナがあります。

X線システム回路の説明

X線のデータ収集回路は、ADCの入力に対する2台のドライバアンプ、ドライバアンプ用の電圧コモンモードレベルシフト、高精度の基準電源、および最先端の16ビットSAR-ADCで構成されています。この信号パスにおけるすべてのデバイスが、88.6デジベル(dB)の全体としてのSN比(SNR)と−110.7dBの総合高調波歪み(THD)に寄与しています。回路を次の主要な段階の観点から調べると役に立ちます。

ADCの入力ドライバアンプ:図2のADA4897-1では、1MHzで-93dBのスプリアスフリーダイナミックレンジ(SFDR)、0.1%へ36nsの高速セトリング時間、230MHzの高帯域幅により低歪みを実現しています。両方のADA4897-1ドライバの設定は1V/Vのゲインです。アンプに続くローパスRCフィルタは、20オーム(Ω)の抵抗器と56ピコファラッド(pF)のコンデンサを使用した単極設計で、142MHzの3dBロールオフ周波数を提供します。このローパスフィルタは、アンプおよび帯域外高調波の出力ノイズを減衰します。必要に応じて、2台のADA4897-1シングルアンプの代わりになるのが、Analog Devicesの ADA4897-2ARMZ-RLとして提供されているデュアルアンプバージョンです。

ドライバアンプのレベルシフト: AD7625の公称2.048Vのコモンモード電圧(VCM)では、ユニティゲインバッファ構成でAnalog DevicesのAD8031ARTZ-R2を使用してADA4897-1の出力電圧を設定します。AD8031は、590Ωのシリーズ抵抗器を通じて2.048Vのコモンモードバイアス電圧をADA4897-1アンプの非反転入力に印加します。低出力インピーダンスと過渡電流からの高速セトリングにより、AD8031はコモンモード電圧を駆動するのに最適です。

ADA4897-1はレールツーレール出力アンプです。シングル5V電源で動作する場合、150mV~4.85V間で変動します。範囲の各端で-2~7Vの給電と、追加の2Vのヘッドルームにより、歪みが低くなります。

ADCの基準電圧:Analog DevicesのADR434TRZ-EP-R7ADR444ARZ-REEL7などの4.096ボルト外部基準は、AD8031などのバッファアンプを使用してADCのバッファリングされていないREF入力に接続できます(図2を参照)。この構成は、複数のADCがシステム基準を共有する一般的なマルチチャンネルアプリケーションアプローチです。

ADR434は、低ノイズ、高精度、低温度ドリフトを特長とするXFETリファレンスで、最大30mAのソースと最大20mAのシンクが可能です。AD8031アンプはADR434の出力をAD7625の基準入力から絶縁します。また、このアンプはAD7625の基準入力で過渡電流に高速セトリングと低インピーダンスを提供します。ADA4897-1のオペアンプへの電力供給に使用される7Vのレールは、ADR434のVIN供給ピンにも電力を供給できます。

DXRに対するAD7625の利点:AD7625は、LVDSインターフェースを使用して16ビット(1 LSB)の積分非直線性(INL)性能により6MSPSで92dBの動的な性能を実現します。

回路のAC性能は、2つの異なる電源構成(デュアル電源(図3)およびシングル電源(図4))で高SNRと低THDを示します。

デュアル電源動作でのAnalog DevicesのAD7625およびADA4897-1を示すスコープ画像の図

図3:このスコープ画像は、AD7625およびADA4897-1のデュアル電源動作(+7V、-2V)でのSNR = 88.6dB、THD = −110.7dB、および基本振幅 = フルスケールの−0.6dBを示しています。(画像提供:Analog Devices)

シングル電源動作のAnalog Devices AD7625およびADA4897-1を示すスコープ画像の図

図4:このスコープ画像は、AD7625およびADA4897-1のシングル電源動作(+7V、-2V)でのSNR = 86.7dB、THD = -101.1dB、および基本振幅 = フルスケールの-1.55dBを示しています。(画像提供:Analog Devices)

図3では、入力回路への給電は+7Vおよび−2Vです。この構成では、20kHz、フルスケール信号の93%で、高精度、低ノイズの16ビットデータ収集信号チェーンの高速フーリエ変換(FFT)性能によって、SNRが88.6 dB、THDが−110.7dBになります。

図4では、回路への給電は5Vです。この給電では、SNRは86.7dB、THDは−101.1dBになります。

デュアルADA4897-1ドライバには54mWが必要です。デュアルドライバの電力を135mWのADC電力および12mWの基準バッファ電力に加算すると、合計電力は201mWになります。図3の回路では、ADA4897-1ドライバの入力に+7Vおよび−2Vの電源を使用して、電力消費を最小限に抑え、最適なシステム歪み性能を実現しています。

回路の評価とテスト

AD7625 ADCを評価およびテストするために、Analog Devicesは評価ボードを用意しています。図2に示されている回路をテストするため、2台のADA4897-1オペアンプでオンボードのADA4899-1YRDZ-R7オペアンプを置き換えます。ボードのドキュメントには、詳細な概略図とユーザー向けの手順が記載されています。テストセットアップの機能ブロック図を図5に示します。

AD7624 ADCのテスト回路の図

図5:AD7624 ADC用のテスト回路:2台のADA4897-1で評価ボードのADA4899オペアンプを置き換えます。(画像提供:Analog Devices)

結論

これらの多様な高速データ収集要件を満たすために最適なアプローチは、遅延を最小限に抑える高性能多重化データ収集システムを使用することです。この記事では、SAR-ADCアーキテクチャに基づくシステムの実装ニーズを説明しています。高速サンプリング(6MSPS)のAD7625 ADCを使用すると複数チャンネルを実装できます。このコンバータを高精度のADA4897-1ドライバアンプと組み合わせると、素晴らしいSNRおよびTHD性能が発揮されるため、このデバイスの組み合わせは優れたX線ソリューションにとって望ましいものとして推奨されます。

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著者について

Bonnie Baker

Bonnie BakerはDigi-Key Electronicsの寄稿者です。Burr-Brown、MicrochipおよびTexas Instrumentsは、彼女の過去30年以上にわたるアナログ設計とアナログシステムへの関与を促進しました。Bonnieはアリゾナ大学(アリゾナ州ツーソン)から電気工学の修士号を取得し、北アリゾナ大学(アリゾナ州フラッグスタッフ)から音楽教育学士号を取得しています。Bonnieは、アナログデザインの魅力に加えて、450以上の記事、デザインノート、アプリケーションノートの著述を通じて、知識と経験を共有する機会を得ています。

出版者について

Digi-Keyの北米担当編集者