ヒートシンク: 設計品から放熱させるための段階的ガイド

著者 Aaron Yarnell

ヒートシンクは重要です。BJT、MOSFET、リニアレギュレータなど電子機器の内部から周囲大気へ熱を効果的に伝導させる経路を実現し、回路設計の重要な役割を果たします。

その役割は、発熱する機器の表面積を広げ、それにより熱を周囲へ効率的に伝導できるようにすることです。機器の外部への熱経路を改善することで、部品の接合部における温度の上昇を抑えることができます。

この記事では、ヒートシンクのサプライヤから提供されている仕様とともに、機器のアプリケーションから得られた熱データを図解し、ヒートシンクの選定について詳しくご紹介します。

ヒートシンクは必要か

この記事では便宜上、当該のアプリケーションがTO-220パッケージに格納されたトランジスタであり、電力散逸2.78Wに相当する伝導損失やスイッチング損失が発生すると仮定します。さらに、動作周囲温度は50°Cを超えないものとします。このトランジスタにヒートシンクは必要でしょうか。

ヒートシンクを搭載した標準的なTO-220パッケージの前面図および側面図

図1: ヒートシンクを搭載した標準的なTO-220パッケージの前面図および側面図(画像提供:CUI Inc

まず、この2.78Wが周囲大気へ散逸するのを妨げる、あらゆる熱インピーダンスの特徴をまとめて要約する必要があります。これらが効率的に放散しなければ、TO-220パッケージ内部の接合部温度があらかじめ仮定された動作要件(シリコンの場合、一般的には125°Cとなります)を超えて上昇してしまいます。

一般的に、トランジスタのサプライヤでは接合部から周囲大気までの熱インピーダンスをすべて記録していますが、これは記号「Rθ J-A」で表され、単位「°C/W」で測定されます。この単位は、機器の内部で電力1ワットが散逸するごとに、接合部温度がTO-220パッケージの周囲温度をどれだけ超えて上昇するかを予測するものです。

これをわかりやすくすると、あるトランジスタのサプライヤで、接合部から周囲大気までの熱インピーダンスが62°C/Wであると記録された場合、TO-220パッケージ内部における電力散逸2.78Wによって接合部温度が周囲温度よりも172°C高くなることを表します(2.78W x 62°C/Wとして計算)。この機器の周囲温度が最高50°Cに達することが想定される場合、接合部温度は222°Cとなります(50°C + 172°Cとして計算)。これはシリコンの定格温度125°Cをはるかに上回っているため、トランジスタに永久的な損傷を与える原因となる可能性があります。したがってヒートシンクが必要となることは明らかです。

ヒートシンクをアプリケーションへ接続することで、接合部から周囲大気までの熱インピーダンスを大いに減少させることができます。次のステージでは、安全で信頼性の高い動作を実現するために、熱インピーダンスをどの程度まで低く抑えられる経路が必要となるかを測定します。

熱インピーダンス経路の構築

熱インピーダンス経路を測定するには、まず最大許容温度上昇の値を計算します。機器の最大動作周囲温度が50°Cであり、その内部のシリコン接合部の温度が125°Cを超えてはならないことがわかっている場合、最大許容温度上昇は75°Cとなります(125°C - 50°Cとして計算)。

次のステップは、接合部自体と周囲大気の間に発生する最大許容熱インピーダンスを計算することです。最大許容温度上昇が75°Cとなり、TO-220パッケージ内部で散逸する電力を2.78Wとして測定した場合、最大許容熱インピーダンスは27°C/Wです(75°C ÷ 2.78Wとして計算)。

最後に、シリコン接合部から周囲大気までの熱インピーダンス経路をすべて加算し、その合計が最大許容熱インピーダンス27°C/W(上記のとおり計算)未満であることを確認します。

画像:計算すべき熱インピーダンスのグラフィックイラスト

図2: 標準的なTO-220アプリケーションの内部にある接合部から周囲大気までにおいて計算し、追加すべき熱インピーダンスのグラフィックイラスト(画像提供:CUI, Inc)

図2では、最初に必要とされるインピーダンスは「接合部からケースまで」の熱インピーダンスであり、これは記号「Rθ J-C」で表されることがわかります。これは発熱する接合部から機器(この例ではTO-220)への熱の伝達のしやすさを示しています。一般的に、サプライヤの作成するデータシートには接合部から周囲大気までの熱インピーダンス値とともに、接合部からケースまでの熱インピーダンス値も記載されています。ここでは、想定される接合部からケースまでの熱インピーダンスは定格0.5°C/Wとなります。

次に必要となる熱インピーダンスは記号「Rθ C-S」で表される「ケースからシンクまで」の熱インピーダンスですが、これは機器の外部ケースからヒートシンクへの熱の伝達のしやすさを示しています。これら2つの表面には凹凸が存在する場合があるため、通常はTO-220のケースの表面とヒートシンクベースの間に熱伝導材料(TIM)または「サーマルコンパウンド」を適用し、両者がぴったりと嵌合していることを熱的観点から確認することが推奨されます。TIMの適用によってTO-220の表面からヒートシンクまでの熱伝導を大いに向上させることができます(ただし、それに伴う熱インピーダンスを考慮する必要があります)。

表面同士の嵌合を説明する拡大図

図3: 表面同士の嵌合を説明し、熱伝導材料(TIM)の必要性を示す拡大図(画像提供:CUI Inc)

熱伝導材料(TIM)についての説明

一般的に言えば、TIMは1m °Cあたりのワット数(W/(m °C))、または1mケルビンあたりのワット数(W/(m K))を測定単位とする熱伝導性によって特徴づけられます。この例では温度の上昇や下降を計算する場合、いずれも同じ温度上昇を使用することから、「°C」と「ケルビン」は相互に置き換え可能です。たとえば温度上昇が「45°C」の場合、これは「45K」と同じです。

メートル単位が含まれているのは、TIMのインピーダンスが面積全体(TIMが適用される面積、単位:m2)に対する厚さの割合(TIM厚さ、単位:m)に左右され、1/m(m/m2 = 1/mとして計算)となるためです。この例では、TO-220のケース表面における金属タブの面積に対して層の薄いTIMが適用され、その特性やアプリケーションの詳細は以下のようになっています。

式1

上に挙げた特性を用いると、TIMの熱インピーダンスは以下の式(一貫してメートル単位を使用)で計算することができます。

式2

ヒートシンクの選定

最終的に必要となる熱インピーダンスは記号「Rθ S-A」で表される「シンクから周囲大気」までの熱インピーダンスです。この計算により、ヒートシンクベースから周囲大気への熱の伝達のしやすさがわかります。電子部品メーカーでありヒートシンクのサプライヤであるCUIは図4に示すようなグラフを提供し、ヒートシンクから周囲大気までの熱の伝達のしやすさを、さまざまな気流負荷や条件のもとに説明しています。

一般的なヒートシンクを取り付けた表面の温度が周囲温度を超える様子を示すグラフ

図4: 一般的なヒートシンクを取り付けた表面の温度が周囲温度を超える様子を示すグラフ(画像提供:CUI Inc)

この例では、気流の発生しない自然対流条件下で機器が動作することを想定しています。このグラフは、こうした特定のヒートシンクに対し、シンクから周囲大気までの最終的な熱インピーダンスを計算するのに利用できます。散逸する熱の値で、周囲温度を超えて上昇する表面温度の値を割ると、そうした特定の動作状態における熱インピーダンスが算出されます。ここでは、放散する熱の値が2.78Wであり、周囲温度を超えて上昇する表面温度は53°Cとなります。53°Cを2.78Wで割るとシンクから周囲大気までの熱インピーダンスは19.1°C/Wとなります。

これまでの計算では、接合部から周囲大気までの最大許容熱インピーダンスは27°C/Wでした。接合部からケースまでの熱インピーダンス(0.5°C/W)とケースからシンクまでの熱インピーダンス(0.45°C/W)を減算するとヒートシンクの最大許容熱インピーダンス(26.05°C/W)になります(27°C/W - 0.5°C/W - 0.45°C/Wとして計算)。

先ほどの例のヒートシンクの熱インピーダンス19.1°C/Wは、このように想定された条件の場合、先ほど算出された最大許容熱インピーダンス26.05°C/Wを大きく下回ることになります。これにより、TO-220パッケージ内部のシリコンの接合部温度は許容温度よりも低く、設計品内部に熱マージンがあることがわかります。さらに、すべての熱インピーダンスを合計し、これに接合部で散逸する電力ワット数を乗算し、最後にその結果を以下のように最高周囲温度と加算することで接合部の最高温度を概算することもできます。

式3

ここに示した例では、アプリケーションの熱管理においてヒートシンクがいかに重要であるかが明白になっています。もしヒートシンクを適用しなければ、TO-220パッケージ内部にあるシリコンの接合部温度が、設計品の定格温度限界である125°Cを大幅に超えてしまっていたでしょう。ここで用いられたプロセスは容易に変更や繰り返しが可能であるため、設計者はこれを活かし、さまざまなアプリケーションのサイズに合った適切なヒートシンクを選定することが可能です。

結論

ヒートシンクは電子機器の内部から周囲大気へ熱を効率的に伝導させる経路を実現するため、回路設計において重要な役割を担います。機器の内部で散逸する電力とともに周囲環境の最高温度を特定すれば、最適なヒートシンクを選定することができるため、そのサイズが小さすぎて熱焼損を引き起こしたり、大きすぎてコストを浪費したりすることを避けられます。さらに、2つの表面の間で熱を効率的かつ持続的に伝導させるTIMの重要な役割についても考慮してください。

最後に、アプリケーションの各パラメータ(周囲温度、電力散逸、熱インピーダンス経路)が定義できたら、CUIのボードレベルヒートシンク製品一覧をご覧になり、プロジェクトの冷却要件に最も適したモデルをお選びください。

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著者について

Aaron Yarnell

Article provided by Aaron Yarnell, Field Applications Engineering Manager, CUI.