発振器を選択し、効率的に適用する方法

著者 Art Pini

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

同期デジタルシステムの登場により、目立たなかった発振器が、最新のマイクロプロセッサベースのデジタルシステムに欠かせないものとなりました。その数千もの用途に合わせ、非常に多くの発振源と、多種多様な共振器構造を使用する構成が発展してきました。

しかし、発振器の選択については、多様な共振器、多くの内蔵アンプ、温度安定化スキームの違いから、使い方を十分に理解せずに簡単に決めてしまうことがよくあります。これらはすべて、デバイスのサイズ、精度、安定性、コストだけでなく、設計への適用方法にも影響します。

この記事を参照すると、設計者は発振器の動作と構造に加え、その重要仕様、および設計要件への対応について理解を深めることができます。

出力波形、周波数の精度と安定性、位相ノイズ、ジッタ、負荷と温度差、コストについて調べ、適切な設計にするための発振器の最適な適用方法についても説明していきます。

発振器の基本

発振器は、目的の周波数で周期的な波形を発生させる電気回路です。汎用発振器の機能ブロック図には、アンプ、および周波数選択フィードバックネットワークを使用するフィードバックパスが含まれています(図1)。目的の発振周波数でループゲインがユニティ以上の場合に発振を開始および維持でき、同時にループに関する位相シフトは2Pラジアンの倍数と等しくなります。これは正のフィードバック条件です。

周波数依存のネットワークにはインダクタコンデンサ(LC)ネットワークまたは抵抗コンデンサ(RC)ネットワークを使用できますが、高精度の発振器では共振器を使用するのが一般的です。共振器タイプにはそれぞれ独自の利点と弱点があるため、共振器タイプの選択は、扱わなければならない仕様の1つになっています。

基本の発振器の機能図

図1:正のフィードバック構成でアンプと周波数選択ネットワークまたは共振器で構成される基本の発振器の機能図。(画像提供:Digi-Key Electronics)

一般的に使用される共振器は、水晶振動子、表面弾性波(SAW)フィルタ、またはマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)です。

このような発振器は最初に電源投入するときに、回路の信号のみがノイズになります。発振のゲインと位相状態に対応する周波数でのノイズの要素は回路ループを循環し、回路の正のフィードバックによって振幅が増加していきます。信号の振幅は、アンプの特性または外部の自動ゲイン制御(AGC)ユニットによって制限されるまで増えていきます。発振器出力の波形はこの時点で制御することができ、一般的な波形として正弦波、クリップ正弦波、または論理(「0」または「1」)出力を選択できます。論理出力が選択された場合、論理ファミリ(HCMOS、TTL、ECL、LVDSなど)も選択する必要があります。

正弦波出力は主に、スペクトル純度が重要な通信関連用途でキャリアおよびローカル発振器の信号発生に使用されます。正弦波波形では基本周波数でのみ大きな電力が生じ、調和周波数ではほとんどまたはまったく電力が生じません。

発振器の主要な仕様は、発振器でどの程度その周波数を維持するかを定義する周波数安定性です。関連仕様は、長期(通常は1年)にわたる発振器の周波数のずれを指定する経時変化です。用途の速度が加速すると、発振器の位相の短期変動が重要な問題になってきます。位相のこの短期変動は、発振器の位相ノイズとして表されます。位相ノイズは周波数領域仕様です。同等の時間領域仕様は、位相ジッタまたは時間間隔誤差です。

共振器

基本の発振器におけるフィードバックネットワークは、いくつかある共振構造のいずれかにすることができます。最も一般的な構造は水晶振動子です。水晶振動子共振器では圧電効果が使用されます。水晶全体に印加される小さい電圧で水晶が変形し、水晶に加えられる力によって電荷が生じます。この一連の電気機械のやりとりによって非常に安定した発振器の基礎が形成されます。この結果、水晶のタイプ、水晶がカットされる幾何学的方向とその寸法に関連して、特定の周波数で発振が生じます。

水晶は、水晶共振器の入力と出力を形成する2つの電極間で保持されます。これらの条件下で、水晶は高度選択LC回路のように動作します(図2)。このホルダの水晶は直列RLC回路で表されています。この回路はモデル成分LSおよびCSで占められるその直列共振周波数を表します。並列に接続されているコンデンサは、ホルダおよび関連の配線の静電容量を表します。並列静電容量CPは、直列インダクタンスLSに反応し、並列共振周波数が生じます。動作中、直列共振は共振器の動作の中心となります。水晶基本周波数の範囲はキロヘルツ(kHz)から約200メガヘルツ(MHz)までです。

水晶振動子の等価の回路モデルの図

図2:水晶振動子の等価の回路モデルモデル成分LSおよびCSによって直列共振周波数が決定し、 LS、CS、およびCPで並列共振が決定します。(画像提供:Digi-Key Electronics)

もう1つの一般的な共振器は表面弾性波(SAW)デバイスです(図3)。

インターデジタルトランスデューサを使用するSAWフィルタ/共振器の図

図3:SAWフィルタ/共振器では、圧電基板に取り付けられたインターデジタルトランスデューサを使用して、トランスデューサ間のギャップに表面弾性波を生成し、出力で周波数依存の応答を生成します。(画像提供:Digi-Key Electronics)

SAWフィルタは、弾性基板の表面に沿って伝播される表面弾性波を使用する周波数選択デバイスです。SAWは、図に表示されているように基板上の導電性パスで形成されるインターデジタルトランスデューサ(IDT)を使用して生成および検出されます。SAWフィルタ/共振器は、10MHz~2ギガヘルツ(GHz)の周波数範囲で動作します。周波数は、IDT要素の大きさと基板素材の特性によって異なります。SAWデバイスの回路モデルは、水晶振動子のモデルと似ています。SAW共振器は、小さなパッケージにフォトリソグラフィを使用して低コストで製造することができます。これらの発振器はSAW発振器またはSOと呼ばれます。

この記事で説明する最後の共振器技術は、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)に基づきます。MEMSでは標準の半導体製造プロセスを使用して小型の機械要素を作成します。これらのデバイスのサイズはミクロンからミリメートルまでさまざまです。高周波音叉と同種の共振器は、静電的励起で振動するように設計されています。これらの共振器のダイ構造は、プログラム可能な発振器/コントローラICと結合されます(図4)。

MEMS発振器モジュールの図

図4:MEMS発振器モジュールでは、単一パッケージにMEMS機械構造と発振器/コントローラICが結合されています。(画像提供:SiTime)

発振器/ドライバはMEMS構造を励起し、MEMSデバイスの出力周波数にプログラム可能な係数「N」を掛け合わせるフラクショナルN位相ロックループ(PLL)にその出力を送ります。One-Time Programmable(OTP)メモリには、モジュール設定パラメータが格納されます。温度補償は、PLL内の出力周波数を調整して実現されます。PLLをプログラムして、発振器にデジタル制御の周波数出力を与えることもできます。

MEMS発振器の最大のメリットは、機械の衝撃と振動に対する耐性です。これは、携帯電話、カメラ、時計などのモバイルアプリケーションでは重要な要素です。

発振器の回路タイプ

モジュール式発振器の回路トポロジは何十年にもわたって開発され、現在利用できる技術が多数あります。ほとんどの場合、回路を改良することで、共振器の出力周波数の精度と安定性が向上しています。前の図に示されている例には、非水晶ベースのSAWおよびMEMS発振器が含まれています。水晶発振器に適用されている技術は、どのタイプの発振器にも適用できます。これらの発振器はすべて、15ピコファラッド(pF)負荷静電容量で動作するものと評価されます。負荷静電容量の変動は、動作周波数に影響します。

これらのトポロジの比較は、ベア水晶発振器(XO)を基本にしています(図5)。この例は論理ゲートを使用して実装され、チューニングを許可する可変容量ダイオードを含みます。これらのシンプルな発振器は、およそ20~100ppmで周波数の安定性を示します。

論理インバータを使用して実装される基本の水晶発振器の図

図5:論理インバータを使用して実装される基本の水晶発振器には、水晶振動子と直列の可変容量ダイオード経由での電圧制御の提供が含まれます。(画像提供:Digi-Key Electronics)

AbraconASV-10.000MHZ-LCS-Tは面実装水晶クロック発振器です。この発振器には、HCMOS論理レベルのデジタル出力があります。このタイプの発振器の大きなメリットは低コストであることです。その周波数安定性は±50ppmですが、この発振器ファミリの他のデバイスの安定性仕様は20~100ppmです。周波数ずれの主な原因は温度の変化です。もう1つの原因は、時間の経過に伴う水晶の経時変化または周波数の変化です。経時変化率は基本の安定性に比例します。この発振器の場合、経時変化率は1年あたり±5ppmです。XOは、高い周波数安定性を必要としない汎用用途に対応します。このような用途には、マイクロプロセッサのクロックソースがあります。

温度補償水晶発振器(「TCXO」)では、水晶振動子とアンプの温度関連変化を補償する回路要素が追加されます(図6)。

水晶振動子とアンプの図

図6:水晶振動子とアンプは温度の影響を受けるため、TCXOは温度センサと温度補償ネットワークを追加して周波数ずれを補正します。(画像提供:Digi-Key Electronics)

サーミスタなどの温度センサは補正電圧を生じさせるために使用されます。補正電圧は適切なネットワークを通じて、水晶と直列の電圧可変容量ダイオードに適用されます。これは、水晶振動子容量性負荷を変更して機能します。温度補償で周波数安定性を20倍以上向上させることができます。

AbraconのASTX-H12-10.000MHZ-Tは、HCMOS出力レベルと周波数安定性仕様±2ppmの標準TCXOです。コストは基本のXOのおよそ3倍です。

温度の安定化のもう1つのアプローチは、発振器モジュールを温度制御オーブン内に配置することです(図7)。このトポロジは、恒温槽型水晶発振器(OCXO)と呼ばれます。

発振器の温度を安定させるOCXOの図

図7:  OCXOは、水晶の周波数と温度曲線を比較して傾きがゼロになる温度と一致するよう設定された温度のオーブンに発振器を配置して、発振器の温度を安定させます。(画像提供:Digi-Key Electronics)

水晶発振器は、温度制御オーブンに配置されています。温度の小さな変化によって発振器の周波数ができるだけ変化しないように、オーブンの温度は、水晶の周波数と温度を比較した曲線の傾斜がゼロになる値に設定されます。OCXOでは、発振器の安定性が1000倍向上する可能性があります。このような発振器が必要になるのは、ナビテーションシステムや高速シリアルデータ通信など正確なタイミングを必要とする用途です。

Connor-WinfieldDOC050F-010.0Mは、LVCMOS出力レベルのOCXOです。このOCXOに指定されている周波数安定性は±0.05ppmです。このパフォーマンスの改善には、基本の水晶発振器と比べ、オーブンを使用することによる電力消費量の上昇、サイズの大型化、およびコストの高さ(XOの約30~40倍)が伴います。

前述したMEMS発振器は、デジタル制御発振器(DCXO)の一例です。

SiTimeSIT3907AC-23-18NH-12.000000Xは、論理出力がLVCMOS、周波数安定性が10ppmのMEMSベースのDCXOです。このDCXOには、±25~±1600ppmの「プル」範囲を持つ内部PLLを使用して周波数の変更をプログラムする機能があります。

マイクロコンピュータ制御の水晶発振器(MCXO)は、低電力要件の小型パッケージでOCXOと同等の周波数安定性を備えています。MCXOは、2つのいずれかの方法を使用して出力周波数を安定させます。1つ目は、目的の出力よりも高い周波数でソースの発振器を動作させ、パルス削除を使用して目的の出力周波数を実現する方法です。2つ目は、目的の出力周波数よりも若干低い周波数で内部ソースの発振器を動作させ、内部のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)で生成された補正周波数をソース出力周波数に追加します。

IQD Frequency ProductsLFMCXO064078BULKは、周波数安定性が0.05ppmのHCMOS互換のMCXOです。製品ファミリには、10~50MHzの主要な固定周波数の発振器が含まれます。その物理的体積はわずか88mm3で、3.3ボルトでわずか10ミリアンペア(mA)のみ必要とし、合計電力消費量は33ミリワット(mW)です。

一部のアプリケーションでは、発振器の周波数を調整する必要があります。これは、デジタル制御でも、アナログ制御でも実行できます。アナログ制御は、電圧制御水晶発振器(VCXO)を使用して実現されます。図5には、共振器と直列可変容量ダイオードに電圧を印加し、負荷静電容量を変更してその周波数をシフトすることで発振器を調整する方法を示しています。これは、VCXOの基本原則です。

Integrated Device Technology Inc.XLH53V010.000000Iは、HCMOS出力レベルと±50ppmの周波数安定性を提供するVCXOの例です。VCXOのプル範囲は、制御電圧を変更して実現できる最大周波数オフセットを示しています。この発振器のプル範囲は±50ppmです。公称出力周波数が10MHzの場合、プル範囲は±500Hzです。

共振器のセクションで説明したSAW発振器は、高信頼性で特徴付けられるもう1つの低コスト発振器です。EPSONXG-1000CA 100.0000M-EBL3はSOの一例です。これらのデバイスは、リモート制御のトランスミッタなどの固定周波数用途で使用されます。これらのデバイスは十分な安定性とジッタ仕様を提供しますが、最大のメリットは信頼性です。

発振器と用途の適合

一般的に、正確な時間基準として発振器を使用している用途には、より適切な周波数安定性を備えたデバイスが必要です。同様に、GPS関連の用途は、OCXOまたはMCXOベースの発振器に適合します。衝撃や振動からの隔離が必須の場合、SO発振器はその用途に最適です。高速シリアルインターフェースのクロックには、低タイミングジッタが必要です。コストはどの設計にも含まれる1つの要素で、一般的に提供されている周波数安定性の度合いによって変わります。サイズや電力要件など他の要素は、使用している技術に基づくデバイス依存です。これらの要素には、エンジニアリングのトレードオフが必要になる場合があります。この記事で取り上げた発振器の主要仕様の比較を表1に示します。この表を参考にして、個々の機能やメリットの詳細を確認できます。

タイプ モデル 共振器 周波数(MHz) 周波数安定性(±ppm) 経時変化(±ppm) ジッタ 電力(mW) 体積(mm3
XO Abracon ASVシリーズ 水晶 10 50 5 2.5 33 64
VCXO IDT XLHシリーズ 水晶 10 50 3 1.3 106 24
SO Epson XG-1000CAシリーズ SAW 100 50 5 3 36 49
DCXO SiTIME SIT3907AC-23-18NHシリーズ MEMS 10 50 5 1 62 6.6
TCXO Abracon ASTXシリーズ 水晶 10 2.5 1 1.6 a 13 4.75
MCXO IQD LFMCシリーズ 水晶 12 0.05 1 1.6 a 61 84
OCXO Connor-Winfield DOC050Fシリーズ 水晶 10 0.05 0.3 1 2500/1100 b 1000

注:

  1. 位相ノイズから計算された推定値
  2. 起動/安定状態

表1:各種発振器を比較するために使用する標準パラメータです。各パラメータは設計要件と、設計時のコストや可用性などの他の要素に基づいて選択されています。(表提供:Digi-Key Electronics)

この表の発振器は、周波数安定性に基づいた順序になっています。この記事では特定の出力周波数が使用されていますが、これらの発振器はすべて、モデルシリーズごとに出力周波数の範囲を提供しています。

まとめ

設計者は、発振器の構造と動作を十分に理解すると、用途の要件に最適な発振器を特定する際に非常に役立ちます。設計プロジェクトに使用する発振器の選択には常にエンジニアリングのトレードオフ(コスト、電力、スペース、安定性、精度など)が伴いますが、現在提供されているさまざまな発振器によって、これらのトレードオフは既製品のソリューションで最小限にすることができます。

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著者について

Art Pini

Arthur(Art)PiniはDigi-Key Electronicsの寄稿者です。ニューヨーク市立大学の電気工学学士号、ニューヨーク市立総合大学の電気工学修士号を取得しています。エレクトロニクス分野で50年以上の経験を持ち、Teledyne LeCroy、Summation、Wavetek、およびNicolet Scientificで重要なエンジニアリングとマーケティングの役割を担当してきました。オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、任意波形発生器、デジタイザや、パワーメータなどの測定技術興味があり、豊富な経験を持っています。

出版者について

Digi-Keyの北米担当編集者