リドライバを使用して高スループットUSB 3.0ケーブルの範囲を広げる

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

最新バージョンのUSBでは、ホストと周辺機器が近接している場合、最大2.5ギガバイト/秒の速度を実現できます。USBが長い距離で使用されているアプリケーションの場合、設計者はUSBの規定のデータレートを維持するために信号劣化をオフセットする方法を見つける必要があります。

イコライゼーション、エンファシス、DCゲイン手法を採用することもできますが、設計者はUSBリドライバにより、成功率を高め、市場参入までの時間を短縮できます。これらは、信号劣化に対処する必要のあるすべての電子機器を含む統合型のデバイスです。

この記事では、リドライバの操作を説明した後に、いくつかのデバイス例とそれらを適用する方法を紹介します。

USBは拡張可能だがコストがかかる

USB仕様が作成された当時は、数メートル以内のデバイス間(コンピュータと外付けハードドライブ間など)で確立された接続のみが前提になっていました。USB 3.0の仕様では、信号の整合性を維持するためにケーブルの長さが3メートルに制限されることが規定されています。しかし、そうして成果を挙げてきたUSBテクノロジは、今では実用的な理由からより長いケーブルを使用する必要があるアプリケーションに使用されています。これには、サーバを大型店舗全体に取り付けられているディスプレイパネルに接続する場合などがあります。

残念ながら、長いケーブルをUSBの高速バージョンに共通する高周波数信号と組み合わせると、チャンネル挿入損失、クロストーク、符号間干渉(ISI)、以降のスループットの低下など、信号の整合性の問題が生じます。

USBシステム設計者は、いくつかの手法を使って、信号劣化に対処することができます。たとえば、イコライゼーションとエンファシスを使用してチャンネル挿入損失とISIの影響を制限できます。また、DCゲインを上げると、クロストークによる損失に対処できます。

ただし、信号調整回路を設計するとUSBシステムの複雑さが増し、課題はより困難なものとなります。USBテクノロジで信号の送受信に個別の信号ペアを使用することで、必要な電気回路が倍になるためです。このような場合に、設計者はUSBリドライバを利用できます。

信号劣化の原因

高速USBで生じる信号劣化の問題はテクノロジに固有のものではありません。高速通信リンクを採用するすべての製品の設計者は、この問題を十分に理解しています。また、これらの問題は長いケーブルを使用するUSBの設置に固有のものでもありませんが、短いケーブルでは信号劣化が起こりにくいため、あまり問題になりません。

高速通信システムにおける信号劣化は主に挿入損失、クロストーク、ISIの組み合わせが原因で発生します。

挿入損失はケーブルによって生じる信号電力の減衰が原因です。損失はケーブルの長さに比例します。クロストークは、隣接する信号キャリアの静電、誘導、または導電「結合」で、どちらでも信号の整合性が低下します。ISIは、1つの符号(データを伝送し、キャリアの周波数に従って反復する離散信号)が前の符号に干渉すると発生し、ノイズや歪みが増加します。ISIはキャリア周波数(信号間の時間のギャップは周波数が高いほど減少するため)とケーブル長(SN比(SNR)はケーブルが長いほど減少する)の両方に比例します。ノイズは、信号の中で有用な情報を伝送しない部分です。

高速USBシステムには一定量の決定性ジッタとランダムジッタ(ここでは信号の公称周期性からの小さな偏差と定義される)も含まれます。これらによって、信号の整合性が損なわれる可能性があります。システム通信の周波数が高いほど、ジッタの影響が大きくなります。

信号劣化の解決

高速通信システムにおける一部の信号劣化は避けられませんが、これが問題になるのは、SNRが低すぎて送信されたデータの一部がレシーバでデコードできなくなった場合に限られます。その結果、スループットが犠牲になり、極端な場合は通信エラーになります。

エンジニアは、高速通信システムのスループットを改善するために、SNRを向上させる(または「信号調整」を実装する)次の4つの手法を開発しました。

  • エンファシス/エンファシス解除では、ノイズの影響を最も受けている可能性のある送信周波数を増幅した後、それらのエンファシスをレシーバで解除して元の信号を再構築します。
  • イコライゼーションでは、フィルタリングを使用して、受信した信号が送信された信号の周波数特性と一致しているか確認し、ケーブル全体の長さに沿って平坦な周波数応答を効果的に維持します。
  • DCゲインは、特定の長さのケーブルの線減衰を補償します。
  • 出力スイングコントロールを使って、0.8~1.2ボルトの仕様要件を満たすようにUSB差動電圧を構成できます。

特定の構成用に通信を最適化するには、広範なテストを実施して、特定の動作条件範囲に必要なイコライゼーション、エンファシス、DCゲイン、出力スイングコントロールの量を判断する必要があります。この情報は、運用中に各パラメータを適宜変更して最適な信号を維持するためにも使用できます。ただし、アダプティブ信号調整は、最も重要な通信システムを除き、実用的ではありません。

信号セットアップですべての運用条件が満たされるパッシブ信号調整では、コストを大幅に抑えて妥当な結果を得ることができます。欠点は、常に最適な状態になるわけではないことです。設計者は、設計での使用を目的にテストされた特定の長さのケーブルを提供するか、最大ケーブル長を指定することで、消費者を満足させることができます。

信号調整は、USBホスト(マイクロプロセッサ)からリドライバへのチャンネルとリドライバから周辺機器へのチャンネル(コネクタとケーブル経由)の両方に必要です。通常、各側に異なる信号調整パラメータが必要です。

リドライバの設計

USBリドライバでは、USBチャンネルへの透過的な(データ転送に影響しない)信号調整を簡単かつ比較的低コストに実装できます。Diodes Incorporatedの PI3EQX1001XUAEX(10Gbit/秒、1チャンネルUSB 3.1リニアリドライバ)などの製品は、エンドポイントデバイスで受信される前に高速USB信号を元の状態に戻します(図1)。

Diodes IncorporatedのPI3EQX1001XUAEX USBリドライバの画像

図1:Diodes IncorporatedのPI3EQX1001XUAEXなどのUSBリドライバは長いケーブルで信号の整合性を簡単に復元できます。(画像提供:Diodes Incorporated)

リドライバが幅広い構成パラメータに対応するため、チップは可能な限りコネクタに近いホストUSBのプリント基板に取り付けるか、あるいはケーブルの遠端にある、周辺機器またはエンドポイントデバイスのコネクタ近く(図1を参照)に取り付けることができます。ただし、ほとんどのアプリケーションではリドライバをケーブルのホストUSB側で使用します。

基板トレースは、高速信号設計のベストプラクティスガイドラインに合わせて設計する必要があります。たとえばトレースは、適合し制御されたインピーダンスの差動ペアであることが必要です。配線ではビアおよび鋭い曲げの使用は避け(135˚以上を維持)、トレースは、インピーダンス不連続を避けるため切れ目や割れ目のない堅牢な接地平面を基準とする必要があります(図2)。

USBホストをリドライバとコネクタに接続しているトレースの図

図2:USBホストをリドライバとコネクタに接続しているトレースは高速信号設計のベストプラクティスを採用する必要があります。たとえば、干渉を制限するため曲げは1350に制限されます。(画像提供:Texas Instruments)

プリント基板と部品を組み立てたら、開発者は特定のチャンネルに固有の特性に合わせて信号調整パラメータを構成できます。

現在利用されている製品の例として、NXP SemiconductorsのPTN36043BXY USB 3.0リドライバがあります。このチップは、統合型USB 3.0リドライバを備えるコンパクト、低電力、2つの差動チャンネルを特徴とする2対1アクティブスイッチです。このスイッチは2つの差動信号を2つの場所のいずれかに送信でき、クロストークを最小限に抑える設計になっています(図3)。

NXP SemiconductorsのUSB 3.0リドライバの図

図3:NXP SemiconductorsのUSB 3.0リドライバには、エンファシス、イコライゼーション、DCゲイン、出力スイングコントロールが備わっています。ケーブルの特性が方向ごとに異なるため、送信回線と受信回線には個別のコントロールが必要です。このリドライバはUSB Type-Cコネクタとともに使用することを前提に設計されているため、コネクタ側にデュアル送信および受信ツイストペアが装備されています。(画像提供:NXP Semiconductors)

NXP USB 3.0リドライバを使って、開発者は各チャンネル(USBホストからリドライバおよびリドライバから周辺機器)のエンファシス/エンファシス解除、イコライゼーション、出力スイングを調整できます。また、このデバイスではDCゲインを上げてケーブル減衰を補償できます。

各チャンネルは2本の制御ピンに接続され、設計者は特定のセットアップの信号調整パラメータを選択できます。開発者は各チャンネルのTX/RX回線に対して信号調整の9つの組み合わせの中から選択できます(表)。

CH1_SET1 CH1_SET2 RX_AP_±エンファシス解除 RX_AP_±出力スイング TX_AP_±イコライザ
LOW LOW -3.9dB 1100mV 3.0dB
OPEN -3.5dB 900mV 3.0dB
HIGH 0dB 1100mV 3.0dB
OPEN LOW 0dB 900mV 3.0dB
OPEN -3.9dB 1100mV 0dB
HIGH -3.5dB 900mV 0dB
HIGH LOW 0dB 1100mV 0dB
OPEN 0dB 900mV 0dB
HIGH -5.3dB 1100mV 6.0dB

表:開発者は、NXPリドライバを使用している場合、USBホストからリドライバへのチャンネルのTX/RX回線に対して9つの信号調整パラメータの中からパラメータを選択できます。リドライバから周辺機器へのチャンネルでも同様のオプションがあります。(表提供:NXP Semiconductors)

リドライバ設計の評価

エンファシス、イコライゼーション、DCゲイン、出力スイングコントロールの最適な選択を決定するには、特定の範囲の動作条件に対するプロトタイプを評価する必要があります。評価キットを利用することで、設計者のタスクが簡素化されます。

たとえば、Texas Instrumentsでは、USB-REDRIVER-EVM USB 3.0リドライバ評価モジュール(EVM)を提供しています(図4)。このモジュールは、Texas InstrumentsのTUSB501DRFR USB 3.0、3.3ボルトのシングルチャンネルリドライバに基づいています。

Texas InstrumentsのUSB 3.0リドライバ評価モジュールの画像

図4:TIのUSB 3.0リドライバ評価モジュールを使用して開発者はさまざまな構成を試し、設計の信号整合性を最適化できます。(画像提供:Texas Instruments)

USBシステムがアクティブな場合、TUSB501はTXペアに対してレシーバ検出を定期的に実行します。SuperSpeed USBレシーバが検出されると、RXターミネーションが有効になり、TUSB501はリドライブできるようになります。

チップには、ピンの「EQ」で制御される3つのゲイン設定(3、6、および9dB)を持つレシーバイエコライザが装備されています。チップは、ピン「DE」と「OS」でエンファシス解除と出力スイングもサポートします。エンファシス解除値は、出力スイングの選択によって異なります。「low」に設定した出力スイングでは、エンファシス解除を0~-6.2dBに設定できます。「high」に設定した場合、EMは-2.6~-8.3dBのエンファシス解除をサポートします。

EVMはUSBドングルとして提供され、TUSB501リドライバの2つ(および3つ目のUSB 2.0リドライバ)を格納します。ドングルはUSBホストVBUSピンから給電され、電源電圧をダウンストリームポートに渡して周辺機器に電力を供給します。

EMのTUSB501リドライバの1つがホストのTX回線に対応し、もう一方のリドライバがRX回線に対応します。デフォルトのイコライゼーションおよびエンファシス解除値は、長さが3~5mのケーブルおよび関連付けられた20~25cmの基板トレースを使用して、USB 3.0システムで送受信を行うために通常検出される値に設定されます。DCゲインは、適切な抵抗器を選択して実装されます。

EVMを使って、開発者は、リドライバの構成パラメータの変更が、高速USBシステムのTXとRXのペアの信号整合性に与える影響をテストできます。EVMは、目的のアプリケーションに応じて変更できるリファレンス設計としても使用できます。EVMには、USB Type-Aプラグとレセプタクルが装備されています。

USBリドライバ接続によるシステムのテスト

物理システムをテストする場合、リドライバはUSB信号を変更し、システムジッタに独自の影響を及ぼす点に注意することが重要です。このジッタを測定して、信号調整セットアップに与える影響をチェックする必要があります。

TIでは、3mのケーブル付きテストシステムと24インチトレース付きホストUSBプリント基板を使用し、リドライバをコネクタから4インチの位置に配置することを推奨しています。ケーブルの遠端では、周辺機器が1~6インチのトレース付きプリント基板で表されます(図5)。

Texas Instruments TUSB501リドライバを使用した高速USBのジッタテストのセットアップ図

図5:TUSB501リドライバを使用した高速USBのジッタテストのセットアップ。セットアップでは、3mのケーブルを使用して周辺機器のフラッシュドライブに接続されているPCなどのアプリケーションを再現します。(画像提供:Texas Instruments)

最適な設計ではジッタがゼロになり、ハイからロー/ローからハイへの遷移直後にエンファシス解除などの補償が完全に適用されます。これは実用的でないため、TIでは遷移の200ピコ秒(ps)内に完全な補償が適用されるようジッタを制限する設計を推奨しています(図6)。

リドライバを使用する高速USBシステムのジッタのグラフ

図6:リドライバを使用する高速USBシステムのジッタは、信号遷移の200ps内に完全な補償が適用されるよう制限される必要があります。(画像提供:Texas Instruments)

結論

USB 3.0は当初、最大長2mのケーブルを想定して作成されましたが、現在の多くのアプリケーションではさらに長いケーブルが使用されています。このテクノロジの高周波数信号により、ケーブルを3mを超える長さまで延長すると、信号整合性の問題が生じ、スループットに影響する可能性があります。安価でコンパクトなUSB 3.0リドライバは、開発者がイコライゼーション、エンファシス、DCゲインを追加して高速USB信号を向上させることができる比較的シンプルなソリューションを提供します。

説明したように、シリコンベンダは、提案されたアプリケーションでターゲットデバイスを簡単に試すことができる、リドライバに基づく既製のEVMを提供しています。データシートには、EVMを最終製品のリファレンス設計として使用できるコンポーネントとプリント基板レイアウト情報が記載されています。

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