電流測定の基礎:第1部 – 電流センス抵抗器

著者 Steve Leibson氏

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

編集者メモ:この2部構成シリーズでは、電流検出において軽視されがちな細かい点を確認します。第1部(本ページ)では、電流センス抵抗器の全般的なセットアップ、選択、実装について説明します。第2部では、重要なアナログフロントエンド(AFE)や計測器のアンプなど、関連する回路について説明します。

電流測定の基本:

電流は電気システムの動作の有効性を評価、制御、診断するために使用される、最も利用されるパラメータの1つです。あまりにも一般的な測定であるため、設計者が正確な電流測定の細かい点を軽視してしまうと、問題が発生することがあります。

電流の検出に使用される最も一般的なセンシング素子は、電流パスに配置される低い値の精密抵抗器です。通常、この抵抗器はシャントと呼ばれ、流れる電流に比例して電圧が発生します。シャント抵抗器は電流に大きく影響してはならないため、非常に小さいことが多く、ミリオーム(mΩ)またはミリオームよりも小さい場合もあります。結果として、シャント抵抗器で発生する電圧も非常に小さく、ADCによって変換される前に増幅が必要なことがあります。

そのため、電流監視の一般的な信号チェーンの構成には、シャント抵抗器で発生する電圧を増幅させるためのアナログフロントエンド、増幅した電圧をデジタル表現に変換するためのADC、およびシステムコントローラが含まれます(図1)。

電流シャント抵抗器の図

図1:電流を測定する最も簡単な方法は、電流シャント抵抗器(左端)を使用することであり、ここでは流れる電流に比例した電圧が発生します。AFEはADCの測定範囲全域を使用するよう、シャント抵抗器の低い電圧を増幅します。(画像提供:Texas Instruments

AFEは通常、オペアンプまたは専用の電流センスアンプとともに実装され、シャント抵抗器で発生した小さな差動電圧を、ADCのより広い測定範囲を使用する大きな出力電圧に変換します。ADCはスタンドアロンのデバイスまたはマイクロコントローラまたはシステムオンチップ(SoC)内のオンチップブロックのいずれかであり、電圧信号をデジタル化し、その結果として生成される情報をコントロールプロセッサに提供します。システムコントローラはデジタル化された電流の測定値を使用して、システムパフォーマンスを最適化したり、電流が事前設定された制限を超過した場合にシステムへの損傷を防止する安全プロトコルを実行します。

電流の電圧への変換に使用されるチェーンのセンサコンポーネントと同様に、抵抗器の物理特性(抵抗、公差、電力容量、熱係数、熱EMF)はすべて精度に影響します。したがって、適切なシャント抵抗器を選択することは、電流測定の最適化にとって重要です。

シャント抵抗値、およびシャント抵抗器でそれに対応して発生した電圧は、システムを変動させます。たとえば、抵抗が大きすぎるシャント抵抗器は、負荷の駆動に使用できる電圧を減少させ、不要な損失を発生させることがあります。

たとえば、モータの巻線に供給される電流を測定する場合に、電圧が減少するとモータが使用できる電力が減少し、効率やトルクに影響を与えます。さらに、シャント抵抗器に大きな電流(数十ないし数百アンペア)が流れると、抵抗器が相当の電力を廃熱として消費し、測定精度が低下するとともに効率も下がります。これらの理由により、シャント抵抗値はできるだけ小さくする必要があります。

電流測定用のシャント抵抗器の選択

シャント抵抗器が流れる負荷電流の結果として電力を消費するという事実により、抵抗値は非常に小さいものでなければなりません。さらに、測定を安定させるために、電流センス抵抗器の抵抗温度係数(TCR)もまた非常に低いものでなければなりません。TCRが低いと、測定精度が高く、温度依存性も低くなります。

電流センス抵抗器の熱EMFは、もう1つの重要な特性です。電流シャント抵抗器は、広範囲の電流に対して動作する必要があります。たとえばスリープモードやスタンバイモード中のバッテリアプリケーションのように電流が低い場合、シャントの熱EMFが、抵抗器を流れる電流により生成される電圧に、無視できない誤差電圧を加えます。この誤差電圧は、測定誤差を最小限に抑えるよう、シャント抵抗器を流れる対象の電流によって生成されることが想定される最小電圧よりもはるかに小さくする必要があります。

電流検出アプリケーションのシャント抵抗器は、2端子のものと4端子のものが入手可能です。2端子のシャント抵抗器は、2端子の抵抗器と同じように動作するため、最も理解しやすいです。2端子のシャント抵抗器に電流を流すと、端子間で電圧が発生し、その電圧は流れる電流に比例します。

2端子のシャント抵抗器の例として、Bourns CSS2シャント抵抗器シリーズやVishay WSLPシャント抵抗器シリーズがあります。Bourns CSS2シリーズには、電力定格が2~15ワット、抵抗が0.2~5mΩ、最大電流定格が140~273アンペアのシャント抵抗器があります。このシリーズの標準的なデバイスであるCSS2H-2512R-L500Fは、2512表面実装パッケージ、抵抗0.5mΩ、電力定格6ワットで提供されます。

VishayのWSLPシャント抵抗器ファミリには、フットプリントサイズが0603~2512、電力定格0.4~3ワット、抵抗0.5mΩ~0.1Ω、抵抗公差0.5または1%のいくつかの表面実装パッケージのデバイスが含まれます。標準的なVishay電流シャント抵抗器はWSLP1206R0150FEAで、1206パッケージ、抵抗15mΩ、1%の公差、電力定格1ワットで提供されます。

これらの表面実装テクノロジー(SMT)の電流シャント抵抗器は小さく、必要とする基板スペースが非常に小さいですが、大量の熱を放散することがあるため、熱感度の高いコンポーネントから十分離す必要があります。

1つのシャント抵抗器に3つの抵抗

外観とは異なり、電流シャント抵抗器は見た目ほど単純ではありません。特にシャント抵抗器の抵抗は、3つの抵抗から構成されます(図2)。まずシャント抵抗器自体の抵抗があります。次に、シャント抵抗器のリード、およびシャント抵抗器に接続されたプリント回路基板のリードの抵抗があります。通常、これらのリードの抵抗は有意なものではありませんが、電流シャント抵抗器は通常、値がとても低いです。高い電流を測定する場合、小さなリードの抵抗であっても、シャント抵抗器のメーカーの抵抗仕様に含まれていないため、測定誤差の誘因となります。

2端子の電流シャント抵抗器に3つの連なった抵抗があることを示す図

図2:2端子の電流シャント抵抗器には3つの連なった抵抗があります:実際のシャント抵抗器の抵抗、抵抗器の2つのリードの抵抗、および抵抗器に接続するPC基板のリードまたはトレースの抵抗(図示なし)。リードの抵抗は、高電流の測定で測定誤差の原因となる可能性があります。(画像提供:Bourns)

外部のリードの抵抗によって発生する測定誤差を回避する1つの方法として、2端子のシャント抵抗器に別個のセンストレースを実行してケルビン接続を形成する方法があります(図3)。

2端子の電流検出抵抗器へのケルビン接続の図

図3:2端子の電流検出抵抗器へのケルビン接続により、抵抗器と回路基板のリードの抵抗によって発生する測定誤差が減少します。2端子の電流シャント抵抗器のサンプル画像を右に示します。(画像提供:Bourns)

この構成では、大きい回路基板のトレースで電流シャント抵抗器に電流の入出力があります。メインの電流ではなく、シャント抵抗器の抵抗素子のできる限り近くに置いた、より小さなトレースが、シャント抵抗器の電圧を測定し、その電圧をAFEに伝送します。端子のある電流と検出端子を分離することで、ケルビン接続を定義します。

2端子のシャント抵抗器を使用してケルビン接続した結果の回路図を図4に示します。

2端子のシャント抵抗器へのケルビン接続の図

図4:2端子のシャント抵抗器にケルビン接続を使用することで、電圧検出ラインをメインの電流から分離し、その結果としてシャント抵抗器でより正確な電圧が測定されます。(画像提供:Bourns)

図4で示した2つのセンス抵抗にはごく微量の電流しか流れません。これは、これらの抵抗がアンプまたはADCのいずれかの高インピーダンスの入力に接続しているためであり、これにより、ここでの抵抗は、シャント抵抗器で高電流の入出力が発生するリードの抵抗値と比較して、はるかに低い影響度となっています。したがって、センス抵抗で低下する電圧は非常に小さく、電流測定の誤差の有意な原因ではなくなります。

2端子と4端子

図3のPC基板のレイアウト図でわかるように、ケルビン接続を使用しても、2端子のシャント抵抗器のリード抵抗を完全に取り除くことはできません。シャント抵抗器を回路基板に置いてはんだ付けしたときの位置誤差に対応できるように、パッドのレイアウトに許容範囲が必要です。

また、PC基板の銅のトレースのTCR(3900ppm/ ̊C)は、シャント抵抗器の抵抗素子のTCR(50ppm/ ̊C未満が多い)よりもはるかに高いです。 これらのパラメータの違いにより、回路基板のトレースの抵抗の変化が、電流センス抵抗器の変化よりもはるかに大きく、それにより検出回路の温度依存が高くなります。

ケルビン接続で2端子のシャント抵抗器を使用する場合、非常に高い電流が流れる電流検出アプリケーションの多くで、精度のレベルが適切でない可能性があります。そのようなアプリケーションでは、メーカーが抵抗器内にケルビン接続を実装した4端子のシャント抵抗器を提供しています。それを取り入れることで、メーカーがケルビン接続に関連するすべての公差と温度係数を完全に制御できます(図5)。

高精度のケルビン接続を実装する4端子のシャント抵抗器の図

図5:4端子のシャント抵抗器は、センス接続がシャント抵抗器の非常に近い場所に置かれ、高精度のケルビン接続を実装しています。4端子の電流シャント抵抗器のサンプル画像を右に示します。(画像提供:Bourns)

ケルビン接続を使用した4端子の電流センス抵抗器は、抵抗器を流れる高電流の端子と電圧測定の端子とを分離することで、測定精度を向上させています。さらに、ケルビン接続を内蔵した4端子のシャント抵抗器を使用することで、回路基板のレイアウトを使用したケルビン接続を実装する2端子のシャント抵抗器と比較すると、温度の安定性が改善され、TCRの影響が軽減されます。

Bournsは表面実装デバイスのCSS4シリーズで、4端子のシャント抵抗器を複数提供しています(図6)。

BournsのCSS4表面実装のシャント抵抗器の図

図6:BournsのCSS4表面実装シャント抵抗器は、4端子のケルビン接続を使用して、電流測定の精度を最大限に向上させます。(画像提供:Bourns)

Bourns CSS4シリーズの代表的な製品には、1%、5ワット、0.5mΩのCSS4J-4026R-L500Fと、1%、4ワット、2mΩのCSS4J-4026K-2L00Fシャント抵抗器があります。これらのデバイスはどちらも、低いTCR、低い熱EMF、および10mm x 7mmよりも小さい物理的フットプリントを備えています。

結論

電流測定の最初のステップは、電流をより測定しやすい電圧のパラメータに変換することです。電流シャント抵抗器は、この作業を実現する手頃な価格のコンポーネントです。ただし、ここで説明したように、シャント抵抗器の値を小さいものにして、回路への影響を最小限に抑え、抵抗器自体での電力損失を最小限にする必要があります。

電流シャント抵抗器でもう1つ重要なパラメータにTCRと熱EMFがあり、どちらも電流測定の精度に大きな影響を与えることがあります。

最後に、測定精度を最大限に高めるために、2端子の電流センス抵抗器でケルビン接続を形成する特別なプリント回路のレイアウトを使用するか、4端子の電流センス抵抗器を使用することにより、電流センス抵抗器を流れる高電流を検出パスから分離することが非常に重要です。

抵抗値が低いということは、電流センス抵抗器で発生する電圧も小さいということを意味するため、この記事シリーズの第2部では、低い電圧を大きい電圧に増幅するAFEを設計し、ADCによってさらに簡単に測定できるようにするための考慮事項について説明します。

リファレンス:

  1. Pini, A. (2018)。電力管理向上のための効果的な電流センスアンプの選択と適用Digi-Keyの記事ライブラリ

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著者について

Steve Leibson氏

Steve Leibson氏は、HPとCadnetixでシステムエンジニアを務め、EDNとMicroprocessor Reportで編集長として活躍し、XilinxとCadenceなどの企業では技術ブロガーを担当しました。また、同氏は、「The Next Wave with Leonard Nimoy」の2つのエピソードで技術専門家を務めました。同氏は、33年間にわたって、高速でかつ信頼性の高い優れたシステムを設計技術者が開発することを支援しています。

出版者について

Digi-Keyの北米担当編集者