5G LNAの特殊プロセスを最大限活用

著者 Bill Schweber氏

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

5Gワイヤレスネットワークの開発が進むにつれ、低ノイズアンプ(LNA)にとっては特に、RFレシーバ信号パスにおける無線フロントエンドの性能がますます重要視されています。シリコンゲルマニウム(SiGe)、ガリウムヒ素(GaAs)、およびシリコンオンインシュレータ(SOI)など、LNAの新しいプロセス技術の出現に伴い、設計者はこれらの技術を効果的に使用するために、ノイズ、感度、帯域幅、および電力といったLNAパラメータで性能のトレードオフを再評価する必要があります。

フロントエンドは弱信号の状況や取得可能なビットエラー率について最終的なシステム性能を主に決定するため、非常に重要です。LNAの性能が不十分だと、5G性能を満たす回路や受信チャンネル管理での残りの設計作業がほとんど役に立たなくなります。

この記事では、5Gの状態およびLNAの性能に適用される要件について説明します。また、これらの要件を満たす上で役立つ最新プロセスを使用するソリューションと、それらを最大限活用する方法について紹介します。

5Gの現状について(310文字以内)

難しい注文ですが、次のようにまとめることができます。5Gの仕様は最終決定したものの、まだ開発途中です。5Gの有望な各種機能は最終決定前であり、多くの打ち合わせや実施試験が保留になっており、部品のベンダーやワイヤレスキャリアなどからの情報が必要です。

ただし、いくつかの課題は既に解決しています。一部の初期実装は継続して6ギガヘルツ(GHz)以下を使用しますが、5Gの設計では電磁スペクトルの新しいブロックを使用します。ほとんどの5Gシステムはミリ波帯域で動作します。米国では27~28GHz帯と37~40GHz帯を使用でき、50GHzを超える仮割り当てを使用できる場合もあります。技術的な課題により、最初に実装するミリ波帯域は27~28GHz帯になります。

LNAに固有の役割

5Gの仕様では、変調、電力、データレートやその他の機能など、さまざまなオプションを使用できますが、一般的に、これらのほとんどが受信チャンネルのLNAをほとんど考慮していません。この部品は、追加されるノイズをできるだけ少なくしながら、ノイズで破損した弱い信号をアンテナからキャプチャして増幅するという、1つの作業を適切に行う必要があります。したがって、進化し続ける大まかな仕様の問題を過度に気にせず、LNAそのものを詳細に調べることは大切です。

指定した帯域での許容動作に対するLNAの主な仕様は、LNAによって追加される固有ノイズの量であるノイズ指数(NF)です。5Gの場合、28GHzに対応する場合は特に、通常はNFを1~3dBの間にする必要があります。ただし、状況によっては、これより高いdBが1つか2つ許容される場合もあります(より一般的ないくつかのノイズ指数の詳細については、「ノイズ指数は理解しているが、ノイズはどのように温度を取得したのか?」を参照)。一般的には、受信信号がそれ以降のアンプ、フィルタ、およびデジタル化で適切に処理される範囲に昇圧されるように、ゲインを15~20dBの範囲にする必要があります。

最後に、出力の1dB圧縮(OP1またはP1dBと呼ばれる)と出力の第3次インターセプト(OIP3)の線形性に関連する指数は、少なくともそれぞれ-20および-35dBmにする必要があります。 これらの要件は、5Gの低帯域において、OP1で-20dBmの範囲、OIP3で-10~-15dBmに軽減されます。負の値が大きいほど優れた性能を示しますが(-25dBmは-20dBmより優れている)、多くのデータシートで負の記号が省略されており、混乱が生じている場合があります。

これらは機能的にただ「シンプルな」アンプなので、LNAにはとても基本的なブロック図(通常、アンプを示す三角形のみ)が使用され、必要なのはパッケージリード(通常、6~8個)のみです。このように単純化できることからパッケージは小さく、各辺は1~2ミリほどであり、多くはさらに小さくなります。

新しいプロセスによる5G対応LNAの進化

複数のGHz(2.4GHzや5GHzなど)の低周波数に合わせて調整された高性能LNAは数多くありますが、5Gフロントエンドの厳しい要件には対応していません。シリコンベースのLNAは性能限界に達しているようなので、要求の厳しい5G性能仕様の組み合わせに対応するために新しい半導体材料およびプロセスが使用されます。既存のワイヤレス規格に比べて送受信信号レベルが低いため、5Gの低帯域でも、標準シリコンには十分に低いノイズ指数や5Gに適したOP1/OIP3定格がありません。

これらの理由から、ベンダーは高電子移動、小さい形状、低リークを提供するSiGe、SOI、およびガリウムヒ素(GaAs)材料をベースとした新しいプロセスの研究開発と大量生産に多額の投資をしています。

たとえば、SiGeプロセスを使用するInfineon TechnologiesBGA8U1BN6 LNAは、OP1が18~22dBm、OIP3が10~15dBmで、わずか1.6dBのノイズ指数になります。これは、4~6GHzで動作し、ゲインは13.7dBです。

また、BGA8U1BN6には、直接バイパスモードに切り替え、7.5dBの挿入損失で入力信号を簡単に出力に渡すことができる省電力機能が用意されています(図1)。この機能は、それ以降のステージで過負荷を防ぎ、2.8V電源でLNAの供給電流を約20ミリアンペア(mA)から約100マイクロアンペア(µA)まで大きく節減するため、受信信号の強度が高い場合に有用です。

Infineon TechnologiesのSiGe BGA8U1BN6 LNAの図

図1:Infineon TechnologiesのSiGe BGA8U1BN6 LNAには信号パスからLNAを取得するバイパスモードが含まれています。このモードはゲインを低減し、それ以降のステージで過負荷と飽和を防止して、同時に電流要件も引き下げます。(画像提供:Infineon Technologies)

バイパスモードはSkyworks SolutionsSKY65806-636LF(3400~3800MHzのSOI LNA)でも利用可能です。ゲインは13.6dBでのInfineonのデバイスと似ていますが、ノイズ指数は1.2dBのみです。電源電圧範囲は1.6~3.3V、動作電流はわずか3.85mAです。InfineonのLNAと同様に、この50Ω LNAにはユーザーが制御するバイパス機能も含まれています。

Analog DevicesADL5724 LNAも12.7~15.4GHz動作のSiGeプロセスを使用します(図2)。その100Ωの平衡差動出力は差動ダウンコンバータやA/Dコンバータの駆動に適しています。標準的なゲインは23.7dBを超えますが、通常のノイズ指数は2.1dB(12.7GHz)および2.4dB(15.4GHz)です。

Analog DevicesのSiGe ADL5724の図

図2:Analog DevicesのSiGe ADL5724では平衡差動出力が提供され、信号チェーンの次の段階との拡張された信号の完全性がサポートされます。(画像提供:Analog Devices)

多くのLNAは通常、安定した温度環境に展開されないため、ADL5724データシートには重要な性能係数と温度のグラフが含まれています(図3)。

(a)ゲインと(b)ノイズ指数で示す温度グラフ

図3:LNAの性能は、これらのグラフに示す周波数に対する(a)ゲインと(b)ノイズ指数の温度(-40⁰C、+25⁰C、および+85⁰C)に依存します。温度上昇に伴いノイズ指数が上昇するとゲインが減少する様子がわかります。(画像提供:Analog Devices)

ADL5724の場合、ノイズ指数が上昇すると温度と共にゲインが若干減少します。この性能はプロセスに関係なくLNAに一般的です。設計者は信号チェーン性能のワーストケースモデリングとシミュレーションにおいて、これらのシフトを考慮する必要があります。

高ダイナミックレンジで低ノイズの場合、MACOM Technology Solutions Holdings(MACOM)のMAAL-011078は、高ダイナミックレンジ、GaAs、わずか0.5dB(2.6GHzの場合)の超低ノイズ指数で単一段のLNAを提供します。また、22dBゲインと33dBm(OIP3)および17.5dBm(P1dB)の高い線形性も提供されます。ICは700MHz~6GHzをカバーし、統合型アクティブバイアス回路という追加機能を含んでいるため、ユーザーは外部抵抗器を介してバイアス(動作点)電流を設定できます。このため、ユーザーは用途に合わせて電力消費を調整できます。たとえば、低動作電流には少し低減された性能を選択します(図4)。

MACOMのMAAL-011078の図を使用してLNAバイアス電流を設定可能

図4:MACOMのMAAL-011078により、外部抵抗器を介してLNAバイアス電流と動作点を設定して、周波数に対するOIP3(左側)での変更の低動作電流と、低減されたP1dBの性能(右側)をトレードできます。(画像提供:MACOM)

5G LNAを最大限活用

5Gに適切なLNAを選択した後は、そのLNAを最大活用するために、5Gフロントエンド設計の実装に必要ないくつかの考慮事項と調整事項があります。動作周波数が5GHz、10GHzを超えると、LNAそのものの他に考慮すべき主要ファクタが5つあります。

1:プリント基板材の選定 - ギガヘルツの範囲において、LNAの入出力での伝送路損失は主要ファクタです。この損失により取得可能な最大SN比が低下し、LNAの出力ノイズにも追加されるため、これは入力側に特に影響します。ほとんどの設計の伝送路はプリント基板自体でストリップラインとして組み立てられるため、基板は低誘電損失材料で製造する必要があります。

ユビキタスなFR4プリント基板ラミネートだけでは不十分なので、ベンダーはさまざまな代替材料とラミネート材を提供しています。広く使用されている1つの基板はFR4コアに配置された特殊ラミネートを使用し、伝送路に安定した損失係数を提供しますが、FR4の基になっている強度を補強材として使用します。

これらの周波数では、その他すべてのパッシブにある寄生と共に、プリント基板を回路設計における別の受動「部品」として考える必要があることに注意してください。さらに、基板の主要特性である温度係数やその寄生などの微細な点も考慮する必要があります。高性能プリント基板材料のベンダーはこのデータを提供しています。

2:コンデンサの選定 – 高Qコンデンサを入力整合回路と出力整合回路で使用し、LNAに送受信される低ノイズ指数を維持する必要があります。低Q部品を使用すると、0.2dBから完全なdBまでの間でノイズ指数を低下します。広く使用されるNPOコンデンサは低Qであり、損失が多いため、回避する必要があります。最高Qコンデンサは磁器ベースですが、これらは高価です。性能とコスト分析に応じて、妥協点を見つけることができます。

3:電源のバイパス - 広く知られていても見落とされることが多いため、注意が必要です。ICなどでDC電源を慎重かつ徹底してバイパスすることは、安定した一貫性のある高周波数性能に不可欠です。デカップリング性能を最大化するのに必要な周波数でインピーダンスが最小となるバイパスコンデンサを選択する必要があります。

たとえば、1000ピコファラッド(pF)コンデンサは高周波数デカップリングの選択肢として適していません。5GHzでは、1000pFコンデンサの自己共振周波数によってインダクタのように見えてしまうため、デカップリングにとって実際に逆効果となる可能性があります。代わりに小さい値(通常10pF未満)のコンデンサをLNAの近くに配置する必要があります。また、1000pFと0.01µFのコンデンサを並列で組み合わせて使用し、設計に従来の低周波数デカップリングを含める必要があります。これらはLNAの近くに配置する必要はありません。

4:入出力の一致 - 多くのLNAでは入出力のインピーダンスが50Ωですが、一部のLNAでは異なります。一致する場合でも、LNAを駆動する回路とLNAの出力が駆動する回路は50Ωでない可能性があります。このため、適切な一致オプションを確立するために使用するスミスチャートとSパラメータで整合回路を作成する必要があります。繰り返しますが、反応性の受動部品(インダクタとコンデンサ)を5Gの周波数で使用する場合、(内部、近傍の部品に対して、プリント基板に対して)避けられないさまざまな種類の寄生があります。

設計者は、これらの周波数で低寄生となるように設計された整合部品を選択し、避けられない寄生が部品レイアウトの観点から完全に特徴付けられることを確認し、整合回路のモデリングと結果としての公称値の調整においてこれらの値を使用するという、3つの作業を行う必要があります。

5:ケーブル相互接続 - 一部の5Gの実装にはプリント基板とそのストリップラインの伝送路を超える相互接続が必要であり、代わりに物理ケーブルが必要です。回路の平衡を保ち、ノイズの影響を少なくする場合によく行われるように、差動インターフェースを使用する場合、これらのケーブル相互接続に、理想的には同一の伝搬特性を持つスキューマッチペアケーブルが必要になる場合があります。

このため、40GHz以上に達する5Gの周波数の高性能ケーブルには、1ピコ秒に一致する遅延がよく発生します。2本の物理ケーブルを個別に設置または交換することはできないため、これらはペアで販売・使用されて、常に対になるような「拘束バンド」が含まれます。これらのケーブルを使用することで、信号チェーンの次の段階が促進されるため、差動回路でハイエンドLNAの性能が実現されます。

結論

5Gのワイヤレス規格は動作周波数をマルチGHzおよび数十ものGHz範囲へと押し上げます。この規格はまた、低ノイズアンプでは特に、アナログ回路からの低ノイズで歪みが少ない性能も要求します。SiGe、SOI、およびGaAsなどの新しいICプロセス技術は、これらのニーズに対応しています。ただし、これらの高周波数においてRFの現状に配慮が足りないと、優れたLNAの性能が低下する可能性があります。

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著者について

Bill Schweber氏

エレクトロニクスエンジニアであるBill Schweber氏はこれまで電子通信システムに関する3冊の書籍を執筆しており、また、発表した技術記事、コラム、製品機能説明の数は数百におよびます。これまで、EE Timesでは複数のトピック固有のサイトを統括するテクニカルウェブサイトマネージャとして、またEDNではエグゼクティブエディターおよびアナログエディターの業務を経験してきました。

Analog Devices, Inc.(アナログおよびミックスドシグナルICの大手ベンダー)ではマーケティングコミュニケーション(広報)を担当し、その職務を通じて、企業の製品、ストーリー、メッセージをメディアに発信する役割と、自らもそれらを受け取るという技術PR業務の両面を経験することになりました。

広報の業務に携わる以前は、高い評価を得ている同社の技術ジャーナルの編集委員を務め、また、製品マーケティングおよびアプリケーションエンジニアチームの一員でした。それ以前は、Instron Corp.において材料試験装置の制御に関するハンズオンのアナログおよび電源回路設計およびシステム統合に従事していました。

同氏はMSEE(マサチューセッツ大学)およびBSEE(コロンビア大学)を取得した登録高級技術者であり、アマチュア無線の上級クラスライセンスを持っています。同氏はまた、MOSFETの基礎、ADC選定およびLED駆動などのさまざまな技術トピックのオンラインコースを主宰しており、またそれらについての書籍を計画および執筆しています。

出版者について

Digi-Keyの北米担当編集者