USB-C電力供給を始めよう

著者 Bill Giovino

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

USB Type-C™の仕様にはUSBを介した拡張性の高い電力供給を提供する新しいオプションが導入されていますが、この仕様は複雑で、開発者は安全性やレイアウトの問題に直面します。

この記事ではUSB Type-C(USB-C)レセプタクルソリューションについて紹介し、開発者向けにこれらのUSB-Cレセプタクルコネクタを新しい設計に組み込んでレイアウトし、拡張性の高いUSB電源を外部デバイスに安全に供給する方法を説明します。

USB-Cについて

元のUSB 1.1規格では、最大電流が500ミリアンペア(mA)/5ボルト(2.5ワット)に指定され、USB 2.0でも同じ最大値が許可されていました。USB 3.1の仕様では、最大許容電流が900mAに変更されました。これはすべて一般的に普及している長方形USBコネクタの使用が前提になっています。しかし、USBがユビキタスになると、コネクタの互換性や電力供給機能に関連して、その用途と要求が増えてきました。

これらの要求に後押しされて、USB Type-C™規格が開発されました。USB-Cはデータ配信の仕様ではなく、小型USBコネクタの新規格です。USBは、これまでコネクタの互換性の問題に悩まされてきました。標準の長方形型USB Type-Aコネクタの挿入は常にマーフィーの法則に悩まされ続けてきました。つまり、ユーザーが極性コネクタをどのように挿入しても、必ず逆さまになるのです(図1)。正しい方向に挿入しても、コネクタがきっちりはまらず、逆さにしてもう一度入れ直し、それを何度も繰り返すこともあります。

さまざまなタイプのUSBコネクタの図

図1:USB 1.1以降、さまざまなタイプのUSBコネクタが開発者とユーザーを悩ませてきました。民生用コンピュータで最も一般的なコネクタは、USB 1.1、2.0、3.0、3.1に使用されるUSB Type-Aコネクタです。(画像提供:Wikipedia)

大型の極性Type-Aコネクタでは、小型の民生用デバイスに組み込みやすくするため、小型化された極性化キーストーンマイクロおよびミニコネクタタイプが開発されました。これらのコネクタでもType-Aと同様に、開発者やユーザーは方向の問題に悩まされていました。

新しいUSB-Cコネクタ(図1の右下)は、Androidスマートフォンやモノのインターネット(IoT)デバイスに使われているUSBマイクロBコネクタよりも若干大きめです。このコネクタは、コンピュータ(ホスト)とデバイス両方のコネクタを置き換え、複数のケーブルタイプも1つのタイプに置き換えられます。また、USB-Cコネクタは極性化されておらず、優先される方向もないため、コネクタをどのように挿入しても緊密に接続されます。

USB-Cコネクタのピン配列と電力レベル

USB-CコネクタはUSB 2.0とUSB 3.1の両方をサポートします。USB 3.1に使用される場合、規格でUSB 2.0との下位互換性のサポートが求められます。これは新しい設計で推奨される使用法です。ただし、低データレートの設計では、USB-CコネクタをUSB 2.0のみにも使用できます。

STMicroelectronicsのUSB-C 24ピンレセプタクルコネクタの図

図2:USB-C 24ピンレセプタクルは、極性化されておらず、リバーシブルであるため、どのように挿入しても簡単にプラグを接続できます。(画像提供:STMicroelectronics

USB-Cコネクタレセプタクルのピン配列を見ると、4本の接地ピン(GND)がコネクタの外側に配置されています(図2)。これによってノイズ耐性が強化され、金属接地コネクタシェルにも簡単に接続できるようになります。標準のUSB 2.0双方向データピンD+およびD-は中央で重複しています。これらのピンは、すべてのUSB-Cデータ送信用途で必須です。USB 3.1には高速送信データパスと受信データパスがそれぞれあり、受信ピンRX1+およびRX1-と2倍のRX2+およびRX2-が使用されます。USB 3.1送信データパスでも同様にTX1+およびTX1-と2倍のTX2+とTX2-が使用されます。

USB-Cコネクタ標準は、DisplayPortとHDMIを含むビデオ送信もサポートします。標準ではこれを代替モードと呼びますが、この記事では扱いません。

この場合に重要なのは、USB-Cコネクタ規格では、最大電流供給を5ボルトで3.0アンペア(15ワットの電力)と指定していることです。これをさらに進めたのがUSB Power Delivery Standard v2.0です。この規格では、USB 3.1をサポートするUSB-Cコネクタは最大100ワットの電力(5アンペアで20ボルト)を供給できることが規定されています。この電力は、4本のVBUSピンで供給されます。これにより、USBインターフェースは補助電源から主電源になります。

USB-Cコネクタ設計の実装には注意が必要

プロジェクトで最大100ワットの電力をサポートする場合は、基板のレイアウト手順を慎重に実施して、開発者だけでなくユーザーの安全性も確保する必要があります。ほとんどのプロジェクトでは、それほど大きな電力を供給する必要はありません。たとえば、非常に高電流なスマートフォン充電器でも定格は3.0アンペア程度です。ただし、ほとんどの商用USB-Cコネクタに共通するスイートスポットは、VBUSピンとGNDピン間で5.0アンペアです。これは、Amphenol FCIのUSB 3.1 10137062-00021LF Gen 1直角型USB-Cコネクタ(図3)でサポートされています。

Amphenol FCIの10137062-00021LF USB-Cコネクタの図

図3:Amphenol FCIの10137062-00021LF USB-Cコネクタは直角の上部取り付け短身コネクタで、スルーホール実装または面実装することができます。(画像提供:Amphenol RF)

このUSB-Cレセプタクルコネクタは最大5アンペアをサポートし、100ワットを供給するには20ボルトのDCが必要です。ただし、ほとんどのプロジェクトでは、25ワット(5アンペアで5ボルト)で十分かつ安全です。このUSB-Cコネクタは、5ギガビット/秒(Gbit/s)のUSB 3.1 Gen 1データレートをサポートし、最大電圧定格は100ボルトDCまたはACです。この値では、仕様で規定されている最大電力100ワットに従って、最大1アンペアを供給できます。

このコネクタは面実装またはスルーホールアセンブリをサポートし、プリント基板の上に設置されます。ステンレス製コネクタシェルはアルミニウム製よりも耐久性が高く、GNDピンに電気的に接続されます。

このシェルは、コネクタの各端に2つずつ付いている、プリント基板のスロットに挿入する4つの細長いタブを使用して接地する必要があります。これらのタブは、多めのはんだを使ってPC電源接地平面に必ずはんだづけし、緊密に接続してください。

USB-Cコネクタの信号配線

USB 3.1高速差動信号は、完全に同じ長さで隣接し合うように慎重に配線する必要があります。EMIを最小限に抑えるために、差動信号のトレースはできるだけ短くしてください。ノイズ耐性を最適化するために、差動信号はプリント基板の内部層に配置します。外部プリント基板層に配線する場合は、差動ペアのトレースをアーストレースで囲んで信号を他のデータラインから離します。また、EMIを最小限に抑えるために、差動信号は常に接地平面上に配線します。

USBケーブルの差動インピーダンスに合わせて差動トレースインピーダンスが90オーム±10%になるように設計します。また、各ペアのシングルエンド方式インピーダンスが同じになるよう各トレースを配線します。一般的に、この状況では、差動ペアのインピーダンスはペアの一方のインピーダンスの2倍になります。つまり、トレースは各シングルエンド方式のインピーダンスが45オーム±10%またはそれに近い値になるように配線する必要があります。

USB-C電力信号を安全に配線する方法

電力信号の配線はさらに重要です。5アンペアの安全な供給を慎重に行い、プロジェクトのケーシングやユーザーに対する不注意な短絡を防ぐ必要があります。5アンペアはプリント基板の上層または下層で配線できますが、プリント基板のエッジに近すぎないようにしてください。これにより、エンクロージャへの衝撃や破損によって生じるプロジェクトエンクロージャへの偶発的な接続を防ぐことができます。

5アンペアを1平方フィートあたり2オンスの厚みがある銅でプリント基板に安全に供給するためには、44.6ミル幅のトレースが必要です。より安全なのは、5アンペアを内部プリント基板層上で配線して電流を外部のあらゆる影響から保護することです。これには、同じ銅密度で116ミルのトレース幅が必要です(IPC-2221プロファイルに基づく計算)。できる限りVBUSコネクタピンの近くに多くの銅を配線して電流の損失を防ぎます。

垂直実装型USB-Cコネクタ

プリント基板面積が限られている場合、USB-Cレセプタクルコネクタを垂直に取り付けることができます。このために、Amphenol FCIはUSB 3.1 10132328-10011LF垂直実装型USB-Cコネクタを提供しています。

Amphenol FCIの垂直実装型USB-Cコネクタの図

図4:Amphenol FCIの垂直実装型USB-Cコネクタは、小さなプリント基板フットプリントを備え、基板の面積を節約することができます。(画像提供:Amphenol RF)

この垂直実装型USB-Cコネクタは、10Gbit/sのUSB 3.1 Gen 2データ標準をサポートします。また、最大電圧定格100ボルトDCまたはACで100ワットの電力供給をサポートし、最大5アンペア供給できます。直角型コネクタと同じステンレス製シェル構成になっています。直角型コネクタと同様に、筐体の4つのタブを、適切な量のはんだでプリント基板内のスルーホールに安全に接地してください。

直角型コネクタと異なり、コネクタの小さい方の端の平面実装のみであるため、VBUS電源端子が信号端子に近づきます。電源端子は信号端子から離して慎重に配線することが必要です。狭いスペースの場合、最も安全なのは、データペアとVBUS電源端子を別のプリント基板層に配置することです。

電源を上記のレセプタクルコネクタに供給するときに、USBホストとデバイス間の簡単なハンドシェイクプロトコルで、供給する電力量を決定します。USBシンクからソースへの接続を処理するICがあり、プロセスは開発者に透過になります。

1つの例として、STMicroelectronicsの STUSB1700 USB-Cソースコントローラがあります。このコントローラでは、5ボルトのUSB-Cホストからデバイスへの接続を安全に管理できます。電力供給時に、STUSB1700は電力短絡、プログラムされた制限を超える電力供給、145°Cを超える過熱、不足電圧と過剰電圧状況、逆電流と逆電圧状況を検出し、それらを防ぐことができます。これにより、USB-Cシステムの安全設計が大幅に簡素化され、開発者の負担も軽減します。

STMicroelectronicsのSTUSB1700が3アンペアの電力を供給している回路の図(クリックして拡大)

図5:この回路のSTUSB1700は3アンペアの電力を供給し、独立して動作できます。I2Cインターフェースでオプションのマイクロコントローラによって管理する場合は、プルアップ抵抗器R3~R10を追加する必要があります。(画像提供:STMicroelectronics)

STUSB1700はUSB-Cホストコネクタに使用され、ホストとデバイス間の新しい接続を検出できます。デバイスの電力ニーズを判断し、必要な電流を供給できます。また、デバイスがデジタルオーディオアクセサリであるかどうかも判断して、USB-Cポートを介してデジタルオーディを供給するようマイクロコントローラに信号をアサートできます。USBデバイスとネゴシエートして、電力をUSBデフォルト(最大900 mA)、USBミディアム(最大1.5アンプ)またはUSB高電流(最大3.0アンペア)のどれにすべきか判断できます。

結論

新しいUSB-C標準により、適切に設計されたデバイスに最大100ワットの電力を簡単かつ安全に供給できるようになりました。すべてのスマートフォン、デジタルカメラ、コンピュータ、電子アクセサリが簡単に使える1つのコネクタで規格化されるため、開発者は使用するコネクタのサイズやタイプを気にする必要がなく、将来性のある設計が確保できます。

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著者について

Bill Giovino

Bill Giovino氏は、シラキュース大学のBSEEを持つエレクトロニクスエンジニアであり、設計エンジニアからフィールドアプリケーションエンジニア、そしてテクノロジマーケティングへの飛躍に成功した数少ない人の1人です。

Billは25年以上にわたり、STMicroelectronics、Intel、Maxim Integratedなどの多くの企業のために技術的および非技術的な聴衆の前で新技術の普及を楽しんできました。STMicroelectronicsでは、マイクロコントローラ業界での初期の成功を支えました。InfineonでBillは、同社初のマイクロコントローラ設計が米国の自動車業界で勝利するように周到に準備しました。Billは、CPU Technologiesのマーケティングコンサルタントとして、多くの企業が成果の低い製品を成功事例に変えるのを手助けしてきました。

Billは、最初のフルTCP/IPスタックをマイクロコントローラに搭載するなど、モノのインターネットの早期採用者でした。Billは「教育を通じての販売」というメッセージと、オンラインで製品を宣伝するための明確でよく書かれたコミュニケーションの重要性の高まりに専心しています。彼は人気のあるLinkedIn Semiconductorのセールスアンドマーケティンググループのモデレータであり、B2Eに対する知識が豊富です。

出版者について

Digi-Keyの北米担当編集者