電流測定の基礎:第2部 – 電流センスアンプ

著者 Steve Leibson氏

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

編集者注:本シリーズは2部構成であり、第1部では、さまざまな電流センス抵抗器の微妙な違いについて説明しています。この第2部では、こうした抵抗器で生じた電圧を実用的な大きさにまで増幅するアンプの設計と使用法について説明します。

電流センス抵抗器(別名シャント)は、電流の測定に最適なテクノロジです。こうした抵抗器の抵抗の大きさは、電流に悪影響を与えないよう、生じる電圧が比較的小さくなるように構成されています。このため、設計を行なう際には、上流のA/Dコンバータ(ADC)で変換できるように、この小さな電圧を増幅する回路要素を使用しなければなりません。

一般には、シャント抵抗器で生じた小さな電圧を、数十~数百ミリボルトから10分の数ボルトまで増幅する必要があります。この増幅は多くの場合、演算増幅器(オペアンプ)や電流センスアンプで行います。電流センスアンプは、ゲインを設定できるレーザートリム加工の高精度抵抗ネットワークを内蔵した特別なオペアンプです。通常のアンプ電圧ゲインは20~60のオーダーですが、これよりさらに大きいものもあります。

電流センスアンプには、パッケージに電流シャント抵抗器が含まれているものもあります。高電力用途では電力の散逸により熱が生じてしまうため、外部シャント抵抗器が推奨されます。

よく見られる電流監視用の信号チェーン構成では、シャント抵抗器、アナログフロントエンド(AFE)、A/Dコンバータ、システムコントローラが使用されます(図1)。AFEの例としてはオペアンプや専用の電流センスアンプがあり、シャント抵抗器で発生した小さな差動電圧を、ADCで使用可能な電圧に変換します。

電流シャント抵抗器を通る電流の測定図

図1:電流を測定する最も簡単な方法は電流シャント抵抗器(左端)を使用したものであり、ここでは流れる電流に比例した電圧が発生します。AFEはADCの測定範囲全域を使用するよう、シャント抵抗器の低い電圧を増幅します。(画像提供:Texas Instruments

シャント抵抗器を回路に組み込む基本的な方法には、ローサイド電流測定とハイサイド電流測定の2種類があります。これらの手法には、それぞれ長所と短所があります。

ローサイド電流測定

ローサイド電流測定では、電流シャント抵抗器を能動負荷とアースの間に配置します。図2に、ローサイド電流測定に最適な回路を示します。この回路ではTexas InstrumentsのINA181電流センスアンプを使用していますが、他のアンプを使用することも可能です。

Texas InstrumentsのINA181を用いたローサイド電流測定の図

図2:Texas InstrumentsのINA181を用いて能動負荷とアースの間に電流センス抵抗器を配置したローサイド電流測定回路(画像提供:Texas Instruments)

ローサイド電流測定は、電流シャント抵抗器の検出電位がアース基準になるため、実装が簡単です。この構成では、検出する電圧がアース基準でミリボルトのオーダーにしかならないことから、電流センスアンプを低電圧部にすることができます。また、この構成ではさらに大きな電圧の検出電圧が乗ることがないため、コモンモードの除去も不要です。このように、ローサイド電流測定は、最も実装しやすく費用が最小の手法です。

ローサイド電流測定の欠点は、シャント抵抗器を配置するため負荷の基準がアースではなくなり、負荷の下流側の電位がアース電位から数ミリボルト高くなることです。

負荷とアース間で短絡が生じた場合、アース基準でないことが問題となります。こうした短絡は、モータなどの金属ケース入りの負荷で、アース基準のケースに対して巻線の短絡が起きた場合などに生じます。電流センス抵抗器では、こうした短絡を検出できない可能性があります。

さらに、ローサイド測定を行なうには、アンプのコモンモード入力電圧にアース電圧を含める必要があります。アンプを正電源と負電源で動作させるのであれば、こうした点は一般に問題になりませんが、単一電源を使用する場合には支障をきたす可能性があります。このため、ローサイド電流測定を行なうアンプを選択するときには、コモンモード電圧範囲にアース電圧が含まれているかどうかが重要な基準になります。

ローサイド電流測定を行なう際には、重要な点がもう1つあります。図2では、Texas InstrumentsのADS114 ADCの基準を直接アースとして、ADCの下流側入力ノードを、INA181電流センスアンプの入力アース基準接続の近くに配置していることに注目してください。

電流センシングで、高負荷電流が流れる低抵抗のシャント抵抗器で生じた小さな電圧を用いる場合には、一部のアースの電位が異なる可能性に留意する必要があります。多くの電源用途で見られるようにアースネットワークまたはアース面に大きな電流が流れると、システム内のあるアース点間で数ミリボルトの電位差が非常に発生しやすくなります。万一に備え、関係するアースはすべて互いのすぐ近くで接続して、アース間の電位差を最小に押さえてください。

こうした誤差の原因を取り除くため、ADCのアース基準ピンは、電流センス抵抗器の下流側および電流センスアンプの下流側入力の近くに接続する必要があります。この接続点は、アース面の中でも特に取り扱いの難しい部分です。さらに確実にするため、この要件を回路図に直接記載するとともに、アースの星形結線を明記してこの点を強調してください。

同様に、電流センス抵抗器にかかる電圧が小さい場合、アンプの精度に対する電流センスアンプの入力オフセット電圧の影響が過度に大きくなります。こうした理由から、入力オフセット電圧が非常に小さいアンプを選ぶことをお勧めします。図2のINA181アンプの入力オフセット電圧は、コモンモード電圧が存在しないローサイド測定用の構成では±150μVになります。

このようにいくつかの欠点はありますが、負荷の基準をアースにする必要がなく、かつ負荷とアース間で内部短絡が生じても問題にならないか、こうした短絡を電流測定用の回路要素で検出する必要がない場合には、ローサイド電流測定用の構成が適切な選択肢となります。

ただし、設計で機能面の安全性要件に適合する必要がある場合は、ハイサイド電流測定の手法の方が推奨されます。

ハイサイド電流測定

ハイサイド電流測定では、図3に示すように電流シャント抵抗器を電源と能動負荷の間に設置します。この図では、Texas InstrumentsのINA240電流センスアンプをAFEとして用いています。このアンプはコモンモード入力電圧が供給電圧よりもはるかに大きいため、ハイサイド電流測定に最適です。

Texas InstrumentsのINA240を用いたハイサイド電流測定の図

図3:Texas InstrumentsのINA240を用いて電源と能動負荷の間に電流センス抵抗器を配置したハイサイド電流測定回路(画像提供:Texas Instruments)

ハイサイド電流測定には、ローサイド電流測定と比べて2つの大きなメリットがあります。まず、負荷とアース間で短絡が生じた場合、その短絡電流は電流シャント抵抗器を通り電圧を発生させるため、こうした短絡を簡単に検出できます。次に、この測定手法ではアースを基準としていないため、アース面を大電流が流れてアース電圧に差が生じても、測定に影響は生じません。ただし、この手法でも、ADCのアース基準接続はアンプのアース近くに注意深く配置することをお勧めします。

ハイサイド電流測定には、大きな欠点が1つあります。上述のように、負荷供給電圧に電流シャントで発生した小さな電圧が乗ってしまうため、電流センスアンプのコモンモード除去比が大きくなければなりません。システムの設計によっては、このコモンモード電圧がきわめて大きくなることがあります。図3のINA240電流センスアンプは、-4~80Vという幅広いコモンモード電圧範囲を持っています。

内蔵ゲイン抵抗の有無

図2および3にローサイド電流測定とハイサイド電流測定の構成をそれぞれ示していますが、これらの構成はともにゲイン設定抵抗を内蔵した電流センスアンプを採用しています。こうした内蔵抵抗には、設計の簡略化、基板部品数の削減、レーザートリム加工によるゲインの精度など多くの設計上のメリットがあります。こうしたアンプを使用する上での大きな欠点の1つが、ゲインが工場で設定されており、変更できないことです。ゲインの設定が目的の用途に適しているのであれば、これは問題にはなりません。しかし、他の基準に合わせてシャント抵抗器の値を選択したために特有のゲインが必要になった場合は、オペアンプと個別の抵抗器を組み合わせる方が適切です。

図4に、Microchip TechnologyMCP6H01オペアンプと外付けのゲイン設定抵抗器を使用した、ハイサイド電流測定用の電流センスアンプ回路を示します。

個別の抵抗器とオペアンプを用いたハイサイド電流測定の構成図

図4:個別の抵抗器とオペアンプを用いたハイサイド電流測定構成(画像提供:Microchip Technology)

この回路のアンプのゲインは、比率R2/R1により決まります。また、R1*とR1およびR2*とR2は等しく、電流シャント抵抗RSENはR1またはR2より十分に小さくする必要があることに注意してください。電流シャント抵抗の値は数ミリオームのオーダー、もしくは電流の非常に大きい用途では数十分の1ミリオーム程度であるため、この設定はほとんど問題になりません。

図4の式に示されているように、オペアンプと個別の抵抗を使用する場合は、ゲイン設定抵抗を内蔵した電流センスアンプを用いる場合に比べてより詳細な部品の仕様が必要になります。

結論

電流センスアンプは、シャント抵抗で生じた小さな電圧を、ADC変換で使いやすい大きな電圧に変換するものです。電流センシング測定の構成には、ローサイドとハイサイドの2種類があります。ローサイド測定では電流センス抵抗器を負荷とアースの間に配置しますが、ハイサイド測定では電源と負荷の間に挿入するという違いがあります。ローサイド測定構成とハイサイド測定構成にはともに利点と欠点があるため、目的の用途に合わせて検討し、選択する必要があります。

電流を測定する場合には、工場でレーザートリム加工抵抗器によりゲインが設定されている、特定用途向けの電流センスアンプを使用するか、または適切なオペアンプと個別の抵抗器を組み合わせて使用することになります。前者では、基板部品の数を抑えてAFEの設計を簡素化することができます。一方で、AFEの設計上、シャント抵抗とADCの入力電圧範囲の値に合わせてゲインをカスタマイズする必要がある場合は、後者を用いることが推奨されます。

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著者について

Steve Leibson氏

Steve Leibson氏は、HPとCadnetixでシステムエンジニアを務め、EDNとMicroprocessor Reportで編集長として活躍し、XilinxとCadenceなどの企業では技術ブロガーを担当しました。また、同氏は、「The Next Wave with Leonard Nimoy」の2つのエピソードで技術専門家を務めました。同氏は、33年間にわたって、高速でかつ信頼性の高い優れたシステムを設計技術者が開発することを支援しています。

出版者について

Digi-Keyの北米担当編集者