起動時およびシャットダウン時の電源シーケンスの制御

著者 Art Pini

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

マイクロプロセッサ、FPGA、DSP、A/Dコンバータ(ADC)、システムオンチップ(SoC)デバイス、これらは通常、複数の電圧レールで動作します。ロックアップやバス競合の問題、そして高突入電流を防ぐために、設計者はこれらの電源レールを特定の順序で起動し、シャットダウンする必要があります。これは電源シーケンス制御ないし電源シーケンシングと呼ばれるプロセスで、これを効果的に実行するためのソリューションは多数あります。

電圧シーケンシングを必要とする複雑なデバイスには、デジタルI/Oレールの前に、電源投入する必要があるコアおよびアナログブロック用の電圧レールがあります。設計によっては異なるシーケンスが必要になる場合がありますが、いずれの場合も、問題を回避するために適切な電源投入と電源切断シーケンシングが必要です。

効果的な強化とシャットダウンを提供するために、さまざまなパワーシーケンサ、モニタ、およびスーパーバイザが登場しましたが、これらのデバイスも、複雑な集積回路やサブアセンブリを保護するために、電圧レベルと電流レベルを監視してパワーレベルを計算する手法を採用しています。

この記事では、電源シーケンシングの詳細について説明し、電源シーケンスの仕様と手法、そして特定の電源レールのタイミングとシーケンシングを実現するための電源シーケンサの応用方法について述べます。

なぜ電源シーケンシングを考慮するのか?

FPGAおよび同様の複雑なICは、内部的には多数のパワードメインに分けられています。これらのICの多くが、デバイスを起動したり、シャットダウンするときに、特定の順序を必要とします。たとえば、FPGAは通常、コアロジック、I/O、および補助回路に別々に電力を供給します。

コアは通常、FPGAのロジック基幹部とプロセッサで構成されています。このドメインは、低電圧と高電流の電源プロファイルを特長としています。極端に低い電圧のため、非常に高い精度が要求されます。また、デジタル負荷の動的性質のため、優れた過渡性能が要求されます。I/Oは、FPGAのさまざまな入力と出力です。電圧要件はインターフェースのタイプによって異なります。一般には、電圧レベルはコアのレベルよりも高くなります。電流要求は、I/Oのタイプ、数、および速度によって異なります。

補助回路は、位相ロックループ(PLL)や他のアナログ回路素子など、FPGA内のノイズに敏感なアナログ回路で構成されています。電流要件はまあまあ低いですが、リップル電圧は大きな問題であり、最小限に抑える必要があります。アナログセクションのリップルは、PLLの過度のジッタと位相ノイズ、そしてアンプのスプリアス応答を引き起こす可能性があります。

各ドメインの電源を誤った順序で起動すると問題が発生し、FPGAが損傷する可能性があります。I/Oセクションは、トライステートバスでのデータの送受信をベースにしていると考えてください。I/O制御は、コアによって処理されます。コアの前にI/Oドメインの電源が投入されると、I/Oピンは不確定な状態になります。外部バス部品に電源が投入されると、バスの競合が発生し、I/Oドライバに高電流が流れる可能性があります。そのため、コアはI/Oドメインの前に起動する必要があります。電源アプリケーションとシャットダウンの推奨シーケンス、および電源レール間の最大差動電圧に関しては、FPGAの供給元の仕様を調べることが重要です。

同様に、パワーオペアンプなどのデバイスには、アナログドメインとデジタルドメインの2つのパワードメインがあります。デジタルドメインは、過温度状態や過電流状態に関するアンプの診断ステータスフラグに電力を供給します。デジタルドメインは、アンプのイネーブル/シャットダウン機能もサポートします。デバイスの仕様では、アナログドメインの電源が投入される前に、これらのステータスフラグが機能するよう、アナログ電源よりも先にデジタルドメインの電源を投入することが要求されます。これは、デバイスの損傷を防ぐための措置です。

電源シーケンスの方法論

マルチレールシーケンシングには、3つの一般的なタイプがあります(図1)。最も一般的なのは、1つの電源レールが最初にオンになり、続いて次のレールがオンになるまでに遅延が続くシーケンシャルです。遅延は、2番目のレールがオンになる前に、最初のレールが安定化を達成するように設定されます。

電源シーケンシングの3つの手法の図

図1:電源シーケンシングの3つの手法。用いる手法に関係なく、電圧は単調に上昇しなければなりません。これに失敗すると、起動中の予期せぬ電圧降下のために、デバイスが正しく初期化されないことがあります。(画像提供:Digi-Key Electronics)

2番目のシーケンシング手法は、レシオメトリックです。この手法では、レールは同時に起動し、同時に定格電圧に達します。この場合は、同時に安定化を達成するために、レールの立ち上がり時間がレール電圧に比例することが求められます。

一部のデバイスは、安定化到達前に発生する瞬間的な電圧差に耐えられないかもしれません。この間に、デバイスが1つの電源からより高い電流を引き出すことがあり得ます。

3番目のアプローチは同時起動ですが、電圧の瞬間的な差を最小限に抑えます。この手法は、ストレスの規模と持続時間を軽減します。この手法を実装する一般的な方法は同時起動ですが、この場合、電圧レールは、高いほうのレール(通常はI/O電圧レール)と同じ速度で同時に上昇し、低いほうの電圧レールまたはコア電圧レールがその最終値に達した後も継続して上昇します。

用いる手法に関係なく、電圧は単調に上昇しなければなりません。これに失敗すると、起動中の予期せぬ電圧降下のために、デバイスが正しく初期化されないことがあります。

さらに、ソフトスタートを使用すると起動時の突入電流を制限することができるでしょう。これを実践すると起動時の電流が制限され、起動時に電源レールの静電容量を徐々に充電することができます。

電源のシャットダウンは、通常、起動時と逆の順序で行われるように指定されます。

使用する起動手法やシャットダウン手法の選択は、デバイスの仕様によって異なります。

電源シーケンシングの例

同時起動は、比較的簡単に設定できます。最高電圧出力は、低いほうの電圧レギュレータの入力に接続されています(図2)。

5V電源と3.3V電源の同時起動のグラフ

図2:5V電源と3.3V電源の同時起動は、レギュレータをデイジーチェーン接続することによって行われます。(画像提供:Digi-Key Electronics)

この例では、高いほうの電圧は5V電源です。これは、3.3Vのレギュレータにも供給されます。5Vと3.3Vの出力は、3.3V電源の安定化ポイントまでは最小電圧差で同時に上昇するのがわかります。

シーケンシャル手法は、Texas InstrumentsLM3880のようなシーケンサ集積回路を用いて最もよく実装されます。LM3880は、イネーブル入力を使用して複数の独立したレギュレータまたは電源を制御できるシンプルな電源シーケンサです。

LM3880がイネーブルになると、フラグ間に個別の遅延時間を設定して、3つの出力フラグを順次リリースします。これにより、接続されている電源の起動が許可されます。シャットダウン中は、出力フラグは逆のシーケンスに従います。LM3880を使用した設計例を、Texas InstrumentsのWEBENCH Power Designerソフトウェアを使用して示します(図3)。この無料ソフトウェアツールは、設計者が、回路図、BOM、シミュレーション結果を提供する電源関連回路を設計するのに役立ちます。この図は、回路図とグラフ、イネーブル、そして3つのフラグ出力を示しています。

LM3880の遅延時間とシーケンス順は固定されていますが、内蔵のEPROMを書き換えて工場でカスタマイズすることができます。Texas InstrumentsのLM3881シーケンサは、コンデンサのプログラム可能な遅延も提供しています。

Texas InstrumentsのWEBENCH Power Designの表示画像

図3:Texas InstrumentsのWEBENCH Power Designerの表示。LM3880の設計図が表示されているほか、外部レギュレータや電源を制御するためのイネーブル入力および出力フラグのグラフが表示されています。(画像提供:Digi-Key Electronics)

もう少し洗練された電力制御デバイスは、Analog DevicesLTC2937シーケンサ/電圧スーパーバイザです。LM3880と同様、LTC2937は最大6つの電源またはレギュレータの順序と時間遅延を制御することができます(図4)。

「Analog DevicesのLTC2937は最大6つの電源シーケンスを制御します」の図

図4:LTC2937は、電源レール電圧も監視しながら、最大6つの電源シーケンスを制御することができます。複数のデバイスを1本のワイヤで同期させ、最大300の電源を制御できます。(画像提供:Analog Devices)

最大6つの電源レールシーケンシングに加えて、これらのレールの電圧も監視し、過電圧、不足電圧、ドロップアウト、および電源立ち上げの遅れを検出します。障害が発生した場合、電源をシャットダウンまたは再起動するようにデバイスをプログラムできます。エラー状態は内部EEPROMに記録されます。LTC2937は、I2CまたはSMBusを介してプログラムしたり、制御することができます。プログラミングは、Analog DevicesのLTpowerPlay GUIソフトウェアによってサポートされています。EEPROMは、ソフトウェアを使用せずに自律的な動作を可能にします。システムに6本以上の電源レールが必要な場合は、複数のLTC2937をチェーン接続して最大300の電源を制御できます。

Texas Instrumentsでは、複雑なマルチコアプロセッサ、FPGA、およびその他のSoCデバイス用に、構成可能なTPS650860マルチレール電源管理ユニットを提供しています。5.6V~21Vの入力電圧範囲を備えたこの単一ICは、3つの降圧コントローラ、3つの降圧コンバータ、1つのシンクまたはソース低ドロップアウト(LDO)リニアレギュレータ、3つの低電圧入力LDO、複数のレギュレータ、および3つの負荷スイッチを内蔵しています(図5)。

Texas InstrumentsのTPS650860の機能ブロック図(クリックで拡大)

図5:Texas InstrumentsのTPS650860の機能ブロック図。シーケンシングの完全制御による13の安定化出力を示しています。(画像提供:Texas Instruments)

このデバイスは、FPGAや他の負荷デバイスのニーズを満たすため、13の安定化出力を備えています。

降圧コンバータは組み込みパワー段を備えていますが、降圧コントローラは外部パワー段を必要とします。コンバータとコントローラの両方に、電源出力を監視するための電圧センシング入力が内蔵されていますが、これはシーケンシングのために制御できます。負荷スイッチにはスルーレート制御が含まれており、これらのスイッチに関連するレールを、「シーケンシャル」、「レシオメトリック」、または「同時」の3つのシーケンスタイプのいずれにもプログラムできます。

TPS650860は、I2Cインターフェースを介して制御され、組み込みコントローラまたは関連SoCマネージャによるシンプルな制御を可能にします。この電源管理ICは、最先端の制御柔軟性を提供します。

まとめ

電源の起動およびシャットダウンの順序を制御する方法は複数あり、非常に単純なものから非常に複雑なものまでさまざまです。これらは、制御するレールの数、精度、制御機能の範囲、そしてコストが異なります。

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著者について

Art Pini

Arthur(Art)PiniはDigi-Key Electronicsの寄稿者です。ニューヨーク市立大学の電気工学学士号、ニューヨーク市立総合大学の電気工学修士号を取得しています。エレクトロニクス分野で50年以上の経験を持ち、Teledyne LeCroy、Summation、Wavetek、およびNicolet Scientificで重要なエンジニアリングとマーケティングの役割を担当してきました。オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、任意波形発生器、デジタイザや、パワーメータなどの測定技術興味があり、豊富な経験を持っています。

出版者について

Digi-Keyの北米担当編集者