大型にはない小型のメリット: より多くのレギュレータを使用して貴重なスペースを節約

著者 Bill Schweber氏

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

システムまたは基板の配電ネットワーク(または電源ツリー)の設計では多くの場合、集中型か分散型かを選択することになります。この選択は、テクノロジやコンポーネントの進歩や設計要件によって左右されます。他の機能のためにスペースを節約することが第一優先事項である場合、小型DC/DCコンバータを使用することでスペースを節約でき、その他のメリットも得ることができます。

小型DC/DCコンバータのその他のメリットとしては、電源ツリートポロジを柔軟に再評価できること、制限が少ないために基板レイアウトに大きなメリットがあること、性能や効率性が向上すること、全体の面積を節約できること、などを挙げることができます。

この記事では、最初に超小型DC/DCコンバータの役割を説明し、その後にサンプルデバイスや最適な応用方法を紹介します。

超小型コンバータへの移行が進む理由

小型降圧(バックモード)DC/DC電源コンバータが登場したことにより、大型の中間バスコンバータ(IBC)で比較的大型のポイントオブロード(POL)に電源供給し、さらに複数のICで構成される比較的大型のサブシステムに電源供給する設計はあまり採用されなくなりました。

その代わりに、物理的に小型のコンバータを高度に分散して使用する設計が選択されるようになりました。これらのコンバータは、負荷(単一のICやサポートコンポーネント)の近くに配置できます。

DC/DCコンバータを高度に分散して使用する理由は2つあります。1つ目の理由は、新しいマイクロコンポーネント、高い動作周波数(メガヘルツ(MHz)範囲)、高度な製造技術、およびパッケージングの向上により、非常に高性能なDC/DCユニットを簡単に使用できるようになっていることです。2つ目の理由は、この方法で電源レールを供給することにより、副次的なものも含むさまざまなメリットが回路設計、基板全体のレイアウト、最終製品にもたらされることです。

さらに、一見直観に反しますが、数多くの小型コンバータを使用すると、実際にはパワーサブシステム全体のフットプリントが削減され、プリント基板スペースを節約することができ、さらに機能を追加できるようになります。

仕様の概要

小型DC/DCコンバータに関して注目すべき興味深いことは、その性能とサイズにあります。たとえば、Texas Instrumentsが提供する降圧DC/DCコンバータ、LMZ10501「ナノ」モジュールは最大1Aの負荷を駆動できます(図1)。

Texas Instrumentsが提供するLMZ10501 DC/DCコンバータの図

図1: Texas InstrumentsのLMZ10501 DC/DCコンバータは、最大95%の効率で最大1Aを供給可能(画像提供:Texas Instruments)。

その出力定格にもかかわらず、LMZ10501 DC/DCコンバータは「ナノ」という名のとおり、3.00mm × 2.60mmの8ピンµSIPパッケージ(インダクタを含む)で提供されています(図2)。

Texas Instrumentsが提供するLMZ10501 DC/DCレギュレータの画像

図2: LMZ10501 DC/DCレギュレータは、3.00mm × 2.60mm µSIPパッケージ(インダクタを含む)で提供。コンタクトを示す底面図(左)とインダクタを示す上面ビュー(右)(画像提供:Texas Instruments)。

LMZ10501は基本的な機能だけでなく、内部電流制限に基づくソフトスタート機能、過電流保護、サーマルシャットダウンなどの機能も備えています。基本的な動作の一般的なアプリケーションでは、LMZ10501は入力コンデンサ、出力コンデンサ、小容量のVCONフィルタコンデンサ(各1つずつ)と、2つの抵抗器を必要とします(図3)。内蔵インダクタのDC電流定格は1.2ADCで、最大2Aの「ソフト」飽和プロファイルによりサポートされています。

Texas InstrumentsのLMZ10501は3つのコンデンサと2つの抵抗器のみで動作することを示す図

図3: LMZ10501は3つのコンデンサと2つの抵抗器のみで動作。比較的大きなインダクタはIC自体の一部(画像提供:Texas Instruments)。

外部コンデンサは注意して選択する必要があります。サイズ、コスト、信頼性、および性能の最適なバランスを実現するには、入力および出力フィルタの両方が低ESR MLCCコンポーネントである必要があります。通常は、VINのバイパスには、6.3または10ボルト定格の10マイクロファラッド(μF)コンデンサ(0603または0805サイズ)1つで十分ですが、複数の4.7μFまたは2.2μFコンデンサを使用することもできます。

値の小さすぎるコンデンサを選択すると、ループ位相マージンの低下により不安定性につながることがありますので注意してください。それとは逆に出力コンデンサが大きすぎると、起動シーケンスの終了時に必要な0.375ボルトレベルに出力電圧が到達できなくなる場合があります。推奨値よりも大きな値のコンデンサを使用することに大きなメリットはありません。

サイズがもたらす可能性

このようにフットプリントが小さいコンバータを使用することで、今までにはない新しい方法でさまざまなICや他のコンポーネントに電源を供給できるようになります。このようなµSIPパッケージを使用すれば、最終的な安定化を負荷のすぐ近くで実行でき、大型電源を負荷から離れた場所(プリント基板の隅など)に配置する必要がなくなります。また、それ以外のメリットとして、デバイスはピックアンドプレイス機械やはんだ付けステーションとの完全な互換性を得ることができます。

それでは、このように多数の小型ユニットを使用することがなぜスペース節約につながるのでしょうか?それには以下のように、一見してすぐにわかる理由と、そうではない理由があります。

  • ほとんどの安定化を負荷の近くで行えるようになるため、大きくて高価なバルクコンデンサをアップストリーム電源に配置する必要性が低減します。
  • アップストリームDC/DCまたはAC/DC電源ユニットで、最終DCレールを負荷の仕様に合わせて調整できるようになります。
  • このDCレールは負荷の近くに配置されているため、レール上に小型バイパスコンデンサを配置する必要性が低減します。実際に、負荷の近くに配置された超小型DC/DCコンバータは必要な電源を供給するだけでなく、バイパスコンデンサの一部またはすべての役割を果たすこともできます。
  • 位置が近くなるため過渡応答が向上します。
  • コンバータは、最適な負荷と効率性で動作するように個別にサイズ指定できます。これにより、全体の効率が向上し、熱が広域に緩やかに放射され、ファンやヒートシンクが不要になる場合があります。
  • このコンバータは薄型であるため、スペースが限られているラックやエンクロージャにプリント基板を組み込む場合でも、プリント基板の底部にコンバータを配置することができます。これもレイアウトの柔軟性を向上させ、省スペース設計につながります。
  • クロストークと、ノイズの多いICとノイズの影響を受けやすいIC間のノイズが大幅に軽減されます。
  • これらのコンバータは電気的に絶縁されていませんが、小型の絶縁型コンバータが必要な場合は、絶縁機能用に適切なサイズを指定するだけですみます。
  • 最後に、DCレール上のIRドロップと寄生を低減するために回路基板のトレースの幅を広げる必要性が低減します。IRドロップと寄生は、負荷側の過渡性能に影響します。

小型DC/DCコンバータは、1A以下の負荷に限定されていないことに注意してください。たとえば、Texas InstrumentsのTPS82130 MicroSiP™電源モジュールは、3~17ボルトの入力から3Aの出力電流を提供します。また、同期整流式降圧コンバータとインダクタを内蔵し、0.9~6ボルトの可変出力電圧を提供します(図4)。

Texas Instrumentsが提供するTPS82130 DC/DCモジュールの図

図4: Texas InstrumentsのTPS82130 DC/DCモジュールに必要なのは少数の外部受動部品だけであり、3~17ボルトのDC入力から0.9~6ボルト(ユーザーが調整可能)で最大3Aを提供できます(画像提供:Texas Instruments)。

このデバイスの名前には「モジュール」がつきますが、その寸法は3.0mm × 2.8mm × 1.5mmしかありません。適切な性能曲線を見ると、全体的な効率性は1Aをわずかに上回るところでピークに達し、完全な3A定格まで高効率を維持していることが分かります(図5)。

TPS82130 DC/DCの効率性のグラフ

図5: TPS82130 DC/DCの効率は約60%以上で、高負荷での動作中は1A以上でピークに達するため、負荷に対応する最適なサイズを指定することができます(画像提供:Texas Instruments)。

相対的タイミングの問題への対処

システムに複数のレールがある場合、それぞれのレールの間でターンオン/ターンオフのタイミングに関する問題がしばしば発生します。タイミングには3つの基本タイプ(シーケンシャル、レシオメトリック、同時)と、それらの変化形があります。TPS82130でイネーブル(EN)ピン、ソフトスタート/トラッキング(SS/TR)ピン、さらにいくつかの抵抗器やコンデンサを使用することで、任意のタイミングを実装できます(ここでは、分かりやすくするために2つのレールのみを想定します)。

シーケンシャルタイミングでは、最初の

デバイスが安定化に達した後にのみ、2番目のデバイスがターンオンします(図6)。

シーケンシャルタイミング用に構成された複数のTPS82130ユニットの図

図6: 複数のTPS82130ユニットをシーケンシャルタイミング用に構成することが可能。左側のレギュレータが右側よりも先にターンオン。注:図のICはTPS62130とラベル付けされていますが、TPS82130は仕様がさらに向上し、なおかつ同じ機能とピン配列を提供します(画像提供:Texas Instruments)。

レシオメトリックタイミングでは、両方の出力電圧が同時に開始し、同時に安定化に達します(図7)。これが「レシオメトリック」と呼ばれるのは、通常2つの電圧が異なるとそれぞれのdV/dtスロープも異なるものの、依然として定数係数によって関連付けられるためです。

レシオメトリックタイミングの構成の図、2番目の電圧上昇は最初の電圧と同時に開始/終了

図7: レシオメトリックタイミングの構成(左)では、2番目の電圧上昇は最初の電圧と同時に開始/終了し(右)、2つの比率は固定(画像提供:Texas Instruments)。

最後に、同時タイミングでは、両方の出力電圧のスロープが同じであるため、電圧が安定化に達するタイミングが異なります(図8)。

両方の電圧が同時に上昇を開始する同時タイミングモードの図

図8: 同時タイミングモードでは、両方の電圧は同時に上昇を開始しますが、安定化に達するタイミングが異なります(画像提供:Texas Instruments)。

相対的な起動シーケンシングに加えて、「ソフトスタート」(パワーオン時に電圧が上昇するレート)と、実際のレール電圧間の相対的なトラッキングに関する懸念が生じる場合があります。TPS82130は、SS/TR接続を使用してこうした懸念に対処しています。

新たに解放されたスペースの活用方法

「現在利用可能」なスペースの活用方法には多くの可能性がありますが、アプリケーションの優先順位に応じて適切な活用方法は変わります。ほとんどの設計では、電気的および機械的な耐性の向上が最優先事項になります。これらの耐性はスペースが狭いと「低減」してしまいます。

これは、常に脆弱なI/Oラインに電源クランプ/クローバ、過渡電圧サプレッサ、および逆極性保護を追加することで解決できます。機械的な側面から見れば、構造上の改善を図るためにプリント基板サポート、取り付けネジ、ホールドダウン、バッテリクランプなどを追加することでスペースを有効活用できます。

次に、有益な機能を新たに追加することもできます。バッテリ、ディスプレイ、ドライバICのサイズを大きくしたり、インジケータLEDの数を増やしたり、ユーザープッシュボタンを追加したりできるスペースが生まれる場合があります。さらに、さらに大きなICパッケージを必要とするメモリ増量も可能になる場合もあります。小型DC/DCコンバータをローカルで使用することで、基板レイアウトの柔軟性が向上し、さまざまなメリットを実現するのに十分なスペースを得ることができます。

結論

小型コンバータが大型コンバータにはない意外なメリットを発揮することがあります。超小型DC/DC降圧コンバータを使用すれば、安定化を負荷の近くで実行できます。これには、電気的性能、基板レイアウト、アップストリーム電源ユニットのサイズとタイプ、サーマルマップにもプラスの影響を与えます。

超小型コンバータを使用することで、設計内の固定エンベロープで基板スペースが拡大するという派生的なメリットを得ることができます。これにより、他の電気的および機械的な改善を実現したり、新しい機能を追加したりできます。

リファレンス

  1. Texas Instruments、SLVA470A、『Sequencing and Tracking with the TPS621-Family and TPS821-Family

免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、Digi-Key Electronicsの意見、信念および視点またはDigi-Key Electronicsの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。

著者について

Bill Schweber氏

エレクトロニクスエンジニアであるBill Schweber氏はこれまで電子通信システムに関する3冊の書籍を執筆しており、また、発表した技術記事、コラム、製品機能説明の数は数百におよびます。これまで、EE Timesでは複数のトピック固有のサイトを統括するテクニカルウェブサイトマネージャとして、またEDNではエグゼクティブエディターおよびアナログエディターの業務を経験してきました。

Analog Devices, Inc.(アナログおよびミックスドシグナルICの大手ベンダー)ではマーケティングコミュニケーション(広報)を担当し、その職務を通じて、企業の製品、ストーリー、メッセージをメディアに発信する役割と、自らもそれらを受け取るという技術PR業務の両面を経験することになりました。

広報の業務に携わる以前は、高い評価を得ている同社の技術ジャーナルの編集委員を務め、また、製品マーケティングおよびアプリケーションエンジニアチームの一員でした。それ以前は、Instron Corp.において材料試験装置の制御に関するハンズオンのアナログおよび電源回路設計およびシステム統合に従事していました。

同氏はMSEE(マサチューセッツ大学)およびBSEE(コロンビア大学)を取得した登録高級技術者であり、アマチュア無線の上級クラスライセンスを持っています。同氏はまた、MOSFETの基礎、ADC選定およびLED駆動などのさまざまな技術トピックのオンラインコースを主宰しており、またそれらについての書籍を計画および執筆しています。

出版者について

Digi-Keyの北米担当編集者