電力管理向上のための効果的な電流検出アンプの選択と適用

著者 Art Pini

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

携帯デバイス、IoTデバイス、車載デバイスでは、電源式または電池式の電子デバイスで電源電流を監視して配電を管理する必要があるため、電源の品質と電力管理が重要になります。電池の寿命を延ばし、過電流状態を防ぎ、地絡事故を監視し、電源の管理を最適化する鍵は、電流検出にあります。問題は、同相電圧が大きい中で、どのようにこうした測定を正確に行うかということです。

電流検出アンプ(CSA)、別名電流シャントモニタは、こうした重要な測定用に特別に設計された差動アンプICです。電流測定は、電流センサとして使用する直流シャント抵抗器での電圧降下の計算に基づきます。配電を適切に効率よく行うには、こうしたシャントおよび関連する電流検出アンプの選定と配置が重要になります。

この記事では、精度の要件とコストに基づくシャントと電流検出アンプの選定基準について説明します。

抵抗器による電流検出

最も単純な電流測定の方法は、小型の抵抗器(別名電流シャント)を、測定対象の電流と直列に挿入することです。この電流検出抵抗器にかかる電圧を測定し、既知の抵抗の値に基づいてオームの法則から電流を算出します。この方法には、簡単、低コスト、線形性というメリットがあります。

電流検出抵抗器を選ぶ際には、抵抗の精度、温度係数(TCR)、電力定格に注意しなければなりません。抵抗値により、特定の電流値で抵抗器において降下する電圧量が決まります。また、この検出抵抗器で消費される電力も決まります。一般的な検出抵抗器の抵抗値は数分の1Ωです。この用途専用の抵抗器が入手可能です。こうした抵抗器には、板状、箔状、または膜状の金属素子や、薄型または厚型のハイブリッド素子の蒸着膜が使用されています。

面実装用の金属素子シャント抵抗器の一例として、OhmiteMCS3264R005FEZR電流検出抵抗器(図1)があります。これは面実装部品(SMD)であり、電力定格2W、TCR 50ppm/°Cの、5mΩの2端子抵抗器です。

OhmiteのMCS3264R005FEZRシャント抵抗器の画像

図1:OhmiteのMCS3264R005FEZR面実装用金属素子シャント抵抗器(5mΩ)(画像提供:Ohmite)

シャント抵抗器には、4端子(ケルビン)構成のものもあります。ケルビン接続では、電流はソース側の接続端子のペアに供給されます。さらに2つの検出接続(電圧リード)が、シャント抵抗に直接隣接して形成されます。電圧リードを配置することで、電源リードや接点に付随する電圧降下を防いでいます。測定機器に流れ込む電流はほぼ0のため、検出リードでの電圧降下は無視できます。この抵抗器の例としては、OhmiteのFC4TR050FER 4端子、50mΩの金属膜電流シャントがあります。

抵抗の温度係数があるため、検出抵抗器の値は温度によって変化することに注意してください。温度の影響による抵抗の変化を最小限に抑えるには、TCRが低い抵抗器を選択する、電力定格が高い抵抗器を使用する、またはヒートシンクを採用するしかありません。

電流検出アンプ

電流検出アンプは、電流シャントで生じた電圧を検出し、測定した電流に比例した電圧を出力するよう設計された、特殊な目的の集積回路差動アンプです。電流検出抵抗器にかかる電圧は一般的に1~100mVですが、公称バス電圧が付加される場合があります。CSAは、出力からバス電圧をなくすため、同相信号除去比(CMRR)が高く設計されています。こうした装置は、装置自身の供給電圧を超える同相電圧を処理するよう設計されています。

図2の電流検出アンプの概略図に、反転入力、非反転入力、単一出力を備えた一般的な差動アンプを示します。

一般的な電流検出アンプの概略図

図2:一般的な電流検出アンプの概略図。ゲインは抵抗器R2対R1の比およびR4対R3の比で設定されます。(画像提供:Digi-Key Electronics)

抵抗値によりCSAのゲインが設定されます。R1とR3が等しく、R2とR4が等しい対称構造になっています。ゲインは、抵抗器R2とR1の比およびR4とR3の比によって決定されます。Texas Instrumentsの高性能なINA210CIDCKRなど、一般的なCSAの実装ではR2およびR4は1MΩ、R1およびR3は5kΩで、ゲインは200V/Vとなっています。こうしたバージョンのアンプのゲイン精度は0.5%です。採用されているICの定格供給電圧は2.7~26Vですが、最大同相入力電圧は供給電圧によらず-3~26Vとなります。これが、CSAの際立った特徴です。入力オフセット電圧はわずか35μVであり、一般的なCMRRは140dBとなっています。

用途によっては、Texas InstrumentsのINA180B3IDBVRのようなより安価なCSAも選択肢に入るでしょう。このCSAでは同相入力電圧の範囲は同一であり、ゲインは20V/V、50V/V、100V/V、および200V/Vのものが用意されています。ゲイン精度は1%であり、入力オフセット電圧が100μV、CMRRは100dBとなっています。

電流検出の構成

電流検出のトポロジには、ハイサイド検出とローサイド検出の2つがあります。ハイサイド構成では検出抵抗器を電圧源と負荷の間に配置しますが、ローサイド検出構成ではシャントを負荷とアースの間に配置します(図3)。

ハイサイド検出とローサイド検出の比較図

図3:ハイサイド検出ではシャント(RSENSE)を電圧源と負荷の間に配置しますが、、ローサイド検出では負荷とアースの間に配置します。(画像提供:Digi-Key Electronics)

ローサイド検出はアース基準であり、同相入力電圧は低くなっています。このため、電流監視アンプや関連回路上に実装しやすく、多くの場合コストを抑えることができます。

ローサイド接続のデメリットは、負荷が接地されないことにあります。シャント抵抗器を流れる電流の値の変化にともなって、システムの基準レベルは上下します。これにより、制御ループで問題が生じる可能性があります。また、この回路構成では、シャント抵抗器付近のバス電圧のアースへの短絡を検出することもできません。

ハイサイドトポロジのメリットは、負荷およびシステム基準が固定接地され、監視対象の電流に依存しないため、バスのアースへの短絡を簡単に検出できることです。

デメリットとしては、測定回路の入力に、バス電圧に近い同相電圧が加わることがあります。電流検出アンプに負荷がかかることに加えて、用途によっては、CSAの出力レベルがシステム基準レベル近くにまで低下します。

ハイサイド検出に関連する問題は、さまざまなCSAのファミリの開発を促してきました。INA180とINA210はともに新型のCSAであり、供給電圧にかかわらず-3~26Vの同相電圧を処理可能です。これらのCSAは特に、モータ制御、バッテリ監視、電力管理といった用途向けに作られています。バス電圧が高い用途では、80Vまでの同相電圧に対応した別のCSAをお勧めします。高電圧に対してCSAを使用するには、アンプと同相電圧を絶縁する外部部品を用いるか、絶縁アンプを用いる必要があります。

検出抵抗器の値の選定

検出抵抗器の値は、想定されるバス電流範囲において抵抗器で生じる電圧降下が、CSAの電圧オフセットおよび付加的な垂直ノイズよりも十分大きいことを保証するよう設定されています。検出抵抗器の電力定格は、最大バス電流と最大電圧降下によって決まります。

例として、12Vのバスで最大2Aの電流を流す場合を考えてみましょう。INA210 CSAを用いる場合、シャントにおける電圧降下は、最大オフセット電圧の35μVよりも大きくする必要があります。

このCSAの同相除去比は105~140dBです。最低値(105dB)を用いると、12Vのバスの電位(同相電圧)は約67μVまで減衰されます。この減衰した電位にCSAのゲインを掛けたものが、CSAの出力にオフセット電圧として生じます。この同相オフセット残差は測定対象の電流に起因するものではなく、この例では測定値の1%未満であるため問題にはなりません。

検出抵抗器の値は、このオフセット電圧よりも十分に大きい電圧降下が得られるよう選択する必要があります。200のゲインを持つINA210の出力における2Vの単極のスイングの場合、入力電圧は10mVとなります。この入力電圧は、指定された入力電圧オフセットや同相残差よりもはるかに大きいものとなります。公称最大電流2Aでは、検出抵抗器の抵抗値は5mΩにする必要があります。シャントの電力定格は、想定最大損失の公称値である20mWの2倍以上にする必要があります。前述のOhmiteのMCS3264R010FEZRであれば、電力定格2Wであるため適切といえるでしょう。

Texas InstrumentsのTINA-TIプログラムを使用してこの構成をシミュレートし、回路のDCおよびACの伝達特性を確認できます(図4)。DC伝達関数には、傾きが1V/Aの線形応答が示されています。つまり、最大電流2Aでは2Vの出力が得られることになります。AC応答の帯域幅は20kHzでした。

Texas InstrumentsのTINA-TIによる回路のシミュレーションの画像

図4:Texas InstrumentsのTINA-TIによる5mΩの電流シャントを用いた回路のシミュレーション。傾きが1V/Aの線形DC伝達関数を示しています。(画像提供:Digi-Key Electronics)

結論

電流検出アンプは、直列シャント抵抗器の電圧降下からバス電流を測定するよう専用設計されています。これらのアンプは、大きな同相電圧がかかっている場合のハイサイド測定に特に適しています。アンプの選定は簡単であり、適切に使用すれば、電子システムの測定、監視、制御で素晴らしい成果を得ることができます。

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著者について

Art Pini

Arthur(Art)PiniはDigi-Key Electronicsの寄稿者です。ニューヨーク市立大学の電気工学学士号、ニューヨーク市立総合大学の電気工学修士号を取得しています。エレクトロニクス分野で50年以上の経験を持ち、Teledyne LeCroy、Summation、Wavetek、およびNicolet Scientificで重要なエンジニアリングとマーケティングの役割を担当してきました。オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、任意波形発生器、デジタイザや、パワーメータなどの測定技術興味があり、豊富な経験を持っています。

出版者について

Digi-Keyの北米担当編集者